40 理央とえりを待つ間……
第40話 大稲荷様が待つ間……
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*申し訳ありません、一度大幅に修正しました。大国主命様が登場しました。
シロ太と話している時に、神の道から松江が到着した。
「皆〜お待たせ。……って、何!
このもふもふの狐さん。うっわぁ〜なんて可愛いの!あら、あなたは使役の狐さんなのね」
松江から褒められて、シロ太は機嫌が良くなった。口調が先程より優しい。
「皆様、良かったら先に大稲荷様にお会いになられたらいかがですか?
その方が、大稲荷様もただ待たされるよりはいいかもしれません。因みに今日は大国主命様もいらしてます」
(やはり大国主命様もいらしていた!)
皆は顔を見渡して、頷く。
「では、急ぎ大稲荷様と大国主命様に会う為の支度をしてこちらにまいります」
心がシロ太に返事をして、一旦宿に向かった。
「さあ、支度して行こう。私がコーデした衣装に着替えてね!」
心は花魁の衣装にした。夏の終わりらしい竜胆色の打掛で、中の着物は真珠色のレース生地の着物。銀糸で秋の草花が刺繍されたキラキラ光る帯。白い半襟に、赤い鳥居が一つ刺繍されている。初秋の萩の花の螺鈿細工が見事な、蛸さんが作った櫛とかんざし。
松江は、五つ紋の色無地のぶどう色の着物。地紋に松竹亭の屋号の松が織られている。簪にも松が彫られている。
友子は印度の絹で作った深い苔色の訪問着。二羽の鳥をデザインした紋を五つ紋にしてある。
流れるような更紗模様を金糸で刺繍してある。
まるちゃん、孔ちゃん、美桜と雅も普段の服装が主と同じ生地で作った着物でバージョンアップしている。
「うん。皆素敵ですね。わっちは満足です」
心は自分のコーデに納得する。
皆が自然に円陣を組んでいる。
「では皆さん。打ち合わせ通りに」
孔ちゃんがそう言うと皆が顔を見合わせ頷く。
それぞれが自分にふさわしい正装で風呂敷包みを持ち、伏見稲荷大社に向かった。
すると、今度は白いおかっぱ頭で神職の格好をした男の子が待っていた。
「シロ太様でやんすか?」
「はい。では向かいましょう」
シロ太に続いて光の中を進むと、赤い柱の豪華な部屋に通された。
皆ひざまずいて、深くお辞儀をする。
「皆、面をあげよ」
皆はそっと頭をあげる。するとそこには、長椅子に横たわる神がいた。赤い生地に金糸で伏見稲荷大社紋、稲穂をモチーフにした「抱き稲」(だきいね)が刺繍されている。
その姿は後光に包まれ眩しくてよく見えないが一人だけなようだ。
「先ほどまで大稲荷もいたのだが、急用ができてな。ちょっと出ている。思念は半分残しているので、大稲荷も話は聞いているが。なので私が話を聞こう。」
大国主命様はそう言うが、後光で全く御姿が見えない。
(何て美しい刺繍の椅子でございましょう。わっちらの刺繍より更に細く美しい)
(なんて綺麗な長椅子。作りが美しいですね。これでは一度横たわるとなかなか起きれない!私の長椅子より数倍素晴らしいわ)
(あの椅子の作り。あれは欧州のものかしら。一度印度のマハラジャのお城で拝見したわ)
「ははは、皆長椅子の事ばかりだな!」
三人がはっとしてもう一度大国主命様を見ると、そこには見目麗しい男性の姿があった。
「大国主命様!」
シロ太が大きな声を出す。
「もう!そんなに気安く御姿を見せてはなりませぬ。後光でまばゆい位でいいのですよ」
「シロ太すまんな。この者達があまりに長椅子のことしか思うとらんでつい、な」
「わぁ、すいません。わっちはあまりに素晴らしい刺繍だったので、つい魅入ってしまったでありんす」
「私も、いい長椅子だなって……」
「あたしもです。欧州のものかな?と」
