ルキナ暴走
「親父! 知り合いか!」
「あぁ……数か月前に知り合ったばかりでね……」
正勝はとても落ち着いていた。
「2人ともどうだった?」
パストはフェザーとクラブにそう質問した。
「まだ回収してないけど白鯨見つけたよ~」
クラブは笑顔でそう返答した。
「了解~他の4人と一緒に回収してきて」
パストの合図で2人は【転移】した。
「お前ら誰だ?」
麒麟はのそっと起き上がった。
「俺は徳川 智和、こっちは親父の徳川 正勝だ」
「んで私は関雷雨のパスト!」
パストはハイテンションだった。
「あーやる事思い出したから取り合えず『神の一手』」
麒麟は能力を使い、 その場に居た3人は別の場所に飛ばされた。 智和と正勝は会議室と思わしき場所に、 パストはルキナと入れ替わった。
「え! ちょっと待って! さっきまで食べてたラーメンは?」
ルキナは急な出来事に混乱していた。 麒麟は彼女の頭を撫でた。
「開幕早々悪いがお前にはこいつを運んでもらおうか……」
「開幕早々悪いがどこに!?」
ルキナはツッコミを入れる。
「とりあえず3階の部屋に運んどいて~」
麒麟はグラスをルキナに持たせ【転移】した。 ルキナが飛んだ先は高級ホテルのロビーの様な場所だった。
(なんで病院じゃないんだよ……)
ルキナは「【転移】先が間違っているのでは?」と考えた。
(とりあえずこの人運ぶか)
ルキナはグラスを指定された場所に運んでいた。
(この人重い……)
「すみません! お持ちいたしましょうか?」
1人のウェイターがルキナに話しかけてきた。
「うわ! ビックリした!!」
「ここから先は私がお持ちします」
ウェイターの発言でルキナはグラスを渡した。 ただ、 何か違和感を感じる。
「さて! 冷たいミルクティーでも飲みに行こ!」
ルキナは安心したような様子だったが。
「おーいグラスどうした?」
麒麟がルキナの後ろに突然現れた。
「うわ! ビックリした!!もう驚かさないで!」
「それよりもグラスはどうした?」
「ウェイターさんが運んで行ったよ~」
彼女はわかっていないこの行為が、 グラスの生死を分けることに。
「マズイな……あいつがアサシンか!」
麒麟はルキナを担いで走り、 奴を探した。
「どうして渡しちゃいけないの?」
「暗殺者が紛れ込んだ!」
「よくわかんないけど……あれ!」
ルキナがグラスを抱えた奴に指を指した。
「サンキュー!」
2人がウェイターを見つけた瞬間、 ウェイターがポケットから毒々しい色の液体が入ったポーションを取り出しグラスに飲ませようとした。
「あの人快眠薬を飲ませようとしてるよ!」
ルキナはジタバタと動きながらはしゃいだ。
「どっからどう見ても毒薬だろ!」
麒麟はツッコミを入れた。
「えーじゃあどうするの?」
「俺に考えがある。 お前は言うことを聞いてくれ! 」
麒麟はルキナの耳元で囁く。
「そんなことしたらお尻見えちゃうよ! 」
ルキナは頬を赤らめた。
「大丈夫、 生物型核兵器の部位変化は自分が着ている服には影響が無いから」
「もう! 嘘ついてたらこの服弁償してよね!」
ルキナは気に食わぬ顔で、 尾骨辺りからサバンナモニターの様な尻尾を出した。
「ねぇ! 尻尾生えたよ!」
ルキナは笑顔ではしゃいだ。
「よし! じゃあ作戦通りにね」
「うん!」
(新しい技かなんか知らんけどやるか! 『狂った時間軸』)
麒麟は目にも止まらぬ速さで奴の背後に回った。 まるで、 瞬間移動したかの様に。 直後、 奴をルキナの方に蹴り飛ばした。
「『ニュークリアストライク』!」
ルキナは飛び跳ね、 尻尾で地面に叩きつけた。
「やったか?」
「まだだよ! この人変な動きしてる!」
ルキナが報告するとウェイターは彼女に向かって水属性の魔法攻撃を仕掛けた。 幸いな事に頬に軽い切り傷だけで済んだが、 そこから流血し始めた。
「大丈夫か?」
麒麟はルキナを心配した。
「大丈夫だよ!」
ルキナの傷がグチュグチュと音を立てながら再生した。
「お前は何者だ!?」
麒麟はウェイターに向かってそう聞いた。 すると、 奴は魔方陣を使って姿を変えた。 服装はフードを被っていて楔帷子と黒いズボンを着服している。
「私はトラウト王国暗殺部隊隊長 ラックスであーる!」
アサシンは自己紹介をした。
「キモすぎ!! 頭悪そう!!」
ルキナが嫌悪の表情を浮かべた。
「で? お前の目的は?」
麒麟はラックスにそう聞いた。
「この村を内側から破壊しに来た、 それとそこにいる愚か者を殺しにな!」
ラックスはどこか含みのある言い方をしていた。
