エピソード12
「クロエ嬢、安心してって言うのも変だけど···
彼らのことは気にしなくていいよ。」
思考の暴走から、思考の停止にまで辿り着き
当初のアイルやロベルトと話すという目的すら
頭の中から消え去っていたクロエの耳元に
ハーツの顔がさらに近づく。
『なっ!なんでこの人は
私を驚かすようなことばかりするのよっ!!!』
心の中で失礼な物言いになってしまうのも無理はない···
少しでも動けば、ハーツの唇が耳たぶに届く距離にあるのだ。
『先ほどより絞られた声量···
そのために近づいたのは理解しているけど···
腰の辺りがゾワゾワするから本当に止めていただきたい···』
「···ハーツ様、理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「う〜ん···
言ったらさらに困惑させちゃう気がするけど
言わないと不信感を与えてしまいそうだし···」
「構いません。お聞かせください。」
もう何を聞いても驚くものか!という気持ちだった。
そして、早く聞いて早く適切な距離に戻って欲しい。
「じゃ、これだけは忘れないで?
私はクロエ嬢を大切に思っている。
友人であるアイルやロベルトを思うよりずっと。」
思わずハーツへ向きそうになった顔を
なんとか制止して、疑問を口に開きかけたが
ハーツは矢継ぎに続けた。
「ガイル帝国が動くから
傍観者に徹してねってお願いしたんだ。」
『なぁぁーーーーーーーーっ!!!!!』
驚くことは全然あった。すぐあった。
困惑や不信感どころの騒ぎではない!!
先ほどまで可能性として考えていた
存続の危機が目の前にあるのだから!
「な、な、なんて!?
動くって···なんでっ!!??」
もう心の中では収まらなかった···
ハーツは顔をヒョイっと元の位置に戻し
またお腹を抱えながら、笑いを噛み殺している。
「フハッ···!
ごめん、本当にごめん!
言ったは言ったけど、私にそんな裁量権はないよ?
少なくとも今は、クロエ嬢が考えている動きはないから
あまり深く考えずに安心して?」
涙まで浮かべて笑いが止まらないハーツの様子に
クロエは頭が沸騰する思いだったが
(少なくとも今は)と言う言葉に背筋が凍る。
『この状態が続けば(いつかは)動く、ということね···』
その時、最奥までもう少しという所で
立ち止まっていたクロエとハーツへ向かってくる者がいた。
「アイル···」
こちらに向かってきたのは
ハーツを睨みつけるアイルだった。
「貴様っ!!」
アイルは、向かってきた勢いを殺すことなく
ハーツの胸ぐらを掴み上げた。
「ちょっ!アイルっ!!やめなさい!!」
義弟の他国皇族への無礼に、慌てて止めに入る。
しかし、アイルはクロエを見ようともしない。
「なに?何か癇に障った?
ふふっ···奇遇だね!
私もここに来てからずっと、癇に障っている状態だよ?」
「アイル!お願いっ!ねぇっ!!」
ハーツの胸ぐらを掴むアイルの腕を
なんとか離そうと引っ張るも、なんの効果もない。
『ハーツ様···笑っているけど完全に怒ってる···
アイルお願い、私にして···
貴方の感情は、私にだけぶつけて!!!』
アイルの手は、それ以上のことをするでもなく
かと言って、胸ぐらから離されることもない。
口は固く閉じられ、その唇からは血が流れていた。
「アイル。
やっぱり君は思っていた通りの人だ。
試すようなことをしてごめんね?
抗いたいなら··················」
ハーツは恍惚の表情でアイルへ囁いたが
消えゆくほど小さくなっていく声に
それ以上は聞き取れなかった。
『ハーツ様が試した?いったいどういうこと??』
アイルはピクリと眉を寄せると
ハーツに耳打ちをしてから、そっと手を離し
クロエに視線を向けた。
累計PVが1週間で11000を超えていて
びっくり嬉しくて感謝いっぱいです!
読んでくださった方は勿論のこと
開いてくださった方も、ありがとうございました!
クロエだけは何考えてるのかわからなくて
なんだこいつ!?って
イライラしながら書いてるんですが
きっと彼女は王太子妃教育とかで
自分をさらけ出したりしないように
ビシバシされたんだろうなぁー
と、思うようにしてます。
アイルに対しては思うままに動いてるっぽいし
きっと心許してるんだろうなぁー(なげやり)