三人は深く頭を下げた。
「いいんだ。確かに良い長椅子で、私も気に入ったからな。また、思っていることが素直なところも良い。
ところで、まだ理央達は到着していないようだな」
「あい。そうでありんす。それで良かったらその間、わっちらで大稲荷様をおもてなししようかと思っています」
「ほう……この場に来てその様なことを申す奴は初めてだ。では始めてもらおうか」
「そうしてもらおう。私も後ほど参る」
大国主命様が別の声で話をする。恐らくこれが大稲荷様の思念らしい。
「はい。では大稲荷様、大国主命様。良かったらこちらにおいで下さい」
友子が床にペルシャ絨毯を広げる。
そこに、美桜と雅がふかふかのクッションを沢山置いた。
「こちらはあたしがペルシアに行った時に王から頂いた絨毯です。クッションと共に良い座り心地かと」
「そうか。ではそちらに行こう」
大国主命様は絨毯のうえで、クッションを使い寝そべる。
後ろでまるちゃんが、早秋のイメージの金木犀のお香を、ほのかに香るように焚いている。
「次に、供物でございます。今日の御重は、大国主命様のお好きな小豆を使った御重です。後ほど大稲荷様にもいなり寿司の御重をお持ちしますね」
「もうおはぎは飽きたぞ。上からきな粉をかけたものも、ゴマおはぎもな」
松江が笑顔で答えた。
「大丈夫です。今回は今迄とは違う、新しい物です。先ず一の重は……」
孔ちゃんが、素早く一の重を開ける。
「これはなんだ?」
「こちらはパンにあんことバターを挟んだあんバターサンドです。
フランスパンにして、食べ応えを出しています。カフェオレをどうぞ」
大国主命様はあんバターサンドを食べてみる。
「おお!これはっ。あんこだけでは出ないコクと甘みだ。一緒に飲むカフェオレも合っている。永遠にループしそうな組み合わせだ!」
「うふふ、二の重は……」
「これは何だ?」
「ドーナツの生地です。中にあんこを入れたら、油で揚げます」
孔ちゃんがいつの間にか七輪のうえに揚げ物ができる鍋を準備している。
松江がドーナツを揚げだした。部屋中に香ばしい香りが広がる。
「いい香りだなぁ~」
大国主命様は目を閉じ、香りを楽しんでいる。
「はい!揚がりました」
「はよう、はようよこせ!」
大国主命様が待ちきれず手を差し出す。
「ああ、ちょっと待って下さい。大国主命様。揚げたてのドーナツに砂糖をまぶして……」
松江が砂糖をまぶしたドーナツを油紙に包む。
「はい!出来立てのあんドーナツです。やけどに気をつけて下さい」
松江が大国主命様に揚げたてのあんドーナツを差し出す。
「これには、ほうじ茶が合います」
心がほうじ茶を淹れ、まるちゃんがお茶を大国主命様に運ぶ。
「あつっ!出来立てが美味いな!ほうじ茶が油をスッと取ってくれて。これも止まらん!ほれ、シロ太も食べてみよ」
「大国主命様これは!初めて食べたのに懐かしい味。あんこだから?」
二人におかわりやお茶を、美桜と雅が、途切れず運んでいる。
いつの間にか、心が三味線を、まるちゃんが鼓を弾いている。
吉原一の芸達者と言われる心の三味線とまるちゃんの鼓は、秋の涼やかな空気のようだ。
「三の重は……松竹亭のヌカで漬けたぬか漬けです。甘い物の後にはスッキリしますよ。紅茶とどうぞ」
少しずつカップからティーポットを離し、最後は高い位置から紅茶をいれる友子のパフォーマンスを見て、大国主命様とシロ太は思わず拍手をした。
「うん、とてもよい気分だ。どれ、心。ひとさし舞ってみよ」
「あい。それでは……」
心が舞を舞う。孔ちゃんが笛を吹き、まるちゃんが鼓を打つ。
秋をイメージして、心は感じるままに舞う。その姿はまるで秋を見に来た天女のよう。
「美しいな……シロ太」
「はい。まことに」
