↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/23

最終話:異世界最強孤児院

 災厄の魔女エスメラルダの陰謀を過剰すぎるレベルで封じたオワコンは、何事も無かったかのようにレベルアップした孤児院へ帰還した。


「いんちょー、どうしたんですか? なんか外ですごい音がしたような……」


 真っ先にオワコンに駆け寄ってきたのはシャルロットだ。オワコンは激闘を終えたものの息一つ切らしておらず、服も全く汚れていないので気付かれていないようだ。


「フー、今日はみんなに悲しいお知らせがある」


 そう言って、オワコンはみんなを外に連れ出した。

 そして、地面に突き刺さった巨大な銀の十字架まで四人の孤児たちを連れていく。


「そ、そんな……おばあちゃんが……!」

「屋上から転落死してしまってね。悲しい事故さ。この通り埋葬はしたけどな」


 巨大な銀の十字架にすがりシャルロットが泣き崩れる。他の孤児達も、シャルロットの背中に悲しげな視線を向けていた。


 時系列的に言えば、ババアは屋上で殺害された後に転落させられたわけだが、オワコンは何も言わなかった。1+2+3だろうが、3+2+1だろうが、順序が違うだけで結果は同じなのだから問題は無い。


 オワコンの中ではそういう事になっていた。


 ババアの陰謀に関しても、オワコンは何も教えない事にした。

 孤児たちに生贄だったという事実を伝えたところでなんの意味も無い。

 オワコンなりの優しさであった。


「シャルロット、ババ……おばあちゃんがいなくなってつらいのは分かる。でも、いつまでも泣いていてはいけないよ。おばあちゃんも悲しむだろう。それに、おばあちゃんの言っていた事、覚えているかな?」

「言ってた事、ですか?」

「おばあちゃんは世界中のシャルロットみたいな子供を救いたがっていたじゃないか。それに応えるのが、最高の弔いだと思わないかな?」


 オワコンは爽やかな笑みを浮かべ、シャルロットの頭を優しく撫でた。

 シャルロットはその言葉に触発されたのか、涙を(そで)で拭う。


「は、はい! そうですよね! おばあちゃん、きっとどこかで見守ってくれていると思います!」


 残念ながらおばあちゃんの魂は、オワコンの手によってこの世界から完全に消滅させられていた。

 それはそれとして、オワコンはシャルロットの決意に頷いた。


「そうだ! 俺達は旅立つ時が来たんだ! この狭い森を抜け出し、広い世界に……俺達の救いを待っているものに手を差し伸べる時が来た! そうは思わないか! みんなっ!」


 オワコンは声に力を籠めて叫ぶ。

 それから孤児たち全員の顔を見た。

 誰も言葉を発しないが、その表情から気持ちは一つだと瞬時に理解出来る。


「よし! そうと決まれば善は急げだ! さあ行こう! 新たなる世界へ!」


 オワコンが(げき)を飛ばすと、孤児達は一斉に孤児院の中へ入っていった。

 孤児院も主の意思を汲み取ったように、ゆっくりとその巨体を持ち上げる。


「ボゥッ! ボゥッ!」

「ん? ああ、ガルムか。お前も来たいのか?」

「ボゥッ!」


 オワコンが孤児達に続いて館に入ろうとすると、スケルトンガルムが近寄ってきた。

 存在を忘れられていたが、彼も仲間として行動を共にしたいようだ。


「はっはっは! 可愛い奴だなぁ。でもお前はダメだ」

「ボゥッ!?」


 予想外だったのか、スケルトンガルムは奇妙な鳴き声を出した。

 それに応えるように、オワコンは銀の十字架を指差す。


「お前にはあの墓を守ってほしいんだ。シャルロットの大切な育ての親の墓だ。誰かいないと寂しいだろうし、お前なら安心だ。これはお前にしか出来ない事なんだ。頼めるか?」

「ボゥッ!」


 心得たとばかりに、スケルトンガルムは吼えた。

 それに対し、オワコンは満足げにうなづく。


「よしよし。お前はいい奴だな。ご褒美にこれをやろう。レニとおそろいの首輪だ。これで俺達は離れていても真の仲間だ!」

「ボゥッ! ボゥッ!」


 主からのプレゼントに、スケルトンガルムは満足げに飛び跳ねる。

 尻尾が残っていたら、ぶんぶん振っていただろう。

 その様子を笑顔で見送りながら、オワコンは孤児院へ入り、扉を締めた。


「フー、これでババア対策もよし、と」


 ガルムに聞こえないよう、オワコンは小声でそう呟いた。

 

