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エピソード27

クロエは手を弾かれた瞬間、冷静を取り戻した。


『そうだ···(言葉)だけじゃないんだ···

(行動)の異常を忘れ不用意に近づくなんて···

ごめんなさい···アイル···』


自身の行動が、寧ろ傷つける結果となったことに

アイルの荒ぶる鼓動に連動した息遣いと

その頬を伝った涙で気づいた。


アイルは、血にまみれた左手を

自身の右手で戒めるようギュッと強く握り

ハーツへと懇願の目を向けた。


「ハーツ···っ!!」


言いたいことなどわかっているとばかりに

ハーツはクロエに怪我がないことを

どこまでも優しい手つきで確認する。


「大丈夫、少し赤くなっているだけ。

クロエ嬢、まだ痛む?」


「···いえ、弾かれただけで

痛みなどほとんど感じませんでした。」


クロエの無事を知っても肩で息をするアイルに

ハーツは仕方ないな···という顔で

クロエから離れ、アイルを強く抱き締めた。


「アイル?大丈夫。

君は元から猫がじゃれた程度のことしか

クロエ嬢にはできないんだから。

だって、私が教えなくてもそうだったろ?

君は本能で抗っているんだよ?

私は、そんな君を尊敬してる。」


「···すまない。

···できるだけ早く頼む。」


「わかった。時は遠くないから。

今はそれしか言えないけど···待ってて?」


アイルの《黒い瞳》から溢れ出た涙は止まらない

見ているだけしかできないことに、胸が張り裂けそうだった。


アイルの助けを求める声に

事の成り行きを見守ってオロオロしていた父が

慌てて動き出す。


「マーサ!」


「はい、失礼いたします。」


部屋に入ってきたマーサの手には、大きな旅行かばん。


「コホンっ!

ソフィアの遺品を相続しに来たと聞いた。

しかし!!愛する妻ソフィアの遺品には

ガイル帝国から持ち込んだ物の他

私が贈った物や、ジェラート公爵夫人に

代々受け継がれた宝も、含まれている!

どうせ換金するのであろう?

それらが他の者の手に渡るのは

断じて許すことはできん!

ソフィアが相続を望んだであろう物以外は

すべて公爵家で買い取らせてもらう!

異論は認めんっ!!」


『お父様···

私が···私がお母様の物を手放さずに済むよう

わざとお金に変えてくれたのね···』


「は···い···はい。

ご意向のままに···従うっ···所存でございます···」


涙が止まらなくてまともに言葉を返せなかった

父はまた、自らの口を塞いでいた。


「あ、あの···コホンっ!

マーサは、公爵家とは契約を結んでいない。

お前個人の侍女として契約している。

つまり、公爵家には必要なき者だっ!

これからはお前が給金を払え!

必要がなければ捨てれば良い!」


「発言をお許しくださいませ。

私は、クロエ様だけを主とし忠誠を誓うと

雇用していただいた際に契約いたしました。

不要ならお捨てください。

しかし、必要としていただけるなら

私には帰る家もございませんので

お気になさらず、どこへでもお連れください。」


「まぁざ···」


もう涙なのか鼻水なのかわからない水分で

クロエの顔はぐちゃぐちゃだ。

それに、なにを言っているかわからないほど

鼻声なうえ、喉は枯れ震えている。


「なるほど···偶然なのかな?

誰かの考えあってのことなら

是非、詳しく話を聞かせて欲しいくらいだ···

クロエ嬢、彼女なら安心して連れて行ける。

私が保証するよ?」


ハーツが保証してくれるなど

きっと確かな何かがあるのだろう。


「まぁざ··わだじについでぎでぐれる?」


「もちろんでございます。

我が主の望むままに、どこまででも。」


「あ、ただ···ちょっと言いにくいんだけど···

これからクロエ嬢は、ガイル帝国に来てもらう。

国境を超えた時、マーサさんは

一時的に隔離させてもらうことになる。

もちろん人権を無視することはさせないし

隔離施設内であれば自由を約束する。

長くて···3ヶ月程かな?

ごめんね?これは決定事項。」


「問題はございません。」


「うん、ありがとう。

一緒にクロエ嬢を支えていこうね?」


「勿体なきお言葉でございます。」


「では、ジェラート公爵。

そしてアイル。

クロエ嬢のことは、私が適切に対応いたします。

お二人は望むようお暮らしください。

私からはなにも言えないけど···

クロエ嬢と君たちの違いってなんだろうね?

何があって何がない?

何ができて何ができない?

なぞなぞでも解きながら、いつか来るその時を

お互いに心待ちにしましょうね?

では!」


「さっ?クロエ嬢立てる?

立てなきゃ問答無用で抱っこだよ?」


「はびぃっ!たでまずっ!」


「クロエ様。」


「ありがどぉ、まぁざ。」


グズグズになってしまったクロエに代わり

アイルの懇願を叶えるべく、ハーツが着々と話を進めた。


マーサに支えられ応接室を後にするが

最後に一目と振り返れば

父だけでなくアイルまで自身の口を塞いで

こちらを見守ってくれていた。


クロエは、満身創痍となった

身体の隅々にまで気を巡らせて

今までで1番綺麗なカーテシーを披露した。

心の中で感謝の気持ちを呟いて。


『お父様、アイル、公爵邸のみんな

今までありがとうございました。』

アース国いよいよサヨナラっぽいです!

サヨナラできなかったら

ちょっとビックリしちゃいます!


次回から、アイルかマーサの

サイドストーリーをはさむ予定です!

全く書いてないので

ただの予定です!

あ~アイルかなぁ〜?

9割アイルな気がしてきました!


※タイトルの話数を変更しました!

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