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早死にして転生したアラフィフですが異世界の江戸では人生愉快痛快です!  作者: 藍紫


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19/29

19 理央感激で震える

「あのさ〜理央ちゃん、お披露目の時には羽織袴でって言われてるでしょ?

着物のサイズ分からないと思うから


普段着ている着物を貸してくれる?」


「心様 では持ってきます 

しかし当日の姫様は、さぞかし美し

くていらっしゃるのでしようね


理央は楽しみにしております」


そう言って着物を貸してくれた。


「任しといて!」


心は作業部屋へ戻っていった……




そして季節は春になった。庭には

枝垂れ桜や染井吉野、八重桜など全て

咲いている。



この江戸は、春になるとまるで東北み

たいに花々が一気に咲くのだ。


黄色のレンギョウも色を添え、

木々の隙間にひっそりと菫も咲く。

様々な蝶々もひらひらと舞い、まるで

楽園のようだ。


「庭中に春が来てるねぇ、松江」

「ほんとに 孔ちゃん猫のまんまずっ

と寝てるし」


「思わず桜雅コンビも、鳥の姿で

犬のまるちゃんと、じゃれて飛び回っ

てるよ」


庭には小さな茶会の席が設けてある

今日はいよいよえり姫が無事健康に

成長し成人となった、お祝いの席だ。



皆は今日始めて、着飾ったえり姫を

見るのだ。



羽織袴の正装の理央と宮様が

座って待っている。



えり姫当人と準備がある心、

その手伝いのまるちゃん以外の皆は、

ホスト役としてスタンバイしていた。


「ねぇ、理央は緊張でガチガチだね。

えり見たら直ぐ卒倒しちゃうかも」


「ねぇ友子、その時は私達で対応しよ

えりの晴れ姿、今日は絶対に最後迄

みてたいよね……」


「うん。だって理央はえりが生る前、

巫女のお母さんからの使役だよね。


お母さん、えりが生まれてすぐに亡く

なってるから。その後はほぼ理央が

育てたって事でしよ?」


「そうだよ〜人間で会えるのは、

帝と宮様だけ。それ以外はほぼ誰とも会えないなんてさ。


えりも理央も本当に大変だったよね」


「私今の二人をみてると、嬉しくて泣

けてきちゃうんだよ、松江。

今日が迎えられて本当に良かったよ」


友子と松江は二人で涙ぐんでいた。


すると、桜雅コンビが胸をはって

やってきて挨拶を始めた。


「えっとお、今日はえり姫のお披露目

会にようこそおいで頂きましたぁ」


「僕も今日は頑張ったえり姫様の

晴れ姿を見れて嬉しいです。


でも〜 今日は理央ちゃまがきっと

一番嬉しいと思いま〜す。だから

良かったね、理央ちゃま」


「はいっ!はぁ……」もう理央は涙で

声も出ない。


「では、えり姫様においで頂きます

どうぞ〜!」


えり姫が桜雅コンビにエスコートされ

ゆっくりと歩いて来る。


まるちゃんは鼓、孔ちゃんは笛を吹い

ている。桜の花びらが舞う中えり姫が

皆の前に現れた。


「皆んな今日は私の為にありがとう」


えり姫を見た理央は、わなわなと震え

声も出なかった。



透き通る白い肌に、薄く施した化粧。

淡い桃色の唇。 


『葵髱つぶ髷尾長』と呼ばれる公家の娘が結う島田髷のスタイル。

(微妙に違うけど和装の後ろに長い髪が日本髪と思えば大丈夫)


