不落のカカオ&神速の大蛇
大蛇は大太刀を【転移】した。
「この兵力ではいくら何でも奴らとて敵わない……」
バッファローは余裕があるが、 フェモラータは不穏な表情を浮かべた。
「いえ、 今すぐ兵を引きましょう、 このままでは全滅します」
フェモラータが命令しようとした瞬間、 大蛇がフェモラータの眼前に現れ納刀。 直後、 百人の兵士の首がボロっと落ちる。
「神速の大蛇……」
フェモラータがそう呟いた瞬間、 大蛇がフェモラータを蹴り飛ばす。 だが、 フェモラータは手に装着している甲でガードしてダメージを軽減する。
「フェモラータ! 加勢するぞ!」
バッファローがそう叫ぶ。
「バッファロー! あなたは他の敵を相手してください! 」
フェモラータは大蛇と激しい戦闘を繰り広げた。
「あなた意外と速いわね……」
大蛇が楽しそうな表情を浮かべた。
「こんばんは~カカオと申しま~す。 名前だけ憶えて、 今すぐあの世行こうや」
カカオが背後からバッファローに声をかける。
「不落のカカオか……」
バッファローが振り向く。 そこには、 カカオが殺した兵士の死体が転がっていた。
(こいつら……たった数秒で我が軍の兵を……)
バッファローが固唾を飲んだ。 その時、 カカオの後ろから兵士が襲い掛かり剣で斬りつけるが、 全く意味をなさない。
「お前ら何しとんねん」
カカオがSIG P220という拳銃と脇差を【転移】して、 襲い掛かった兵士の首を横一文字に斬り裂く。
「鞘抜いといて正解やったわ~」
カカオが安心した表情を浮かべた瞬間、 バッファローがカカオの顔面をぶん殴った。 しかし、 カカオは余裕の表情で手を払う。 次の刹那、 バッファローの太もも目掛け弾丸を撃ち込む。 弾が肉を貫き、バッファローはその場で苦しい表情を浮かべる。
「女の顔を殴るなんて、 いい度胸しとるな~お前」
カカオの顔には傷一つ無かった。
「おのれ……」
「チャカでいてまうのもええけど、可哀想やからドスでやるわ」
カカオはその場に銃を【転移】で戻し、 ポケットに手を突っ込む。
「このクソアマ!」
バッファローが右拳で殴ろうとした瞬間、 カカオがポケットから六角棒手裏剣を投げ、 バッファローの右目を潰す。 だが、 バッファローは止まらずカカオに殴りかかる。 カカオは瞬時に、 腕をクロスさせガードする。
「折れろ!」
バッファローは何度も殴るがカカオには効いていない。 次の瞬間、 バッファローの右拳が切り飛ばされる。
「悪いけどもう寿命や……」
『画竜点睛』
カカオの短刀が黒紫に光る。 その刃で、 バッファローの左拳も斬り落とし、腹を縦に切り裂いた。
「くそ……ここまでか……」
バッファローはその場で大の字に倒れる。
「最後に言い残すことは?」
「生き残っている奴は見逃してくれ……」
「わかった……」
「フェモラータ……先に待っているぞ……ケレヴ……強く生きてくれ……」
バッファローがそう呟き、 目を瞑るとカカオが心臓を貫く――バッファローはこの世を去る。
そのころ、大蛇とフェモラータは戦闘中だった。
「なかなかやるわねあなた♡」
「ありがとうございます……ですがそんなに余裕で大丈夫ですか? 」
フェモラータは大蛇の顔を蹴る。 すると、 大蛇は後ろに下がり鼻を押さえる。
「クッソ! イッタ!!」
大蛇の鼻から血がぽたぽたと流れ出た。 大蛇は隠すように刃に唾をかける。
(刀に唾を……まさか竜人?)
フェモラータは神経を極限まで研ぎ澄ます。
「あらごめんなさい♡竜人は初めてかしら?」
大蛇が笑みを浮かべながら問いかけた。 フェモラータは反応しない。 一部地域では竜人の事をレプティリアンと呼ぶそうだ。
(こういうタイプはこうすればいいのよ♡)
大蛇は鞘をその場に落とす。 ポケットから閃光手榴弾を取り出し安全装置を外して、 フェモラータに投げつけた。 すぐさま、 フェモラータは閃光手榴弾を殴るが、 その直前で破裂。 目がくらむような光と耳をつんざく爆発音が襲った。 その直後、 大蛇がフェモラータの太ももを斬りつけた。
「これはいったい」
フェモラータがその場で跪く。
「あたしの唾液に含まれているマンバトキシンていう神経毒よ♡ 早く解毒しないとあなた死ぬわよ♡」
大蛇はそう説明すると、 ポケットからハンカチを取り出し、 刃に付着した血液と唾液をふき取り、 じわじわとフェモラータに近寄った。
「蛇竜村の生き残りですか」
フェモラータが解毒薬を飲んだ。 その言葉を聞いて、 少し動揺した。
「それはあたしの親父だわ……」
「そうですよね……今のあなたには関係ないですものね……」
「まぁいいわ! どの道あなたは殺さないといけないから」
大蛇は目にも留まらぬ速さで斬りかかる。 しかし、 フェモラータは鉄製の甲で弾き返し、 応戦した。
「見せてあげましょう……私の本気を!」
フェモラータが手足に身に着けた鉄製の甲を巧みに使い大蛇に攻撃を仕掛ける。 そのため、 大蛇の方が少し劣勢になる。 だが、 大蛇も速度を上げ、適応する。 2人は目にも止まらぬ速さで攻防を繰り広げた。
「あたしも少し本気を出そうかしら♡」
大蛇が独特な構えを取る。 フェモラータが何の躊躇もなく突撃してきた。 次の瞬間、 フェモラータが何かに気づく。
(しまった! やらかした!)
フェモラータが足を止めた。
「かかったわね♡『蛇の一閃』」
大蛇がフェモラータの首を斬り落とそうとするが、 ぎりぎりの所で回避された。 青龍の『蛇の一閃』とは違い、黒紫色の斬撃波が生じた。
「あーもう少し殺せたところだったのに」
大蛇は鞘を一瞬で回収し、 納める。
「もう降参ですか?」
フェモラータが挑発するが大蛇はびくともしない。 むしろ、 真剣な表情を浮かべていた。
「何よ、 あなた……あたしはそんな挑発でびくともしないわよ」
大蛇は居合の構えを取る。
「苦しまないよう一撃で仕留めるわ♡」
直後、 フェモラータは大蛇の顔面目掛けてタイキックを繰り出した。だが、奴は術中にハマってしまった。
『漆黒一閃』
大蛇が目にも止まらぬ速さで抜刀、 漆黒の斬撃がフェモラータの体を斬り裂いた。
(まさか……ここまで速いとは……)
フェモラータはその場で倒れた。
「見事なり」
フェモラータは大蛇を称賛した。
「他に最後に言い残す事は無いかしら?」
「最後にあなたと戦えてよかったです……厚かましいですが頼みがあります……まだ生き残っている兵士は生かしてください……」
「いいわよ」
「それと……バッファローと同じところに埋めてください……後、 ケレヴの死体があれば……一緒に……」
フェモラータはそう言い残すと、 目を開けたまま息を引き取った。
「仕方ないわね……」
大蛇はフェモラータの瞼を優しく閉じた。
「おろちん~悪いお知らせがあるんやけど」
後ろから、 ウールとパールを連れたカカオがやって来た。
「どうしたのよ?」
「こいつら兵士を皆殺しにした」
「あっ……それはちょっと不味いわね」
皮肉にも彼らの願いは叶わなかった――