 ガルムをここに配置しておく理由はただ一つ、ババアチェッカーとしてである。あの首輪はレニと同じ――つまり、スマホで位置がチェック出来るGPSのような機能が付いている。


「万が一ババアが蘇った場合、真っ先に俺の手下を始末するだろうからな……」


 ババアを全力で除外させたとはいえ、完全に消えたとは言い切れない。

 だからこそ、封印の十字架の近くにガルムを待機させるのだ。

 ガルムが始末され、首輪の反応が消えたならババアが復活したという合図になる。


 ――つまり、真の仲間ガルムは捨て石同然だった。


 ババア対策が完了した後、シャルロット達を中央広間に残し、オワコンは院長室へと戻る。ここもグレードアップしており、昨日まで座っていた椅子は玉座になっていた。


「フー、まあ、今はこのくらいでいいだろう」


 オワコンは玉座に腰掛けると、背もたれに体重を掛ける。


「さて、今後の方針だが、まずは近くの街を襲撃するか。グランドの野郎、逃がしてやったのに恩を仇で返しやがって……絶対に許さんぞ」


 オワコンは苦虫を噛み潰したような表情でそう呟いた。


 せっかくアイリスを救出してやったのに、わざわざ連れ戻しにきて自分に暴行を働き、レニという刺客まで送ってきた。到底許される行為ではない。グランドは二度と逆らわないように徹底的に叩き潰すべきだ。


 グランドは既に心折れていたが、その程度で許すオワコンではないのだ。


「クソッ、才気あふれるレニをあんな風にしてしまうなんて……なんてひどい街なんだ」


 オワコンの緊急処置でなんとか純粋な『人間』に戻れたが、天才魔法使い時代のレニの傲慢さを思い出す。街という環境が彼女の魂を汚してしまったのだろう。


「グランドといい、街には凶暴性を強化する邪悪な奴しかいない……なら、俺が支配するしかない」


 オワコンは考えた。邪悪な街はこの孤児院によって浄化されるべきなのだ。当然抵抗するだろうが、英雄的行為に多少の犠牲はつきものだ。


「まあ犠牲が出た場合、孤児が増える可能性もあるからな。それなら俺の所で浄化する事も出来る」


 街には森とは比べ物にならないほどの人間がいるはずだ。ならば孤児院レベルを上げるのも飛躍的に楽になるだろう。


「しかし現段階で全員は救えない。厳選しないとな……やはり、女子供を優先すべきだろう」


 オワコンは孤児院で保護する対象の優先度を決めた。


 戦争の世の中で泣くのはいつも女や子供だ。だから女かつ子供を最優先で保護すべきだろう。男は後回しだ。


「そして孤児が集まった後にするべき事は……子作りだな」


 オワコンはさらに先の未来を夢想する。


 女子供の保護がひと段落した後は、やはり人間の種の保存を優先すべきだろう。動物は常に強い異性を求めるものだ。なぜ強い異性を求めるかというと、強い子孫を残すためだ。


「適任は俺しかいないだろう。俺以外の男は抹消してもいいかもしれん」


 ババアも言っていたが、オワコンはこの世界において最強の男だ。

 それ以外の子孫は全て劣化にすぎない。

 オワコン以外との子作り行為は、神の摂理に反している。


「つまり、まず世界中を飛び回って邪悪を討ち滅ぼし、哀れな少女達を保護。それから俺が教育して子作りか。フー、いくら世界を救うと決めたとはいえ、これはなかなかの大事業だな」


 やる事は満載だ。だが、やらねばならない。


「この世界を完璧に浄化するために、俺は戦う!」


 オワコンは決意の炎を燃やす。

 そう、これは世界を救うための戦いなのだ。


 世界中の美少女を自分の物にして、それ以外の邪魔な存在をすべて始末して世界征服したいとか、そういう低俗な願いでは決してないのだ。


「では行くか……異世界最強孤児院……発ッッッ進ッッッ!」


 オワコンが叫ぶのと同時に、孤児院が八本の根を伸ばし進撃を開始する。

 動く要塞と化した孤児院は、森の木々を蹴散らして突き進む。


 邪悪なる災厄の魔女エスメラルダの野望は潰え、希望を乗せたオワコンの孤児院は森を驀進(ばくしん)する。


 恐らく、魔女エスメラルダに征服された方が大分マシだった(特に男性にとって)と思われる恐怖が降り注ぎ、『孤児院王』と呼ばれ、世界中のあらゆる存在から畏怖される、恐怖の大王オワコンの伝説が始まるのは、これからほんの少し後の話である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 胸クソ系主人公の中でもなかなかのレベル。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。