エピソード41
クロエは、目覚めたばかりの寝ぼけた頭で
昨日の事をぼんやり思い出していた。
『そうだ···マーサからは来れないんだった···』
本来であれば、国境を超えた時点で
マーサは隔離されるはずだったが
クロエがこの街に留まる数日の間
一緒に過ごせるようにと
クロエが眠りながら国境を越えた間に
ハーツが無理を通してくれたのだと昨晩知った。
「ハーツ様は···わたしに甘過ぎるわ···」
マーサは今も強制力の支配を受けているため
ルイズと行動を共にするという制限がつき
部屋で休む時は、外から鍵がかけられている。
ちなみに、クロエの部屋にマーサが来た時は
扉を少し開け、外でルイズが待機していたそうだ。
『マーサ···十分な説明もなかったのに
全てわかっているように受け入れて···
契約の事もあるし···
お父様やアイルは何か知っていたの?』
マーサは、あくまでもクロエの侍女として
ガイル帝国に訪れたアース国民。
保護の話も出ておらず、クロエとは立場も違う。
昨夜の食事の後、雇い主であるクロエを交え
改めてマーサの処遇を聞いた。
「マーサさんには、昨日同意をもらったけど
雇い主であるクロエ嬢にも
同意してもらう必要があるから
改めて説明するね?
この街より先への滞在を希望するのであれば
3ヶ月の隔離生活が必須条件となる。
クロエ嬢がここに滞在する間であれは
私の裁量で共に過ごす事を許可できるが
ルイズの目の届かない状況であれば
指定された部屋に、外鍵を付けた状態で過ごしてもらう。」
ハーツの説明はたったそれだけだった。
それでもマーサは疑問も口にせず
当たり前のように、それを受け入れた。
そして、その内容は正式な書類にまとめられた。
『契約で強制力の支配を弱める為なのかしら···』
「いけない···マーサを迎えに行かなきゃ!」
マーサを部屋から出すには、まずルイズに会い
鍵を開けてもらわなければならない。
クロエは、寝ぼけている頭を無理やり覚まし
自身の身支度を簡単に整えた。
『うぅ···髪が···
《セニハラハカエラレヌ》ってこういう事ね···』
若干、鳥の巣になった髪は諦め
ルイズの元へ急ぎ向かった。
ーーコンコンッ!
「おはようございます!クロエ様!」
「ルイズ様、おはようございます!
早くに申し訳ないのですが
マーサの鍵を開けていただけますか?」
「???喜んでっ!いや、違う···
はい!承知いたしました!」
『???』
なんとなく、ルイズの足取りが
浮かれているように感じたが
クロエは深く考えない事にした。
ーーガシャッ!!
ーーコンコンッ!
外鍵として付けられていた南京錠が開けられ
クロエがノックしようとしたが
逆に内側からノックする音が聞こえてきた。
「クロエ様、扉を開けますので
後ろへお下がりくださいませ。」
ーーガチャッ
「クロエ様、ルイズ様
おはようございます。
お手を煩わせてしまい申し訳ございません。」
「おはようマーサさん!」
「お、おはようマーサ···
って、いつから起きてたの?」
出てきたマーサは完璧に身支度が終わっており
今しがた起きたようには見えなかった。
「···?
3時間程前から起きておりました。」
「そんなに前から···
あまり寝れなかったんじゃ···?」
「······クロエ様、今何時かおわかりですか?」
「へっ?!
あ、時計···見てなかった···」
「ふっ、今は9時です。
普段より多く寝ておりますので、ご安心を。」
「ぷはっ!!
す、すみません!クロエ様!」
クロエは時計も見ずに
カーテンから漏れる光だけで朝を知り
昨日、夕方の7時まで寝ていたのだから
当然、物凄く早起きしたはずと思い込んでいた。
しかし、実際は十分過ぎる程寝ていたのだ···
『マーサだけでなく
ルイズ様にまで笑われてしまった···
顔から火がでそうだわ···!!!』
「くくくっ···」
今、絶対に聞きたくなかった声が聞こえてしまい
クロエは声の発信源である後ろへ
恐る恐る振り返った···
「ひっ!」
「立ち聞きしてしまってごめんね?
でも···その反応は傷つくなぁ〜
皆、おはよう!」
「うぅ···お、おはようございますハーツ様···
大変失礼いたしました···」
「ふふふっ、しっかり睡眠が取れたようで安心したよ。
レディ、朝食をいただきましょうか?」
「は、はい!」
クロエのお腹時計の方は狂っておらず
普段より遅くまで寝ていたせいで
朝食を取る時間も遅くなり、
すでにペコペコの状態だった。
『これじゃ私···食べて寝てばかりだわ···』
クロエはこれからのガイル帝国での生活で
毎日運動することを自分に固く誓った。
今後書くかわからないので
ちょこっと設定を···
(今思いついただけですが!)
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アース人は他国へ旅行するという文化がないが
何らかの理由でガイル帝国へ入国する場合は
基本、この街(名前決めてません)までの許可で
滞在期間(2日以内とか)の制限もつく。
この街は、貿易拠点になっていて
アース国から訪れるのは
貿易権のあるジェラート公爵領の商人ばかり。
王家や高位貴族が
この街の先に訪れる場合は、密かに常時監視がつく。
それ以外の者が
この街の先に進むには、3ヶ月の隔離が必要。
どの場合も、国境門で
滞在許可証が発行されるので
街から移動する際に確認され
先に進む許可がない者は通れない。
そんな感じ···ですけど
変わるかもしれません!