エピソード21
目当ての街には、あっという間に着いた。
王都学園には、この国の未来を担う
令息令嬢ばかりが通っているため
王族教育を受けていた
クロエやロベルトだけでなく
生徒たちは皆、忙しい日々を過ごしていた。
学園からほど近いこの街は
そんな生徒たちが、少ない時間を縫うように
息抜きに訪れていた憩いの場。
クロエにとっても、ロベルトやアイルに
幾度となく連れてきてもらった、慣れ親しんだ街だ。
『どこを見ても2人の気配を感じる···』
「クロエ嬢?こっちの路地に入るよ?」
優しく引かれた手で
クロエは現実世界に引き戻された。
『この手はいつまで繋ぐのかしら···?』
馬車から降りる際のエスコートは
そのまま手繋ぎの形に変えられ、今に至る。
「あの···ハーツ様、手は
「うん。デートだからね?」
先ほどからやんわり手を離そうとするも
デートだからの一点張りに負けっぱなしだ。
『確かに···アイルやロベルト様と出かける時は
いつも手を繋いでいたから···
男性と出掛けると手を繋ぐものなのかしら?』
そんなことは無い。
クロエはある意味洗脳されていたのだ···
ロベルトは言った。
「ダメダメ!ちゃんと手を繋いでなきゃ!
クロエはよく考え事をしていて危ないからね?」
アイルも言った。
「男として手を繋ぐのは当然のことだ。
義姉さんはボーッとしていて危ない。」
もちろん嘘だ。
2人ともクロエと手が繋ぎたかっただけ。
しかし、間違った認識を改める機会はなかった。
クロエ自身が疑問に思わなかったからだ···
ハーツとの手繋ぎは
もちろん婚約者がいればきっぱり断った。
しかし今はいない。そして貴族令嬢でもない。
断る理由が見つからず、言われるままとなった。
「クロエ嬢···もしかして···
私と手を繋ぐのは嫌だったかな?
彼たちの代わりを努めようなんて
おこがましい考えだったね···」
叱られた子供のようにしょんぼりするハーツに
クロエの中で罪悪感が生まれる。
『2人きりで来たのは初めてだけど
ハーツ様ともここには何度も来ているもの···
アイルやロベルト様と手を繋いでいたのを見て
エスコートの延長で申し出てくれたのね?
私ったら···勘ぐってしまって恥ずかしい···』
「ハーツ様···ごめんなさい!
全然嫌なんかじゃないんです!
ただ···アイルやロベルト様以外とは
手を繋いだことがなくて···
どうしていいかわからなかったんです!
手を繋がないと危ないみたいなので
このまま手を繋いでもらっていいですか?」
「もちろん喜んで!」
『恨むなら誤った認識を植え付けた
自分たちを恨むんだよ?お二人さん?』
心の中など全く表に出さず
天使の様に微笑むハーツに
クロエの認識はさらに間違った方向へ進み
2人の手繋ぎデートは続くのであった。
せっかくのデート回ですが
甘い雰囲気にならなそうなので
デートっぽい話をはさんでみました!
ハーツはアイルやロベルトと違って
何歩か先を考えてるっぽいので
他の男と手を繋いでしまわないよう
のちのちしっかり対策すると思います!
※タイトルの話数を変更しました!
この話がすごく短い
オマケのような回だったので
「エピソード20.5」としていましたが
なんかややこしい!と思ったので
「エピソード21」に変更ました!
めんどくさい事してごめんなさい!




