群体VS軍隊
「おい! お前、マリーナのセルゲイだな!」
藪螽蟖はエルフにそう聞いた。
「そうだよ……だから何だよ?」
エルフは傲慢な態度でそう返答した。 このエルフの名前はセルゲイ・シコルスキーと言い、 聖騎士の1人だが、 恐らく影武者だ。
「部下と一緒に帰れ! じゃないと部下を喰い殺すぞ!」
藪螽蟖はセルゲイの部下にキリギリスが徐々に群がり始めた。 そのキリギリスの特徴は、 リオック並みの大きさで咬合力は60kgである。 そのうえ、 牙の鋭さは剃刀レベルだ。
「断る!」
セルゲイがそう叫ぶと、 キリギリスはセルゲイの部下を食い荒らし始めた。 最悪な事に部下は、 頭部以外は鎧を着ているため、 口の中から入り内側から食すものが多く、 兵士たちは悶えながら帰らぬ人となった。 直後、 キリギリスたちは散り散りになり、 ススキの中に身を隠した。
「おい! お前、 仲間を見捨てるとかクズだな!」
藪螽蟖は鞘付きの日本刀を手元に【転移】させ抜刀、 セルゲイを袈裟懸けに斬り裂く。 しかし、セルゲイはファスナーを開ける様に骨肉を動かし藪螽斯の斬撃をいなした。
「へっ! 驚いただろう!」
セルゲイはファスナーを閉める様に骨肉を動かし、 素早くつなぎ直した。 次の瞬間、 セルゲイはショートソードを抜刀、 藪螽蟖の左手首を斬り落とした。
(再生しない!)
何かを察したのか藪螽斯は上腕を斬り落とし、 セルゲイから距離を取る。
「お前ら生物型核兵器に有効な金属、 《戒めの鎖》を使った武器だからな!」
セルゲイは鬼の首を取ったように調子に乗る。 《戒めの鎖》それは、 マリーナ法皇国だけで採れる金属で、 とても柔らかい金属でそのまま使うとすぐに壊れるが、 他の金属と融合させることで硬度を上げることができる。 名前の由来は発掘時に鎖の形で出て来たからだ。
「戒めの鎖ってマリーナでしか取れないアレ?」
藪螽斯は首を傾げた。 その時、 切り落とした腕が再生した。
「お前に教える義理は無い!」
セルゲイは藪螽斯に襲い掛かった。 しかし、 セルゲイの左腕にキリギリスが纏わりつき、 食い荒らし骨にした。 それと同時に藪螽斯はグチュグチュと音を立てながら腕を再生させ、 攻撃をいなした。 再生と同時にキリギリスは灰の様な物と化した。
(腕が!)
セルゲイが目を逸らした瞬間、 藪螽斯が得物でセルゲイの腹を斬り裂き、 内臓を露出させる。
「一か八かだ!」
藪螽斯はバックステップで距離を取る。
『神無月』
次の刹那、 藪螽斯は緑色の斬撃波を飛ばしセルゲイに命中。 しかし、 セルゲイは死ななかった。
「残念だったな……[シャローム]!」
セルゲイがそう叫ぶ。 するとセルゲイの傷口が塞がり、 全身白いカビの様な物に覆われた。
「嫌な予感がする……」
藪螽斯は奴の出方を伺った。 次の瞬間、 セルゲイを斜めに切り裂く。 しかし、 セルゲイは余裕な表情で攻撃をいなした。 直後、 セルゲイが藪螽斯の腹を蹴り、 遠くへ飛ばした。
「マジか……」
「お前の負けだ! 潔く死ね!」
セルゲイは高笑いに笑い、 勝利宣言をした。 しかし、 藪螽斯が自身の左腕をキリギリスの群れへと変え、 セルゲイの腕に纏わりつき、 喰い落した。
「それがどうした?」
セルゲイは腕を拾いくっつけようとする。 しかし、腕はくっつかない。
「どういうことだ……」
セルゲイは焦って何度も腕をくっつけようとした。 だが、 元には戻らなかった――
「『神無月』!」
藪螽斯は左腕を再生させ、 セルゲイに『神無月』を放つ。 しかし、 セルゲイは高く跳びあがり回避した。
「よし、 今だ!」
『蝗害之舞』
その場に居るキリギリスがセルゲイの周りを囲む様に飛んでいる。 それと同時に藪螽蟖の足がキリギリスの様な形状となり高く跳んだ。
「おい嘘だろ……」
セルゲイは絶句する。 なぜなら、 周りを飛ぶキリギリスが細胞分裂するかの如く徐々に増えているからだ。 その直後、 ススキ畑から大量のキリギリスが跳びかかり、 セルゲイに纏わりつく。
「安らかに眠れ」
「クソっ…」
セルゲイは逃げようと剣を振ろうとした。 その刹那、 藪螽蟖が『神無月』をセルゲイ目掛けて飛ばす。 それと同時に藪螽斯の別の技が発動した。
『懺悔滅罪』
なんと飛んでいるキリギリスが『神無月』へと変わり、 セルゲイに襲い掛かった。
「クソがああああ!!! だが、 これで終わると思うなよ! 青柳……藪螽蟖ィィィィ !!!」
セルゲイは断末魔の叫びをあげながら肉片と化した。 藪螽斯は豪快に地面に着地すると足を元に戻した。
「流石にもう復活できないだろう……」
藪螽斯はその場に跪く。
「おい、藪螽斯 大丈夫か?」
いかにも幕末の武士の様な格好をした男が藪螽斯に近づく。
「由四郎のおっさん……やりすぎた……」
男は藪螽斯を担いで安全な場所に運んだ。 この男は忠岡 由四郎といい、 転生前に正勝に仕えた男だ。
「俺はいつ殿に会えるんだか」
「近いうちに会えるんじゃないかな……」
「たどいいな……」
その後、 円四郎は藪螽斯をかなり先の茶屋で休ませた。その様子を望遠鏡で見ていた者がいた――
「影武者にしてはよく頑張ったな……」
なんと、 セルゲイ本人が偵察に来ていたのだ。 奴の本名はセルゲイ・サルヴァトーレといい聖騎士の上位職である、 聖盾だ。




