16 えり姫の健康改善計画
皆が食事とお酒を楽しみ、充分に喋っ
て親睦を深めた頃……
「そろそろ皆、えり姫健康改善計画を
考えないと……でやんすねぇ」
「しようがない やるかぁ」
「もう!友子ったら、やるんだよ!」
当人のえりは今の状態はさておき、乗り気のようだ。
「いや気になってたけど、まず何でこんなにむくんだ?えりいったい何食べてたの?」 そう言って松江がえりのほっぺを触るが、むくんでいるので跡がつく。
「えっとぉ〜前世の看護師の記憶がない私は、とにかく白いご飯とお漬物が大好きだったの。理央に何時も準備してもらったよ。あと時々干物ね!それだけ!」
「えり姫様は、私の漬けた漬物が大好きで……また梅干しもよく召されました」
「理央様!得意げに言ってるけどこれじゃあどうしてもむくむよ!
うちの料亭では、高齢者でもタンパク質やビタミンをちゃんと取って貰うよ。大切な事だしね。全くもう。
えり!今は駄目ってわかるよね」
「うん。自分の事ながら本当にヤバいよ……この食事」
これを聞いて、理央はがっくりとうなだれている。
「私の手でえり姫様をこの様な事になんとしたら良いのか……」
「理央様、だから健康改善計画なのです。大丈夫ですよ。健康的な食事を松江様がちゃんと考えます。
私の主人にお任せを」
「おお!孔ちゃんさん!何と心強いお言葉」
理央が感激して泣いている。
「松江あんたの使役、策士か何かなの?」
「当然よ友子!彼は軍師だからね!」
「いや、松江名前はそうだけどさ」
(松江も孔ちゃん推しが強すぎるよ)
私は心の中で突っ込みをいれた。
「これからは私。ちゃんとしたご飯を食べるから。だから理央は気にしなくて大丈夫よ」
「くっ……姫様!何と健気な。松江様、私もえり姫様の体に良い食事を教えてくださいませ。この理央、心して学びます。」
(理央、そんなにえりの事が大切で大好きなのね)
私が至極感心していると、
「あとねえり、わかってると思うけど外に出て運動してもらうからね。
とはいえ、今迄外出さえしてないから、急には色々無理だね。
先ずは椅子に座っての筋トレとストレッチだよ。
それと美桜.雅と、毎朝一緒に庭の花を見ながら散歩しよう。
先ずは30分からね!でその様子を見ながら、体に合う薬草を煎じるから」
「お友様!外でございますか?姫様の白く輝く真珠のお肌が……そして、また骨折してしまわれるのでは?薬草もちょっと苦いのでは?」
「もう理央様!ここまでくるとギャグだよ。過保護すぎ!」
私が松江と笑っていると、理央に睨まれた。
「理央様!健康なえり姫を……」
「見たいです。お友様!宜しくお願い致します」
理央が友子に一礼する。
「理央ちゃま〜美桜と雅も頑張る〜」
二人が理央と手を繋いでいる。
「美桜.雅ちゃん……ありがとう」
理央が涙ぐんで二人に答えていた。
「理央ちゃんは、私ら使役の鏡だな孔ちゃん」
「誠です まるちゃん」
いつの間にか使役同士、仲間意識も深まっているのか、互いにちゃん呼びだね……私は微笑ましく思っていた。
「あの〜 何となく計画はわかってきたけどさ 心は何を計画したの?」
「えり、私の得意分野わかるでしょ体が整ってからが私の出番よ!なんで今は材料集めね」
「そうなの?じゃあ一緒にご飯食べて散歩したりしようね」
えり姫がにこやかに言う。
……本当、えりの素直さは気持ちがいいなぁ。この直ぐ受け入れてくれる素直さによく救われたよ。
心は前世を思い出していた。
私はよく仕事でストレスが溜まった時に、同じ寮のアパートに住むえりの部屋に行った。
「えり、お腹が空いたよ」
とだけ話して。
「え〜じゃあ ピザ取るか!」
よくえりと一緒に食べたなぁ……
二人で笑って話をしてたらいつの間にか、心はすっきりしていた。
何時も嬉しかったんだよ。えり。
「うん!皆で過ごしてたら、直ぐにえりも元気になるよ。私と一緒にやろう」
私は皆とまた過ごせる事が、心の底から嬉しかった。
翌日の早朝から計画がスタートした。
「はい!皆〜おはよう!先ずは朝に布団で体が目を覚ますためのストレッチをするよ〜」
お友が音頭を取る。
はい!腹式呼吸ね〜お腹に手を置いて鼻からすって〜 口から息を細く全部吐く〜 それから軽く足首を回して〜
三人は流石に現世からの流れでさくさくこなしていくが……
「あれ?何かうまく行かないよ?」
えりも頭では分かっているが、今世の殆ど運動したことがない体では、腹式呼吸でさえうまく行かない。
「え〜と お腹を膨らませて?ん?」
「姫様!頑張ってください!」
理央がえりの傍らで必死で応援する。
(あの理央様?朝からそんな近くに?私達は寝起きですっぴんなんですが?使役とはいえ今は人型じゃん。
私は一瞬そう思ったが、理央の懸命な応援ぶりに、すぐ諦める事にした)
暫く経つとえりも前世での体の動かし方の、コツとして掴めてきたのか腹式呼吸が形になってきた。
すると
「姫様 その調子です!流石私の姫様。ううっ……」
理央が涙を流す。
(はいはい これからえりが何か出来る度にこうなのね〜。
理央は今迄ずっとこうやって、えりの事を可愛がってきたのね……しようがない。まあいいか)
私は二人を見て思っていた。
布団で腹式呼吸と軽いストレッチの後えりは美桜 雅と一緒に、散歩をはじめた。
初めは足が震え、自分の体を支えるので精一杯だった。
それでもえりは決して弱音を吐かず、毎日続けた。
毎日えりは努力を重ねた。そして、少しずつ庭の木々や花をゆったり眺める余裕ができてきた。
朝日を浴びて、庭の緑や咲いたばかりの花々は朝露を浴びてキラキラ光っている。
「理央ちゃま〜ここはいいお庭ねぇ」
「本当〜 植物の皆がおはようって
えり姫様に挨拶してるです~」
美桜と雅が嬉しそうに伝えた。
「朝の庭に出たのは初めてです
こんなに綺麗なのね……それにしても
家の庭は広いのね。
理央、美桜 雅ちゃん、少しずつ散歩の距離を伸ばしましょうね」
「素晴らしい!それでこそ……」
理央の言う事はもう分かっているので
皆スルーした。




