32 理央の相談と本当の思い
遅くなりました。33話投稿します。少し改稿しました。読んで頂けたら嬉しいです。
「その方の決心は、変わらないのか」
稲荷様が問う。
「はい」
「ならば条件を出そう。それは……」
◆
「何だか久しぶりでありんすね。皆が揃って集まるのは」
「そうね。私も松竹亭の蛍祭りで忙しかったし」
「あたしも久しぶりの日本だよ〜
今回は印度に行ってきたんだぁ」
「友子も無事帰ってきたし、さくら亭も波に乗ってきて、私も理央も皆に感謝してるの。
まるちゃん達皆にも手伝ってもらって、沢山ご馳走が出来たのよ。さあ皆食べて食べて〜」
えりが挨拶をしたところで、
「乾杯〜!」宴が始まった。
「ねぇ心、No.1になってから忙しくて大変なんじゃない?体が心配よ」
「ありがとうね、えり。No.1太夫の菫姐さんが身請けされたから、No.1 になったけどさぁ。
私は柄じゃないからNo.3の百合花魁に譲りたいのよ。それを女将さんと相談してて、立て込んでたの。
菫姐さんから引き継いだ、お客の爺様方も、わっちが禿の頃から馴染みの方々で断れないですし」
「そっか。治助様も、
『松竹亭の蛍祭りでやっと!心花魁に会えたんだよ』
って嘆いてたもんねぇ。本当は松竹亭をもっと使ってほしいんだけどさ」
「皆ありがとう。体は弥勒菩薩様のご加護で大丈夫ですから。ところで友子の印度の話が聞きたいでありんす〜」
「そうそう、今回はさね、印度で平松の宮様の紹介でマハラジャと友人になれたんだよ。おかげで薬草や香辛料も沢山紹介してもらってさ。心なんか行ったら大変だよ。サリーや装飾品の見事さといったら!」
「うっわぁ〜何それ!サリー!それ
絶対見たいやつじゃん!
私が前世から印度の花嫁衣装が大好きって知ってるでしょ!あの刺繍や宝飾品がたまらんのよ〜
ああ 見てみたいなぁ……」
もう心は聞いているだけで、興奮してくる。
「私も香辛料とか実際に見てみたいな。やっぱり松竹亭の料理に使うなら印度での使い方も見たいもんね」
「確かに。松江は調理する所見たいよね。見てると香辛料の使い方半端ないもん」
「あちらの王族はマハラジャと奥さんはマハラーニって言うんだよね。お会いしてみたいな。日の本の事はご存知なのかしら?」
「う〜ん、今回のマハラジャは外交に積極的だからご存知だけどまだまだ他のマハラジャはどうかねえ……
それにしてもみんなそれぞれ興味が違って面白いね。一度皆で行けたらいいのにねぇ〜」
「ほんとうに……」皆同時にそう思った。
四人は話が弾んで止まらない。
宴もたけなわ、使役達も一通り盛り上がった後、何やら皆で話し込んでいた。
「……という訳で、今私はえり姫様とこうやって二人で、さくら亭をやっているのが本当に良いことなのか分からなくなってきたのだ」
理央は思い切って使役の皆に相談してみた。
「確かにお披露目の時のえり姫様は目を見張るほどの美しさだったよな。
なんていうか、気品か?皆をハッとさせる、それでいて穏やかな感じで。
上手く言えないけど、ただ綺麗なだけじゃないっつうか。な!孔ちゃん」
「まるちゃん、十分伝わりましたよ。私もそれは感じました。宮家のお血筋と、巫女のお母様の暖かな神々しい雰囲気なのか……。
理央ちゃんが、さくら亭をやるだけでいいのかって迷うのも分かりますよ」
「そうなのよ〜あの時のえり姫様は、優しくて、でもキラキラしてて神様の光と同じだって美桜は感じたのよ〜」
「雅もそう感じたの〜」
「私はえり姫様をもっと支えたい。
姫様の望みを、隣で一緒に叶えていきたいのだ。でも今のままで良いのか……」
それを聞いていたまるちゃんは、ちょっと悩んだが思い切って言ってみる。
「なあ、それってもう使役っていうより結婚じゃないか?
元々理央ちゃんって、俺らと主人との関係と思いが違う気がするんだよな〜」
「えっ!ま、まるちゃん何を言ってるんだ?そんな事を考えるのはえり姫様に失礼ではっ!」
理央は真っ赤になりながら否定する。が、そう言われてみると、自分の疑問がスッキリするような気がする。
「いや、理央ちゃん。まるちゃんの野性の勘は侮れませんよ。そう言われてみると、確かにしっくりきませんか?
ここは私達だけです。今こそ自分に素直になって考えてみては?」
使役の皆を見て理央が頷いた。
理央は考えてみる。自分はえり姫様が生まれてからずっと側で世話をしてきたんだ。
初めは親の様な気持ち。
その後二人きりで過ごす日々。
そして日の本の為、帝の為に健康になろうと必死で頑張る姫様の姿。私が倒れてしまった時に『私の大切な理央』と言ってくれた事。何よりその素直な心根が、使役という枠を超えてより温かく豊かな心に変わっていったと思う。
そして、今では共に歩み支えて生きたいと考えている自分がいた。
「そうなのかもしれない。
いや、そうだったのだ。気が付かないふりをしていただけで私は……」
「理央ちゃん、自分の思いに気がつけて良かったのよ〜」「良かったの〜」
美桜と雅が素直に喜ぶ。
それを聞いて理央は心が軽くなる気がした。
「さて、ここからです。私達使役は神々からの使いです。使役の理央ちゃんが、夫婦になる事は可能なのか? 多分ここにいる誰も答えは出せません。
ただ、えり子様は巫女の立場を捨てて前帝と夫婦になりました。そういう事なのでしょうか……」
「何だよ孔ちゃん、そういう事って」
「私が使役の役割を捨てられるか。
という事ですか?孔ちゃん」
「分かりません。ですがそれに近しい事かと思います。理央ちゃん、それでもえり姫様と夫婦になりたいてすか?」
「まだえり姫様のお気持ちも聞いてはいないが……そうだな。私はそうしたい。
一度伏見稲荷大社の稲荷様に気持ちを伝え、許しを請わなければいけないだろう。」
「理央ちゃんが決心したなら、俺等もついて行こう。皆で話せば分かってくれるさ!」
「そうですね まるちゃん。私も行ってみましょう。稲荷様に上手く話せると良いのですが……」
「私達も同じよ〜頑張るの〜」
「じゃあ、結束会だ!」
そう言って使役達は益々盛り上がっていた。
「何だか、使役さん達盛り上がっているでありんすね。実はわっち、皆に相談したい事がありんす」
心も皆に相談してみようと考えていた。
「実は、花魁を辞めようかと思って」
「えええっ〜」
皆が揃って声を上げた。




