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早死して転生したアラフィフですが、異世界の江戸では人生愉快痛快です』  作者: 藍紫
第二章 松竹亭での出来事

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7 松江様と心花魁

松江がまるちゃん、孔ちゃんの二匹と部屋に到着すると、まさに心花魁が、豆助と紅の禿達に帰り支度をさせている所であった。


治助様はもう半泣き。

「花魁、待って、待っておくれよう」

と、心花魁の着物の裾を持っている。

「わっちは、この宴好きじゃないんで帰ります」

……先ほどからこの繰り返しである。

松江はため息をついた。

(花魁!こいつもう私の事も、一瞬忘れてるだろ!)


「あの〜心花魁。」

松江がしょうがなく声をかける。

すると、あれ程帰るとごねていた花魁の顔がぱっと明るくなり、その場に腰を下ろした。


「あら!松江様!いついらしたの?」

「今しがたですよ。心花魁」


いったい何の騒ぎですか?治助様」

(ま、察しはつくけどね……)

そう思いつつも、涙目の治助に問う。


「ああ!松江様聞いておくれ。心花魁がもう帰るというんだよ。

お酒と料理のマリアージュも最高なのに……」

(本人が帰るって言ってるのに、マリアージュとかないって。粋じゃあないよ〜ダメダメ!治助様!)

松江はそう思いつつ、一応治助様の手前心花魁にも声をかける。


「心花魁?どうされました?」

「わっちはこれ好きじゃないんで」

(いやだからそれじゃあ、わかりにくいよ!心花魁!)

松江は心の中でツッコミを入れた。


「ああ、すいません心花魁、仲居の手違いですよ。

だから治助様が一番に準備したお酒が、私に回ってきていたんですねぇ。

これで孔ちゃん、まるちゃんと美味しく月見酒してましたよ」

と白葡萄酒入りのデキャンタを心花魁に見せた。

仲居の輝が何か言いたそうだが、松江は目配せで抑える。


「これは松江様、なんとまぁまぁ……あっちはこれ」

「好きでやんす!」

松江も一緒に言い、二人は笑った。


やっと宴が再開した。

「あのう、松江様……」 

嬉々として白葡萄を楽しむ心花魁をうっとり見ながら、治助様がそっと松江に話しかけてきた。


「どうして私のお酒じゃ駄目なんだい?このマリアージ……」

「それですよ!治助様。心花魁が今日一番マリアージュしたいのは、この紫の紫陽花とです!」


「紫陽花?」

「そうです。治助様。花魁は今日、紫の紫陽花と自分をマリアージュしてきたんですよ。」


見ると、今日の心花魁は格段にキラキラしている。

着物は銀や薄紫や藤色、水浅葱色など、まるで虹色の様な有松絞りの浴衣!(本当は格下の遊女でも、浴衣はまぁあり得ない)

髪でシャラシャラと鳴っている歩揺簪(ほゆうかんざし)は、梅雨の霧雨を思いださせる。


硝子の滴がついた葉に蝸牛(かたつむり)をのせた、七宝焼の帯留めもまた清々しい。

帯は子供が縁日でよくつけるような兵児帯。後ろで沢山のひだが作られ羽根の様に重なっている。


「紫陽花さん、何とお名前をつけましょうかね」

と、心花魁が紫陽花を色んな角度から観ようと動く度に、ふわふわ揺れ、まるで蝶の様な佇まいであった。


「そうか!だからお酒も、紫紫陽花の色味を引き立てる、味もスッキリ爽やかなこちらなのですね、松江様!ね、マリアージュ!」

……ダメ出しをされているのに気付かず、治助が素直に頷いたタイミングで、松江が花魁に声をかけた。


「心花魁、治助様がマリアージュされたこのお酒と紫陽花の宴は如何ですか?」

「ここ最近で一番の宴ですよ。治助様、わっちはとても嬉しい……」

ピカピカの笑顔で心花魁はうやうやしく、治助のグラスに白葡萄酒を注いだ。


「何と!この私が一番と!夢のようだよ心花魁。

ああ、今日という日が来るなんて……嬉し過ぎて何だか私は目が回るようだぁ~」

注がれたお酒を一気に空けてそう言うと、治助様は、ぱったりと倒れて笑顔のまま寝てしまった。


「……治助様を一番とは言ってないけど。幸せなお方。」

「治助様お酒弱っ! まぁ、あんたを待ってずっと寝てなかったからなぁ」


二人は幸せそうに寝ている治助様を横目に、互いの顔を見て笑顔になった。


松江様と心花魁、二人は笑顔で手を取り合いながら言った。

「久しぶり!元気にしてたぁ!」


……やっぱり何だか可哀想な治助様。

一通り見ていた禿2人と仲居の輝は思った。





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