39 えりと理央の旅路
39 えりと理央の旅路 投稿します。
遅くなり申し訳ありません。読んで頂けたら嬉しいです。よろしくお願い致します。
「皆は、神の道を使って伏見稲荷大社に行くと連絡がありました」
理央が使役たちからのメッセージをえり姫に伝えた。
供物を作って下さる松江様も、神の道を使うことになっている。同じように二人にも話があった。
しかし今回はえり姫様と相談して二人は自分たちの足で行こうと決めた。
(皆には京で少し待ってもらうことになるけれど……
私たちはこの件に関して楽はしてはいけない)
そう思ったのだ。
えりと理央は早馬でいくことにした。
平松の宮様が、道中の宿と替えの馬だけは用意してくれたのだ。
「理央、私たちの為にここまでしてくれるなんて。心、松江、友子と使役の皆には、私はずっと世話になりっぱなしで、感謝してもしきれないです。
私達も一刻も早く京に行かねば」
えりはそう言って荷物をまとめる。
(だけど色々考えると、少し気持ちが落ち着かないわ……)
「えり姫様……私達も頑張りましょう。きっと大丈夫です」
そう言って、理央はえりを抱きしめた。
「はい……」
(何だろう。あんなにモヤモヤしていた気持ちがすっと消えていく。とても穏やかな気持ち……)
「ありがとう理央。何だか気持ちが温かくなりました」
理央は真っ赤になりながら、えりには気づかれないように、そっとえりから離れた。
「それは良かったです。今日はもう休みましょう。えり姫様」
二人は明日に向けて早めに床についた。
翌朝、日が昇らないうちに二人は出発した。えりも一人で馬に乗る。他の皆が神の所に行っている間、乗馬を練習していたのだ。
休憩を取るのも最低限にして、二人は道を進んだ。
馬に慣れている者でもかなりきつい。身体も土埃でみるみるうちに真っ黒になっていった。馬の蹄から小石がはねて小さなすり傷ができ、慣れない手綱を握る手にはまめができ、じんじん痛んできた。
しかし、えりは弱音を一切吐かなかった。すり傷やまめは友子の薬をつけて自分で手当てした。
(こんな事、何でもない。私は理央と一緒になるんだから。私達の為に動いてくれている皆の為にもやり切ってみせる!)
「どう、どうっ!」
山道に入る手前で理央が急に馬を停めた。
「どうしたのですか?理央」
「目の前にウサギが倒れています」
二人の目の前に、うさぎが横たわっている。
「うさぎさん、どうしたのでしょう」
えりと理央が、馬から降りてうさぎに近づく。
「特に怪我はなさそうだが」
うさぎはえりの顔をじっと見つめる。
「うん?うさぎさんどうした……」
えりが言いかけたその瞬間、うさぎは背中の風呂敷を見つけると素早くぴょんと飛び乗り……
「きゃあ!」
風呂敷包みをクンクンと嗅ぎ出した。
「あら?ひょっとしてこの子お腹が空いているのかしら。何か食べる物があるといいけど」
えりが風呂敷包みを開け、松江から貰ったお弁当を開く。
するとうさぎはお弁当のりんごに一目散に飛びつき、かじりついた。
「あ、お前!松江様がわざわざ取り寄せたえり姫様の好物のりんごを〜」
理央はそう言ってりんごを取り上げようとしたが、うさぎは食いついて離れない。
「なんかお前必死だな」
「本当に」
二人はうさぎの姿を見て思わず笑ってしまった。
「うさぎさん、りんごはあなたにあげるわね」
二人はまだりんごに食いついているうさぎを道の脇に置いて出発した。
うさぎは二人の姿を少し見ていたが、すぐにまたりんごを夢中で食べだした。
二人はやっと宿場町に到着した。辺りはもうすっかり暗くなっている。
「お客さん、お疲れ様。理央様はどちらでしょう。平松の宮様からお手紙を預かっています」
「私が理央です」
「ささ、娘さんはまず風呂でもどうぞ」
「そうですね。では私は先にお風呂を頂きます」
えりが風呂に行った後、理央は腰掛けて、平松の宮様からの手紙を見た。
(理央、京までの旅はかなりきついものになるだろう。えり姫をどうか無事に京まで連れて行っておくれ。二人の願いが叶うことを祈っておる……
それで、ちょっと爺からの贈り物♡
部屋を一部屋にしといたから〜
ドッキドキじゃのう!ではまたな!)
理央は手紙を見てわなわなと震えた。
「二人で一つの部屋ぁ〜!!」
馬に乗り、埃まみれになっていた理央が、真っ赤になっていた。
理央が風呂から上がり、浴衣に着替え
部屋に行くと、えりが待っていた。
夕食が机に並べられている。
簡単なものであったが、疲れている二人にはこれで充分だった。
「え、えり姫様、部屋が一つですみません」
「宿の旦那さんが言ってました。今日は混んでいるとか。しようがありませんね。早くお夕飯を食べて休みましょう。明日も早いのですから」
「は、はい」
理央は一人緊張していた。ずっと一緒に暮らしてきたとはいえ、寝所は当たり前のように別だった。
(こんなことは初めてだ。どうすればっ。一緒に寝るわけには!)
「えり姫様、私は何処か布団部屋でも借りて横になります。」
「何を言っているの?そんな所じゃ疲れが取れないでしょ。ここで寝ましょう」
「……わかりました」
夕食後、二人は早々に布団を並べ横になった。
「おやすみなさい。理央」
「えり姫様、おやすみなさいませ」
明かりは消えたが、理央はまったく眠れない。
今夜は満月だろうか。月の光が部屋に入ってくる。
横を見るとえり姫が、もう寝息をたてていた。
(もう寝ている!)
理央はすっかり緊張が取れた。
(小さな頃から見てきた寝顔。今では
すっかり美しい女性になり、そして自分と夫婦になってくれるという)
「えり姫様、理央が一生側にいます。
ずっと大切にしますから……」
理央はそうえり姫に呟くと、眠りに落ちていった……
寝ていたはずのえりが、にっこりと微笑んだ。
◆
「はぁ〜あっという間だったね」
さすが神の道。心と友子、美桜と雅は伏見稲荷大社の前にいた。
辺りを見回すと、ちょうど目の前に光の輪が現れ、そこから孔ちゃんとまるちゃんが現れた。
「あ〜!あっという間だったな。孔ちゃん」
「本当に。便利なものですね。まるちゃん」
「あ!二人とも着きましたね。あとは松江と理央ちゃん、えりを待つだけでやんすね」
「そうだね。じゃあ宿で待つことにしよう」
心と友子がそう言って、まずは宿に行くことにした。
「皆様、お疲れ様でした」
どこからか白狐が現れ、こう言った。
「あ!貴方は、稲荷様の所にいたシロさんでやんすね」
「いえ、違いますよ。私は伏見稲荷大社の大稲荷様の使役のシロ太です。
ああ、全員は到着していないようですね」
白狐はそう答えた。
「理央ちゃんとえり、松江はまだでありんす。二人はもう少しかかるかと」
「そうですか。大稲荷様は皆様をお待ちです。あまり待つのはお嫌いな方です。早くいらっしゃると良いのですが」
「はい。もちろんです!」
友子が返事をした。
(どうしよう……理央ちゃん、えり!
大稲荷様が待ちくたびれる前に早く来て〜)
皆は笑顔でシロ太に対応しながら、心の中では大焦りだった。
えり、理央早く〜!! 松江も急いで〜