二人はゆったりと心の舞をみていた。
「うん、よい気分だ。そなたらは酒を持ってきておるか?」
「はい。何に致しましょう」
「私は日本酒、シロ太は葡萄酒ではなく葡萄ジュースにしてくれ」
「大国主命様、飲み過ぎは駄目ですよ!」
「分かっている。ほどほどにする。この間、他の神に絡んでしまったからな。反省している」
「ではお水と一緒に出しますので」
孔ちゃんは、まろやかな甘みのある日本酒を出す。
大国主命様は、もう上機嫌である。
「皆も一緒に飲もうぞ!」
そう言われ、皆日本酒やお茶をそれぞれ持ち、
「乾杯〜!」
乾杯の後、皆もお酒やお茶、あんこのスイーツを楽しんだ。
「いやいや、遅くなってすまんな」
大稲荷様も戻られた。大稲荷様は白い髪を一つに束ねた仙人の様な姿である。
早速、自分のいなり寿司の御重とお酒を一緒に楽しみだした。
暫くしてバタバタと音がして……
「お待たせ致しました。理央とえり姫が到着いたしました。お通しします」
シロ太とそっくりな使役が、理央とえり姫を連れてきた。
「遅れて申し訳ありません大国主命様、大稲荷様。理央とえり姫です。ただいま到着いたしました」
二人は到着するやいなや、床にひざまずいた。
「……」
誰からも何も返事がない。
(もしや遅れたことが、神の怒りをかったのか?)
そう思って、理央とえり姫が、頭を上げてみると……
皆がお酒やお茶を飲み、心が舞っているところに美桜と雅が一緒になって踊っている……大宴会と化した風景だった。
「あれ?」
二人が茫然としていると、孔ちゃんがさり気なく近づいてきた。
「お二人。先にこちらに着替えてから、来てください。二人とも真っ黒ですよ」
理央とえり姫はお互いの格好をよく見てみると……確かに真っ黒になり、埃だらけ。とても神様の御前に現れる格好ではなかった。
(わあ、これでは大国主命様、大稲荷様に失礼だ)
「おっ、二人とも着いたな!だが一度湯浴みして着替えてこい。待ってるぞ!」
大稲荷様はご機嫌に二人に声をかけた。
「はい……」二人は慌ててシロ太に似た別の使役に案内され湯浴みしにいくことにした。
「大国主命様と大稲荷様は怒っていないのだろうか。まるちゃんからは、
『大丈夫だから気をつけてこい』としか思念は送られてこなかったが……」
理央は支度をしながら心配になっていた。
二人は身を清め、支度を整えて先ほどの広間に急ぐ。
入口でまるちゃん、孔ちゃん、美桜と雅が待っていた。
「私達が出来るのはここまでです。大丈夫ですから理央ちゃんの思った通りに大国主命様と大稲荷様に伝えるのですよ」
「ありがとう。皆。では行ってくる」
理央とえりが広間にいくと、先ほどとは全く違い、長椅子二つにしっかりと座って大国主命様、大稲荷様が待っている。
宴会は綺麗に片付けられ、心、松江、友子は後方に座り深々とお辞儀をしている。使役の皆もそろってこれに続く。
理央とえりが大国主命様、大稲荷様の前にひざまずき、深々とお辞儀をした。
「お待たせ致しました。私が理央です。本日は結婚のお許しをお願いに、えり姫と参りました」
理央は少し震える声でそう言った。
「うむ。面をあげい」
大稲荷様にそう言われ、皆頭を上げると……
先ほどの宴会でのリラックスしていた姿とは全く異なる、威厳のある姿の大国主命様と大稲荷様がそこにいた。
(何て威厳のある御姿!この方が大稲荷様。以前えり子様の使役として仕えていた時は、御簾越しにしか会ってはいない。ましてや大国主命様は初めてお会いする)
理央とえり姫は、神々の眩しい後光が差したそのお姿に緊張し始めていた。
次回の投稿は9/9(水) 20時〜21時です。
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