青龍の過去
エリスが青龍を病院に運んだ後、 袖無しの黄色い花柄のワンピースを着たルキナがやってきた。 重そうに青龍を担いで病院の一室に運び靴を脱がせベッドに寝転がせた。
「あー疲れた!」
ルキナは青龍が寝ている場所にダイブした。
「痛った!」
青龍は目を覚ました。 まるで、 子供に起こされる父親の様に。
「あれ!」
ルキナは隣のカーテンがかかったベッドに指を指した。 青龍は立ち上がりカーテンを開けるとそこには、 白虎がエメラルドを抱き枕にしていた。
「ミルクティーのいい匂い~」
「ホワイトムスクのいい匂いがする~」
とても幸せそうな夢を見ていた。 因みに、 エメラルドがミルクティーで白虎がホワイトムスクの匂いがする。
「お兄ちゃんおかえり」
「ただいま~エメちゃんおいで!」
青龍が両手を広げる
「ヤだ」
エメラルドは白虎に抱き着いた。
「エメちゃんは甘えん坊でちゅね~」
白虎はエメラルドの頭を撫でた。
「蛇之~起きた~」
朱雀がしれっと入ってきた。
「あれ? 雀任務は終わったの?」
白虎は首を傾げた。
「特に問題無かったから戻ってきた」
「竜馬に報告したの?」
青龍が朱雀に問うと、 首を横に振る。
「雀ちゃん抱っこ」
ルキナが朱雀に甘えると彼女は抱きかかえた。
「もう1回見に行ったら?」
「いいけど、 猫都連れて行くよ?」
朱雀はルキナを下ろした。 それと同時に、 白虎がエメラルドを青龍に渡す。
「どうぞどうぞ」
青龍が了承すると朱雀が白虎を連れて任務へ向かう。
「行ってらっしゃーい!」
ルキナは笑顔で手を振る。
「下りる」
エメラルドが青龍から下り、 ルキナに後ろから抱き着く。
「ベッドに入りたい」
ルキナが靴を脱ぎベットに入る。
「私も~」
便乗するようにエメラルドも同じ場所に入った。
「入っていい?」
青龍が2人にそう聞くと、 同時に頷いた。 ホッとした表情でサッとベットに入った。
「2人とも可愛いね~」
青龍は2人を抱きしめ、 頭を撫でる。
「ねぇねぇお兄ちゃん!」
ルキナが青龍の腕を引っ張る。
「どうしたの?」
「お兄ちゃんの昔話をして」
ルキナが急に聞いてきたため、 青龍は困った表情を浮かべた。 なぜなら、 彼女の言う”昔話„は、 青龍自身の過去の話だからだ。
「思いだしたくねえけどな~仕方ねぇ」
青龍は渋々だが淡々と語り始めた。
*
俺は昔、 家族全員で都会に2泊3日の旅行に行った。 遠い田舎だったため飛行機を使って向かい、 そこからレンタカーを借りて都会を観光していった
「あい! お兄ィ! ベルトつけて!」
弟が俺に向かってそう注意して来た。
「蛇之! ちゃんとしなさい! 危ないでしょ!」
母が後ろを向いて軽く頭を叩いた。
「まあまあ……そう怒るなよ」
「はーい」
2人の注意を受け、 俺はシートベルトをした。
「お兄ィ何食べたい?」
弟が俺にそう聞いた、 俺はとっさに「お肉が食べたい」と言ってみた。 すると、 みんな笑い出した。
「蛇之は相変わらずだな! いいぜ肉食いに行くか!」
父は元気よく大声で笑い出した。
「あらあら」
母はクスクスと笑った。
「あい! 俺もお兄ィと同じものがいい!」
弟はいつも以上にはしゃぎだした――その様子に、 俺と両親が微笑んだ。
「いっぱい肉食って、 いつか大きな龍になって空を自由に飛び回る! それが俺の夢だ!!」
子供らしい夢を叫ぶ俺、 皆楽しそうに笑っていた。 とても和む当たり前の日常だったが、 そんな幸せな時間も長くは続かなかった。
「ちょっと待て……あの車おかしいぞ……」
父が反対車線のおかしな様子に気づいた瞬間、 俺たちが乗っている車目掛けて突っ込んで来た。 嫌な予感を悟った俺はとっさにシートベルトを外した。 その直後、 車は大爆発を引き起こし外へと吹き飛ばした。 皮肉なことに火傷と骨折と大量出血で済んだが弟達は中に残ったままだった。
「おい……噓だと言ってくれ!!」
最悪な光景を見た直後、 気絶してしまった。 いつの間にか病院の中に入ってて寝ていた。 近くにいた看護師に家族の安否を聞くと俺以外は皆死んだとの事。
「向こうの車の運転手はどうですか? 」
俺が看護師にそう質問すると、 「向こうの運転手も無くなった」と残念そうな表情で言った。 恨みはあったが、 死んだら仏これ以上は責めたくない。
(あの世で反省してくれるといいな……)
俺はそんな事を考えていた。 でも真実を知るまでは――
「あの事件もこの事件も俺がやったんだぜ!」
