02 友達(願望)ができました
冷泉アヤメです。
ただいま大絶賛誘拐されている途中です。
まさか誘拐されるとは思わなかった。でも、よく考えれば誘拐されるのは若いときの特権だよね。大人になると難易度が上がってされなくなるらしいから。
体力付けるため早朝の時間帯に軽く走っていると、車を横付けされて男数名により引き込まれた。
その中の1人が、私の胸を触ってきたので、この誘拐が終わる頃には素敵な呪いをプレゼントしようと誓っている。
私は受けた恩は忘れないけど、仇は絶対にやり返す主義だ。
間接的にも転生する要因になった性悪女は、今までの経緯からして何らかの方法でやり返すのは確定している。
今は性悪女よりも、現状をどうするか。
目隠し(透視の魔眼があるから無意味)と手を縛られた状態(指一本動かす事ができれば魔法を使えるけど)で、車に乗せられて1時間ほど経った。
外装がボロボロで、きっと使い捨てられた屋敷だと思う。
男が両足両手をそれぞれ持って部屋まで連れて行かれた。
部屋に付くと目隠しと手錠を外される。
「大人しくしていろよ」
「下手な事をしなかったら、痛い目に遭わないぜ」
「――は、い」
怯えたような声を出して頷いた。
冷泉組の人達に見られたら大爆笑されるね。うん。
「だ、誰――」
おっと、節操の無いない誘拐犯なこと。
私の前に、もう1人誘拐していたのか。
ベッドにちょこんと座った少女。パッと見た感じ私より年下かな。
なんだか気品があって、どこかのお嬢様かもしれない。
「はじめまして、私は、冷泉アヤメ。キミの名前は?」
「……紫峰院、和泉、です」
「イズミちゃんね。同じ誘拐された者同士。短い間だと思うけど宜しく」
「……」
「どうかした?」
「貴方は、なんでそんなに余裕があるの? 私たちは誘拐されてるんですよ?」
え。だって別にピンチでもなんでもないからね?
その気にさえなれば、誘拐犯たちを半殺しにして戻る事なんて、呼吸をすると同じぐらい簡単なこと。
でも、それを言うのは三流。
私は転生者になって以来、某小説投稿サイトの転生者ものを読み耽って、教訓を得た女。
こういう聞かれたときは、誤魔化すのが一番。また、普通レベルま゛実力を落とし込む。間違っても、「やっちゃっいました」みたいな展開は拒否する。……冷泉組ではもうやったことだしね。
「――余裕、なんてないよ。でもさ、私は、イズミちゃんより年上なんだよ。余裕がある感じにしてないと、イズミちゃんが、不安に感じると思ってね」
「……」
「私、実家の関係で護身術習ってるから、もしイズミちゃんが危険な目に遭うことがあるなら、私が護るから安心してね」
「ぁ……。は、はい」
◆◆◆◆
この廃墟の屋敷に誘拐監禁されてから3時間が経過した。
あ、おじいちゃんに連絡するの忘れてた。イズミちゃんと色々と話するのが楽しくてすっかり失念してた。
だって、同世代の同性の人と話する機会って、ほぼないもん。
私が暴力団の組長の孫ってことで、中学校じゃボッチだし。教師でさえ顔色をうかがってくる始末。だからこの一時が楽しくて、ついつい連絡を忘れていた。
えっと……おじいちゃんのチャンネルは。
『やっほー、おじいちゃん』
『アヤメか! 今、どこにいるッ』
『とある廃墟の一室だよ。いやー、たまには誘拐されてみるものだね。友達ができました』
『――なんだお前の他にも誘拐された奴がいるのか?』
『うん。イズミちゃん。同性の子で、こんなに長く喋ったのは初めての経験だったよ』
『……すまねぇ』
『え? あ、ち、違うからっ。嫌味とか、そんなんじゃないからね!』
お母さんの事もあっておじいちゃん。私に友達ができないを負い目に感じてる節があるんだよね。気にする必要なんてないのに。
前世を含めても私はぼっちには慣れている。……なんだか、悲しくなってきた。
「アヤメお姉さま?」
「ううん。なんでもない」
おっと、顔に出てたようでイズミちゃんを不安にさせてしまった。
『おじいちゃん。チャンネル切るからね。適当なところで、帰るから心配しないでよ』
『お、おい。アヤ――……』
さて、イズミちゃんは楽しいお喋りの続きをしようかな。
そう思っていると、扉が開かれて、強面の男が、5名ほど黒服を連れて部屋へと入ってきた。
私はイズミちゃんを庇うように前へと出る
「お前が、冷泉のところの孫娘か」
「……誰?」
「帝釈天雄会直参、加藤組組長、加藤重明だ」
「……私を材料におじいちゃんを、帝釈天雄会に引き込むつもり?」
「ああ。お前のところのじいさんは、敵に回すと色々と面倒だからな」
「……もし。おじいちゃんが、断ったら?」
「はっ。現役女子中学生は高く売れる。ま、精々、じいさんがコチラの要求を呑むとを祈るんだな」
「――」
昔のおじいちゃんなら兎も角。今のおじいちゃんなら、要求を呑みそうだなぁ。
帝釈天雄会が仕掛け人って分かったし、イズミちゃんを連れて脱走――……。
「んッ」
「へぇ、ガキのくせにキスは上手じゃねぇか。なんなら愛人にでもしてやろうか?」
男が私の、唇を、奪った、瞬間。
私は、意識を、失い。
全自動戦闘モードへと突入した。




