モミジ帰還
――1月3日 午前6時00分 晴れ 朝日が辺りを照らす――
大蛇とカカオ、 リアンとネオンがフェモラータ、 バッファロー、 ケレヴの共同墓地を作っていた。 墓に木製の十字架を建てた。
「死ねば仏……あたし達だけでも弔ってあげましょ……」
大蛇はどこか悲しげな表情を浮かべた。 彼にも同乗の余地があったのだろう。
「墓にお酒ダメらしいから水で堪忍してぇや」
カカオが十字架に水を掛けた。 因みに、 彼女は金欠なので買う余裕が無い。
「ネオン、 あの女の遺体を持って来てくれてありがとう♡」
大蛇は爽やかな表情で感謝を述べた。 直後、 ウールがアップデートした水晶玉を持って駆け付けた。
「みんな~水晶持って来たよ~」
「何しとんねん」
大蛇が即座にツッコミを入れた。
「「物は無駄なく使え」 これが羊人の教え」
ウールは堂々と胸を張った。 彼女の人種、 羊人は遊牧民の亜人であり、 あまり豊かな生活を送っていない。 そのため、 この教えを大切にしているのだ。
「もうちょっと丁寧に扱いなさい」
「はーい」
「そう言えば、 馬車は用意できたの?」
「あるわけないじゃん」
ウールが率直に答えると、 大蛇はガックっと落ち込んだ。 無論、 パシフィックの拠点にも置いて無い為、 実質詰んでいる。
「あー徒歩で行くしか無いのか……」
「【転移】すればいいだろ?」
カカオがそう指摘するが、 まだ6時台なので使えない。 と言う事で、 リアンとウールを連れて徒歩で向かった。 ここから約1時間、 武闘派の彼らにとってはあまり苦にならないそうだ。
「あの~モミジ先輩ってどんな方なんですか?」
リアンが大蛇にそう聞いたら「見た目、 市松人形の伊達女」と雑に返した。
「ウールはあった事あるのよね?」
「あるよ~お姉ちゃんが一緒に連れて来たんだ!」
実はウールはコットンの誘いで入社したのだ。 その時にモミジと出会っていたのだ。
「あ~そんな事言ってたわね」
聞いた割にはとんでもなく興味がなさそうだった。 そうこうしているうちに、 3人は滅んだローバロの王都へ着いた。
「2年ぶりだわ……」
大蛇がボソッと呟いた直後、 奥からモミジが姿を現した。
「おろちん! 久しぶり! 昔より逞しくなったな!」
モミジがつげ櫛で髪をとかしていた。
「お帰りなさいませ、 モミジ先輩」
「お久しぶりです! ウールです!」
「初めまして! リアンと申します!」
3人は同時に頭を下げた。 モミジの後ろからミレットが現れた。
「おろちん~ついたんだったら報告して」
「すみません、 立て込んでいたもので……」
「お久しぶりです! ミレット先輩!」
ウールが頭を下げると、 彼女は照れながらウールの頭を撫でた。
「初めましてリアンです! よろしくお願いします!」
「よろしくね! 期待の新人ちゃん!」
ついでにリアンの頭も撫でた。 面倒見のいい先輩なのはわかる。
「そろそろ、 新本部に戻りましょう……【転移】も使える頃なので」
大蛇の発言により、 その場にいた全員は関雷雨新本部へ【転移】したのだが、 モミジは間違えてパシフィックの本部へ【転移】してしまった。 そこには、 クルミとリゾットが朝食を食べていた。 メニューは白米に味噌汁、 魚の塩焼きだ。
「みんな! 久しぶり!」
「モミジ! 久しぶりやな!」
クルミとリゾットがモミジに近寄った。 この3人は、 同期だ。
「お! 優秀な同期が帰って来た!」
リゾットとクルミとモミジがハイタッチを交わす。
「あれ? 他の皆は?」
モミジがそう聞くと、 リゾットが「新本部の方に行ったよ」と言い出した。 この2人は留守番でここに居る様だ。
「やごーに挨拶してくる」
「「いってら~」」
直後、 モミジは新本部へ【転移】した。 目の前に「やごーの部屋」と書かれた部屋に礼儀正しく入った。
「モミジ、 ただいま帰りました」
「おかえり! モミジ!」
やごーが嬉しそうに出迎えた。 その隣にミレットがいる。
「ミレットから活躍を聞いた……2人とも無事で何よりだ」
やごーが安心した様子で仮面を外した――その容姿は麒麟と酷似していたが髪と目が黒色のイケオジだった。
「貴方、 本当に26?」
ミレットがいかがわしい表情で彼を見つめた。
「26なのにおじさん、 おじさんってうるせぇよ全く……」
「その顔だから仕方ねぇだろ」
モミジが正論をぶつけた。
「うるせぇよ!」
「これでやっと……2年前の麻薬戦争も終わりね……」
ミレットがそう話すと、 2人は落ち着いた表情を浮かべた。
2年前――パシフィック王国では、 トラウト、 ローバロ、 トリスカの3国が麻薬組織を利用して国内を内側から崩壊させ、王国を滅ぼそうとした。なぜなら、 パシフィックの香辛料を3国で独占するためだった。
無論、 パシフィック全土を縄張りとする関雷雨が、 この計画を見逃すはずもなく、 両者は戦争へと発展した。
最悪な事に、 トリスカの同盟国であるメルビレイが介入したことで戦いは長引いた。
「後はメルビレイをどうするかだな……」
「あの国は別格なので慎重に行きましょう」
モミジが冷静にそう提案した。 そう、 メルビレイ王国はこの3国よりも強い為、 下手に動くと人員を失ってしまう。
「そうだな……とりあえず今日は18時から宴だ、 用事作るなよ~」
やごーは気が落ち着いたのか軽く微笑んだ。
*
その頃、 孤児院組と智和は会議室で会話をしていた。
「ここ数日、 色々あったな~」
玄武が相変わらずおっとりしていた。
「これで少しは落ち着くといいな」
青龍は肩の力を抜いた。 初日早々、 村を作って戦争に巻き込まれるなんて、 誰も想定して無かった。
「ホントそれな! こっちだって体力が持たねぇよ!」
朱雀が激しく同意した。 あの後、 怪我人を『再生の炎』で治療していたのだから。
「その豊潤な胸肉を使いなさい、 もったいないから」
智和がセクハラ発言をしたら、 朱雀が「殺すぞ!!!」と怒号を上げた。
「そう言えば亀吉、 あの時何してた?」
青龍が急に話題を振った。
「亀吉は関雷雨と一緒にドワーフの村が襲われてるから救援に向かわせてた」
麒麟が会話に割り込んだ。
「そうだった……忘れるところだった……せっかくだし今話すか!」
ついに、 彼の口からドワーフ救出劇について語られる――




