昨日までなかった港に謎の大船団が来た
「俺は王様になりたかったわけじゃありません。
この国が軌道に乗ったら、俺は王座を降ります」
会議室が静まり返った。
「……は?」
最初に声を出したのは、代官だった。
「陛下、今なんと?」
「だから、引退するって言ったんだ」
「……」
全員が、信じられないものを見る目で俺を見る。
当然だと思う。
俺は、建国したばかりの今から、
王位を手放す準備をしている。
「でも、今すぐじゃない」
代官たちは、一応安心したようだった。
「だけど、俺がいなくなったあとも、この国は続いていく。
俺の力に頼らなくても、
民が暮らしていける国にしなくては駄目なんだ」
それが、俺が目指している国だった。
そんな話をしていると――。
まるで、俺の決意を試すような出来事が起きた。
「陛下!」
国軍の司令官が慌てて飛び込んできた。
「西側に……港ができています!」
「……は?」
何を言っている?
この国に、海へ続く場所なんてなかったはずだ。
国内なら、俺の瞬間移動魔法で移動できる。
俺は代官たちを連れて、現地へ飛んだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
MPを使いすぎて、どっと疲れたが、
目の前の景色は、それどころではなかった。
「なんだこりゃぁ~!!」
俺の目の前には見慣れない光景が広がっている。
灯台。
防波堤。
防潮堤。
巨大なふ頭がいくつも並んでいる。
巨大な倉庫群。
これは……。
現代日本の本格的な港じゃないか。
「いつの間に作ってたんだ……」
「わたくしですわぁ~」
また、おまえか。
名前は、ローラ・タルテ。
幼女並みの背丈なのに、足元まで届く金髪縦ロール。
不思議な魔法もポンポン使える。
わかっていることは、ただひとつ。
人の言うことを聞かない。ただ、それだけだ……。
「王都を作るために『西側の山は平地に変わる』という『ウソ』で山を更地にしてもらったのですわぁ~」
俺の《フェイク》というスキルは、口にした「ウソ」を現実に変える。
便利すぎるが、使い方を間違えると世界そのものを壊しかねない危険な力だ。
「それは、わかってる。なんで港があるのかと聞いてるんだ」
「西側の山の向こうが海だったからですわぁ~」
ローラは、わざとらしいくらいに「ですわぁ~」を連発する話し方をする。
聞いていると、頭の中から「ですわぁ~」が離れなくなる。それほどに、うざい。
これが親同士が決めた婚約者らしいが、両親が他界してるので確かめる術はない。
そもそもローラは性別がない種族なのに、なぜ婚約者なのか未だに不明だ。
いや、それよりも港の話だ。
建国したばかりの我が国にとって、港はとてもありがたい。
陸路はどこへ向かっても敵対国につながっている。
つまり、海は初めて手に入れた安全な交易路になるかもしれないのだ。
──ボォォォォ~ 汽笛が響く。
沖を見ると、巨大な船がこちらへ向かっていた。
1隻じゃない。
2隻でもない。
……何隻いるんだ?
だんだん見える船の数が増えていく。
このサイズの船が入れる港になっているのだろうが、それにしても、いきなり多すぎないか?
いや、それより、どこの船なんだ。
味方か、それとも敵か。
頼むから、つい先日まで戦争してた相手とかいうオチだけは勘弁してくれ。
あまりの事態に、各地を仕切ってくれている代官たちも集まってきた。
「入港します!」
代官の一人が叫んだ。
見知らぬ巨大な船が、ゆっくりと港へ入ってくる。
見る限り武装はない。
……いや、見えないだけかもしれない。
「ちょ……」
かなり大きな船だ。まるでタンカーのようにデカい。
船が接岸すると、側面がパカっと開いた。
「うぉ……」
見慣れたものが降りてきた。
トレーラーやら、フォークリフトやら、クレーン車やら。
コンテナを積んだトレーラーが、王都へ向けて敷設された新しい道路を走り出す。
「い、一体どうすれば……」
「また、王様の仕業なのでは?」
代官たちが、ざわついている。
クレーン車などの重機が、
港のクレーンや荷役設備を次々と組み立てていく。
フォークリフトは、船から降ろしたコンテナを倉庫へ運び始めていた。
港から王都へ続く運河にも、
いつの間にか船が入ってきていた。
そこにも、コンテナが積まれていった。
一体、誰がこんなことを……
しかし、すぐに、その犯人は判明した。
「届きましたわぁ~」
また、おまえの仕業か!
日本の現代技術をこの異世界でほとんど再現してしまった張本人だ。
「500年も時間がありましたのでぇ~」なんて笑っていたが、笑い事じゃない。
それだけに、年齢の話だけは禁句らしい。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
船から、初めて見る種族が降りてきた。
ネコ耳だ。しっぽも生えている。でも、手足は、人っぽい。
「確認してちょう」
と、流暢な名古屋弁でローラにタブレットを渡す。
ローラは、それをサラサラと確認すると
「問題ありませんわぁ~」
「ところで、この人たちは一体?」
「魔王領からきやーた」
例によって名古屋弁だ。
「はじめまして、ニャンニャ・ゴロゴロだみゃあ」
やばい、どこからどこまでが名前なのかわからねぇ……。
語尾がみゃあって、ネコ獣人だからか、名古屋弁だからか。
どこからツッコミいれたらいいのやら。
「この国で王をしているアーク・リドルだ」
握手を求めたところ、すぐに応じてくれてホッとした。
「思ったよりええ人手で安心したわ。怖い人って聞いとったもんで」
やはり《フェイク》で顔を変えておいて正解だったか。
前の顔は、どう見ても悪人面だったからな。
「ゴロちゃん。助かりましたわぁ~」
「いいよ、なんもないて」
ゴロちゃんの胸には、缶バッジがついてた。
ローラ様ファンクラブ25番。
ローラは、ことあるごとに俺を「旦那様」と呼んでからかってくる。
もし今ここで旦那様なんて言われたら……。
俺、ゴロちゃんに殺されるんじゃないか?
よ、よし。
話題を変えよう。
何か、何かないか?
お読みいただき、心より感謝申し上げます!
数ある作品の中から
この物語を選んでいただき、
本当にありがとうございます。
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