4-② 心、吉原で頑張る
ついに、私は禿から遊女として働き出した。それからは本当に大変だったが、少しはいい事もあった。
前世にやりたかった芸事が習えた事だ。初めて三味線に触れた時、軽く教わると、私はするすると弾くことが出来た。
「そうか!弁天様のくれた加護はこれだったんだ」
弁天様は芸事や音楽の上達の神様でもある。
「楽しい。どんどん上手くなるよ。ありがとう弁天様」
私は寝ることも惜しんで練習する。
「こんな子は初めてだ」
教えてくれる姐さんやお師匠さんも驚く上達ぶり。
『心花魁は芸達者』後に花魁となった私はそう言われることになる。
また髪結いさんには、毎回多めに手間賃を渡す。
「おじさん、もう少しここは高さを出して下さい ここはこのまま…」
自分を姿良く魅せる為、髷の大きさや簪を差す角度等、一つ一つにこだわって髪を作って貰った。
簪は少なめにして、髪に生花で飾ってみたり。
着物は初めはお金は掛けられない。
姐さんの要らない着物を貰って、パッチワークで繋いで見た事のない柄行にしたり。季節のお花を刺繍して縫い付けたり工夫する。
前世から手芸が好きだったし、当時はまだなかったフリルを着物に付けたりしたよなぁ。
珍しいから話題になったし、フリルは余った生地で出来たから、そのうち皆も真似して「心好み」の一つとして流行ったし。
私は好きな事はとことん突き詰めてしまう、オタクな気質な所があった。
この結果、早々に私は、張り見世で格子越しに客人の前に並ぶ様になる。
私が初めて張り見世に並ぶと、
「おいおい、凄い美人がいるよ」
「何だか着物も髪も見たことない雰囲気だよ。もう匂い立つようじゃないか」
一重瞼でおちょぼ口の流行りの顔もあり、私はすぐに他の遊女より目を引く存在になっていた。
そしてまたたく間に人気の遊女となっていったのだ。
また、私は何故か老人にモテた。
えっへん。前世も何故か『じさまキラー』と呼ばれて、お年寄りに人気の看護師だったのさ!
私は自分がどんなお客様に気に入られるかよく分かっていた。
そしてお年寄り達は私と話すだけで、満足して帰っていく。
他の遊女と違いいかにして、次も通ってくれるだろうか。と、つい出てしまうギラギラした感じが全く見受けられないからだろうか?
きっと私のおっとりした感じが、長く生きてきた年寄りには、癒しとなり心地良かったのだろう。
張り見世の身分から花魁になる迄、思ったより早かったなぁ……
今は、基本自分の好きな物集めだけに集中出来て、ある程度は自由に出来る身分だし。
前世バリバリ働く前も、素はもっとゆったりしてたんだから。今はそんな自分でいても、もう何も言われない。
今世の私、なんてったって健康だしいい感じになってきたかな……私は今の自分をそう思っていた。