どこかからそんな声が聞こえた。 俺は声の主を探した。 この事件、 もしかしたら仕組まれてたのかもしれないと、 ふざけた妄想が脳裏をよぎった。
「俺は偉いんだ! だから人を殺しても許される!」
俺は声主を見つけ出した。 その男は不良みたいな感じな男でテレビを見ながら携帯電話で誰かに電話している。 そのテレビにはあの衝突事件のニュースだった。 俺は家族を殺された怒りで近くにあったパイプ椅子を手に取り。
「このクズ野郎がああああ!」
俺は大声で叫びながら、 クズ野郎を何度も何度も殴り続けて額から血を流させた。
「このガキ!」
クズ野郎は俺を数発殴って出血させ痣を作った。 野郎は疲れたのか攻撃を辞めた。 俺はその一瞬を狙い首に噛みついた。
幸いなことに俺の犬歯が鋭かったのでクズ野郎は叫びながら俺をはがそうとした。 俺は思いっきり顎に力を入れ、 首を噛み千切り絶命させた。 その後も、 拳で何度も何度も殴り、 全身血まみれになりながら奴の死体をめちゃくちゃにしてやった。 辺りに赤黒い血液や細かい肉片を無造作にばら撒いてやった。
「地獄で反省しろ! ゴミ屑野郎が!!!」
俺が踏みながら叫ぶ。 その光景を目撃した看護婦が俺を止めに来た。
皮肉なことに、 俺は指名手配犯となり病院を抜け出し人気の無い山奥に徒歩で向かった。 その際、 食料と水分が無かったので、 水は川から摂取した。 食料はそこら辺の動植物をかったっぱしから食いつくした。 何らかの事情で殺された女性の死肉も喰らいつくした。 とても、 鉄錆臭くてゴムの様な食感――とても食えたものでは無かった。 何回か嘔吐下痢や呼吸困難に見舞われたが数分後には治まっていた。 俺のイカレタ体質のせいだろうな――毒耐性が異常に加えて、 摂取した毒素を唾液腺から出せる。
「絶対生き残ってやる! 俺は死なねぇからな!!」
生存本能に操られるように俺は行き場所を探した。 何も無くて絶望した時もあったが――
「どんなことがあっても絶対に生きのびてやる! 絶対にな!!!」
俺は雄叫びを上げ、 拳を天に衝き上げた。 その日は見事な晴天だった……何かいいことが起きそうだ。
その後、俺はたまたまあったホームレスのたまり場に2日だけ居座り、 様々な事を学んだ。 彼らの紹介であの孤児院を紹介してもらった。 あの人達に恩を返したかったが返せなかったのが残念だった――エネルギーが底を尽き、 孤児院の前で倒れてしまった。 幸運な事にたまたま竜馬がいた。
「おい! 大丈夫か!!」
竜馬は当時見ず知らずの俺を担いで孤児院に入れてくれた。 安心と不安が混ざり合って謎の感情が心に張り付く。
「飯……食わせてくれ……腹減った……」
異常なほど空腹だった……何にでも食らいつきそうだった。
「待ってろ、 今から飯食わせてやる」
竜馬は食堂に連れて行った。 ”飯”その単語だけでも俺はとても嬉しかった。 力が出ないため近くの椅子に座った。
「唐揚げ定食だ! ゆっくり食えよ」
竜馬がわざわざ持って来てくれた。 俺はそれを口に運んだ――久しぶりにまともな飯を食ったためバクバクと食べた。
「あったけえうめぇ」
「お前どうしてあそこで倒れてた?」
竜馬が心配そうに聞いてきた。
「俺は指名手配されてて山の中を死に物狂いで進んでいた」
「そうか……苦労したんだな……お前もここで暮らすか?」
その言葉で俺の涙腺が少し潤って来た。 枯れ木の様な俺を――
「指名手配犯で役立たずの俺でもいいのか……ここに居ても」
「ああ!! いいぜ!! 嫌な過去が霞むほどいい思い出作っていこうぜ!!」
俺はこの言葉を聞いて涙腺が崩壊し、 その場で崩れ落ちた。
「ごめん……ありがとう……」
俺の胸は死ぬほど締め付けられた、 負の感情ではなく余りの嬉しさに。
「気にするな! 困ったときはお互い様だ!」
「ああ……死ぬほど恩返しさせてもらうぜ!!」
俺と竜馬は熱いグータッチを交わした。
*
「思った以上に壮絶だったね……」
ルキナの顔は青ざめていた。
「この世界では平和に暮らせるといいな~」
青龍は深刻そうな顔をして、 上を凝視した。
「何とかなる」
エメラルドが青龍の胸に耳を当てる。
「なるといいね」
青龍は欠伸をしながら、 エメラルドの頭を撫でた。
「休んだら?」
エメラルドの発言を聞いて青龍は再び眠りについた。
「お姉ちゃん痛くないの?」
ルキナがエメラルドにそう聞くと「全然」と返し目を閉じた。 それを見たルキナは2人を抱きしめ、 眠りについた。




