脚本家は厄介者?
(……はぁ……なんでこうなったんだろう……)
赤になった信号を待ちながら、ため息をつく。
今日は、大変なことばっかりだ。
不審者に絡まれたかと思ったらそれが人気アイドルだし、マネージャーの人は意地悪だし、編集の人は食べてばっかだし……
まあ、カメラマンは優しそうに見えたけど……
本当考えれば考えるほどろくなことがない。
挙句の果てに脚本取りに行ってこいだぁ? 私はパシリか!
新人いびりってやつじゃないのか? 警察に訴えてやる!
とりあえず住所に示してあるところまでようやくたどり着いた私。
高松と書かれた表札を見て、間違いないと確信を持つ。
……ていうか、そもそも高松真尋って誰だよ。
聞いたことあるでしょ、って言うってことは有名なのか?
う~ん、私ドラマとか見ないからなぁ。
まあ、でも小説家とかだったら憧れるな~。なんせ、作家さんの家に行けるんだし!
そう意気込み、チャイムを鳴らす。
出てきたのは、母親らしき女性だった。
「はぁ~い。あら、どちらさまですか?」
「え、えっと。奈緒さんに頼まれて……真尋さん、いらっしゃいますか?」
「ああ、奈緒君の変わりの人ね。忙しいのにわざわざごめんなさいねぇ。あの子なら、上にいるわよ?」
しっかしまあ……わっかいお母さんだなあ。
多分うちの母より若いな。言ったら怒られるだろうけど。
とりあえずまひろとかかれた部屋をノックしてみて、応答を確かめる。
だがいくら待っても返事は帰ってこない。
仕方ないから、挨拶をしながら部屋のドアを開ける。
「すみませ~ん、原稿を取りに来ましたぁ」
「誰だ、貴様はっ! 人の部屋に入ってくるとは言語道断! 今すぐ早急に立ち去れ!」
何ともかわいらしい高い声で、私を睨みつける。
私の肩くらいの小さな身長にくりくりとした目つき。
(中、中学生だと!?)
変わってるってこういうこと!? しかも女の子だなんて聞いてないんだけど!
中学生で脚本家ってどんだけ!? 頭おかしいんじゃないの!?
「こら、真尋。初対面の人にそんなこと言っちゃ失礼でしょ?」
「ええい、うるさい! お前は黙っていろ!」
「すみません、失礼なことをしてしまって。息子の、真尋です」
へぇ、そうですか。息子ですか、ふうん……
ってんん? 息子? 息子って言った!?
ちょっと待ってよ、どこからどう見ても女の子にしか見えないこれのどこが男!?
うわ~~~ん! どうなってるのぉぉぉぉぉぉぉ!
「お茶を入れてきますから、ゆっくりしていってくださいね」
彼女、いや彼の母親が一階へと降りていく。
私はもう一度彼を見つめた。
彼は椅子に足を組みながら、なんだかえらそうに座っている。
これが女に見えずして、何に見えるというのだろう。
いわゆる女装ってやつだよな。ここまで完璧な人、いるか普通。
まあとりあえず……
「は、初めまして。奈緒さんに頼まれて原稿を取りに来た、水鳥飛鳥と言います」
「ミドリアスカァ? ぱっとしない名前だな。生まれたばかりの鳥が息絶えていくような名前だ」
ええ!? そ、そうなの!?
「知っているとは思うが、私は高松真尋だ。ドラマ・映画の脚本を書いているときもあれば、本として出版することもある。本物の作家だ」
ふん、と威張ったように彼が言う。
返答に困っていると、真尋さんはそれで? と私に答えを求めた。
「原稿を取りに来たといっていたが、奈緒の奴はどうした?」
「奈緒さんは編集の作業でお忙しくて……」
「なんだ、今日は来ないのか……仕方あるまい。今日はお前で我慢してやる」
が、我慢? 何を?
「水鳥飛鳥」
「は、はい!」
「パンはパンでも食べられないものは何だ!」
「はっ……え?」
突然すぎて、何が何だか分からなくなる。
真尋さんは顔色一つ変えずに、私の答えを待っている様子。
えっと、なんだこの状況。
とりあえずなぞなぞ出されたんだから、答えないと……
「え~っと、ふ、フライパン?」
「ふむ、そうか。やはり人間の大半はフライパンなのだな、つまらん」
え、ちょっ。終わり!?
「腐ったパンとか審判とかジーパンとかもっと他にあるだろ。まったく、フライパンなどとありきたりすぎるものばかり出しおって」
す、すげー。そんな答えあるんだ。
初耳。ていうか勉強になったわ。
「まぁよい。行くぞ」
「えっ、一緒に行くんですか?」
「当然だ。なんせ、今から原稿を仕上げるのだからな!!!」
!?
「ただいま戻ったぞ! 皆のもの! 高松真尋の登場だ!」
まるで時代劇のような登場の仕方で、夕さんの控室のドアを開ける。
そこには、待ち構えていたかのように三人ともいた。
「おお~ひろちゃんいらっしゃ~い♪ 相変わらずかわいいね~」
「今更当たり前のことを言うな、夕。ほれ、原稿だ」
「サンキュー」
「珍しいね、真尋が締め切りに間に合わすなんて」
「当然だ。この者が思った以上の働きをしてくれたのだからな!」
指を刺されながら、ため息を漏らすしかない私。
ここに来る間、ずっと彼の言いなりになるばかりだった。
何の小説かは知らないけど、ネタの参考にするらしい。
いきなり告白してみろとか、犬の気持ちになってみろとかわけのわからないことばかりだ。
まったく、ひどい目にあった……
「大変だったね、水鳥さん。大丈夫?」
「は、はい。なんとか……」
「真尋のネタ探しに付き合える奴はなかなかいねぇんだが、骨はあるんだな。偉い偉い」
なんだか馬鹿にされているような口ぶりで、衣鶴さんが言う。
まったく、こっちは大変ってもんじゃないっていうのに……
このメンバーは苦手だ。やっぱり関わるとろくなことがない。
はたして私は、無事に芸能界で生きていけるのだろうか?
私と彼らの物語は、まだまだ始まったばかりだ!
fin
読んでくださってありがとうございます! この話はこれで完結です!
もし続きが読みたいという意見があったら、書くかもしれませんが・・・笑
感想・意見お待ちしております!