「それだけか?」
麒麟はその言葉に違和感を覚えた。
「どういうことだ?」
「いや~こんな堂々と作戦話す馬鹿がいるかな~と」
「フッフハハハハ」
急に笑い出すラックス。
「どうした?」
「もしかして! お兄ちゃんが言ってた”生物型核兵器”が関係してるのかも!」
ルキナが驚いた表情で麒麟に聞くとラックスが笑うのをやめた。
「正解だ! 小娘! 我の目的は生物型核兵器の殺害、 及びガイドストーンの回収だ!」
ラックスはニヤニヤしながら指を2人に指してくる。
「隊長がそれ言っちゃダメでしょ」
「もう終わりだよあの国」
ルキナが中指を立て顔をしかめる。
(あっなら対処は簡単だわ)
麒麟はルキナに大型のサバイバルナイフをこっそり渡した。
「ちょっと! どういうこと?」
ルキナが小声で質問する。
「これ使ってあいつと戦ってこい……援護するから」
麒麟はルキナにそう囁く。
「私、 人なんて殺したくないよ!」
全力で拒否をするルキナ。
「大丈夫あいつ人間じゃなくて蠅だから」
麒麟はルキナに活を入れた。
「だったら殺せるね!」
ルキナはとても喜んでる様に見えるが足が震えている。
「大丈夫だ……ゆっくり息を吸って吐き出せ……」
麒麟はルキナの背中を優しく摩った。 ルキナは気持ちを安定させるため深呼吸をした。 次の刹那、 ルキナは猛スピードでラックスに突撃した。
「この素人が! 隊長である俺に勝てると思ってんのか!?」
ラックスは腰につけてあった短剣を左手で抜いて攻撃態勢に入ったが時すでに遅し、 ルキナが得物を振り下ろし、 左手首を切り落とされた。
「嘘だろ……こんな小娘に……」
ラックスは根元を布で縛り出血を止めていた。
「やった……」
ルキナは大量の汗を流し、 荒い息をする。
(この俺がこんな小娘ごときに!!!)
ラックスは歯を食いしばり、 ルキナを睨みつける。
「よーし! 行くよ!」
ルキナは目から血液を流し肩甲骨から蝙蝠の翼を生やした。
「何か……くる!」
「いくよ~!『灼熱の鉄槍』!」
直後、 ラックスの頭上に細くて鋭い鉄の棒が出現。 その瞬間、 目にも止まらぬ速さでラックスを貫いた。
「クソが……」
ラックスに突き刺さった鉄の棒が激しく発火。 一瞬でラックスを焦げた肉の塊へと変えてしまった。
「おいおいまずいな……」
麒麟は『神の一手』で炎を消火する。
「わーいやった! やった!」
ルキナはその場で飛び跳ねる。
「やったー!じゃないのよ……」
「あの女……ヤバイ」
グラスは怯えたような目でルキナを見つめた。
「おーい! もう出ていいぞ!」
麒麟は物陰に隠れているグラスを呼び出す。
「おいなんだよ……」
グラスはため息をつきながら物陰から出て来た。
「ねぇねぇ敵? ルキナ特性! 熱々の棒を穴にぶち込んでいい?」
ルキナが目をキラキラさせながら麒麟にそう聞いた。
「ダメに決まってんだろうが!」
グラスは即座にツッコミを入れた。
「言い方が意味深すぎるからダメです」
麒麟が緩そうな雰囲気を醸し出す。
「グラス~体調大丈夫?」
「大丈夫だ」
「よし! じゃあ仕事を与えよう」
「上から目線だな、 なんだよ!」
グラスは麒麟に顔を近づけ睨みつける。
「亀吉ていう俺より身長小っちゃくてマント羽織ってる車掌さんのお手伝い~」
「フワフワしすぎだ! 具体的に何を手伝えばいいんだよ!!!」
「具体的に~戦闘だな……あいつは攻めより受け身だからな~」
麒麟は上を向き、 顎に親指と人差し指を顎に乗せる。
「ふん! せっかくだから行ってやろう!」
グラスはとても上から目線で了承した。
「グラスさん脳筋なんですね~」
ルキナが細い目でグラスを見つめる。
「おい、 お前どこの国出身だよ」
「ドイッチュラント!」
「どこやねん!」
((お前地理できないのかよ……))
麒麟とルキナが同時にそう考えた。
「とりあえず、 この服やるから着替えな」
麒麟はグラスにベージュ色のダウンとデニムパンツを渡した。
「ありがとう……着替えてくる」
グラスは近くにあった部屋に入り着替え始めた。
「ねぇねぇ名前何て言うの?」
ルキナが無邪気な態度で質問した。
「竜馬」
「竜馬くん! 私、 妹が欲しいからお取り寄せできない?」
「ぬいぐるみじゃないからお取り寄せはできないよ~」
麒麟はルキナの頭をポンポンと触る。
「おい……着替えたぞ」
麒麟が渡した服に着替えたグラス、 履き心地は悪く無い様だ。
「あっちょっと待ってね!」
麒麟は彼女を玄武の元へ【転移】した。
玄武の活躍は、数日後に語られる。