髪には平打という平たい丸簪がさして

ある。銀の透かし模様は稲荷狐だ。


「私、私がいる……」


理央が呟く。


櫛は螺鈿細工。江戸の名工で心花魁

の客人『蛸さん』に作ってもらった。


伏見稲荷大社の印、抱き稲が螺鈿で

描かれ、花かんざしも同じ螺鈿細工で

えり姫のお印、撫子が描かれている。


その横には歩揺簪。桃色珊瑚の花に

蝶の下げ飾りがシャラシャラ揺れる。



後ろの髪をまとめる紐は銀色の布地を

細く編み組紐のように編んでいる。



「あれは……私の着物?」


理央は本当かと何度も見直している。



打掛には、宮様と理央の着物も使い、

全体的には裾から藤色から桜色への

グラデーションになるように

少しずつ生地を縫い合わせてある。



その上から、裾には銀糸だけで様々な

季節の花が刺繍され日に当たると

キラキラ光ってまばゆい。



桜満開の早朝、匂い立つ様なこの庭を

イメージして、刺繍屋さんと必死で

縫ったのよね。ギリギリだったけど

我ながら良く間に合わせたよ……



心が皆に挨拶する。


「この着物は、古い着物や色んな着物

を縫い合わせたりしています。


本来は姫宮様には相応しくない手法ですが。


私はこの作り方でないとえり姫と皆の

思いを表現出来ませんでした。


でも、上手く出来たと思います。えり本当によく似合ってるよ。

おめでとう。」


「心、ありがとう。私こんなに素敵な

着物、みたことない……


着ているとみんなの思いを感じる着物なの。とても嬉しい」


「心、本当にありがとう。

爺も、こんなに素晴らしい魂を感じる

着物は初めてだ。


姫、もっと側で皆と

着物をみてみたいのだが?」


「はい、宮様」


皆がえり姫の周りに集まった。


「あ!松江様見て下さい

帯には私の前立ての模様が刺繍して

あります。途中からまるちゃんの服の

柄になってますよ!」


「ほんとだな 孔ちゃん私のだ」


「そうね、私の簪と同じ銀流しの玉が

帯留めになってるし」


「あ、お母ちゃんの着物の柄の帯締め

で帯揚げは美桜と雅の羽の色だぁ」


「お〜よくこの派手な柄を帯締めに

仕立てたね。うぐいす色の帯揚げも

着物にあってるね 素敵!」



中の着物(掛下)は、薄紫。

理央、まるちゃん、孔ちゃん、美桜.

雅が丸紋の花模様に描かれていた。


「ねぇ理央ちゃま、もっと近くでみよ

うよ」美桜と雅が理央の手を引いて


えり姫の元に連れてきた。


「理央、今日迄ありがとう。これから

もよろしくね」


「姫宮……」


理央は、顔を真っ赤にして震えている


「あのっ、あのっ、う……はい」


「理央様は誰よりも、えり姫様の

美しきご成長ぶりに歓喜され震えて

いるのですよ。ね……」


「孔ちゃん……」もう理央は何も


いえず、感涙している。


「万歳……」まるちゃんが呟いた。

皆が頷いた。


「万歳〜!万歳〜!」


桜の花びらが舞う穏やかな庭で

皆が喜ぶ声がいつまでも響いていた……




宴が無事終わり、えりは心に手伝って貰い、別の着物に着替えていた。


「あ〜ちょっと暑かったな」


「だよね~打ち掛けも着ちゃうとね

えり平気?脱水とか 着替えの部屋

だからもう襦袢になっちゃって!」


「うん、心ありがと……って何!

これ〜!!」


「ふっふっふっ 我慢出来なくて

ついね……刺繍職人さんと意気投合

して、やっちゃいましたぁ!」



二人が話している所に、智美とまつこ

もやってきた。



「えり、心、お疲れ〜!っておお!

何これ、すっご〜い!みてみて松江」


「うわぉ!襦袢だけど特攻服みたい」


えり姫の襦袢には、前世の世界で暴走族が着ていた、特攻服のような台詞が襦袢と同じ白で刺繍してあった。


『異国からきた4人組

江戸での生まれは違えねど、

今ここに集いし熱き魂』


『その名はえり姫、 夜露死苦

松竹亭の松江、 愛羅武勇 夜露死苦

植物採集人友子、仏恥義理 夜露死苦

心花魁、 美来斗利偉 夜露死苦』


『4人揃えば 天上天下唯我独尊』


「心、忙しかったのに何やってんの

これめっちゃ手が込んでるよ……」


「いやぁ、友子、徹夜ハイで刺繍職人

さんとやりだしたら止まんなくなっ

ちゃってさ」


「挨拶の時は感激してたのに〜!」


「ごめんごめんえり。つい、ね!」


「えりってば、ヤンキーだ!ぷぷぷ」


「え〜!松江なんてこと言うの!」



うわあはっはっはっ 皆笑い転げてし

まった。「全く、あんた達!ぷぷっ」


結局りえも笑い転げた。





*************************



心が着々とえり姫の衣装を作っている時、勿論心だけではなくその道のスペシャリストが、一同に集まっていた。



着物問屋の旦那、着物をものすごいスピードで縫うお針子さん。



刺繍をさせたら、誰にも負けない細やかさで仕上げる職人……

皆その道のプロである。



そしてある意味心と同じ、オタク職人気質の者ばかりの集団だった。



職人達は心に合ってすぐ、心花魁も自分達の仲間だと通じ合ったのだ。



「心ちゃん、この生地とこの生地を合わせるんだね。分かるよグラデーションがたまんないねぇ〜」


「心ちゃんこの刺繍はどうだい?これなら理央様も納得だろ?」



そうやってえり姫のお披露目の衣装は、心と共に何度も納得いかずやり直した末、ようやく出来上がったのだ。



仕上がった時は、皆クタクタだった。



そして仕上げに長襦袢と半襟を縫い合わせていた時、心はうっかり思い出した事を口にしてしまったのだ。



「特攻服っていう、文字を刺繍した服があってさ長襦袢にも似合うかもね」



ギロリ。徹夜ハイになっていた職人軍団が一斉に心をみた。



「どんな物なんだい?それは」

「何?字を刺繍すんのかい?」

「へぇ!当て字で言葉をねぇ……」


そして職人軍団が一斉に言った。


「……で、何の言葉をいれるかい?」


ひ〜っ!駄目だこの人達とことんオタクだぁ〜 

同じ輩だぁ……



こうしてえり姫の特攻服、いや長襦袢が完成したのであった。



夜露死苦!




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