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出会いは突然に

夢とは、見るものだ。

自分の夢を叶える為なら、人によってはそれ相応の努力を行う。

別にそれが馬鹿みたいと馬鹿にしているわけではない。

実際、夢が現実となっている人もいるんだし、それはそれで素晴らしいことだと思う。

でもそんな簡単なことではないということは、私が一番よく知っている。

小さい頃からずっと夢だった憧れの職業。

ずっと手が届かない、追いかけても追いかけても追いつけないようなそんな夢だったのに。

運命はサイコロみたいなものだ。

人生、何が起こるかわかったもんじゃない。

これは私が実際に体験したことの、お話である。


「おねぇちゃ~ん、手紙来てたよ~。確か手紙来たら不合格って言ってたよね? これで何件目?」

弟が馬鹿にしきったような声を私にかける。

返事をする気もなかった私は、無言で手紙を受け取る。

(また不合格か……ケンカ売ってるとしか思えないわ……)

その手紙を見ながら、私ははあっと深いため息をつく。

手紙の中身を確認するまでもなく、不合格と書かれた書類がある。

私の名は水鳥飛鳥。どこにでもいそうな大学生である。

ただいま絶賛就活中である。

小さい頃から何かとテレビが好きだった私は、将来は絶対テレビに関わる仕事がしたいと軽く一万回は言っていた。

その結果が、このざまだ。

どこをどう受けても、不合格の文字。

電話や郵便物により届く、最悪な結果通知……

(気晴らしにどっか出掛けようかな……)

嫌な気分を忘れるようにして、外に出てみる。

外は快晴で、一気にすがすがしい気持ちになった。

何羽かの鳥が、のんきにさえずって飛んでいる。

(いいな、鳥は自由気ままで……私も早く自由にはばたきたい……)

このままどこかに逃げ去ってやろうか、そんな考えもわいてきた。

そんな時、だった。

私に、何かがぶつかったのは。


「いった!」

「おっとっと、ごめんごめん! 君大丈夫?」

勢いよくぶつかっといて、大丈夫はないだろう。

思わずしりもちをついた私は、心の中でそう毒づいた。

当然それを口にすることはなかったが。

「い、いえ。大丈夫です」

「僕も急いでたもんだから、つい……立てる?」

はいと返事しようとして、何か違和感を感じた。

(あれ、この声聞いたことあるような……)

すごくおしゃれに着こなされた服装に、十字型のネックレスがかかっている。

格好にあわない金髪に、大きな帽子とメガネが妙に目立っている。

(不審者……じゃないよな)

格好からして見るからに怪しい。

でもこの人はちゃんと謝ってくれたし、なにより優しくしてくれる。

彼が私にかける声が、どこかで聞いたような気がしてたまらない。

何だろう、この違和感。この人、どこかで見た様な気がする……

「ふ~む……なるほどなるほど……へぇ~……」

といきなり彼は私の方をじろじろと見だした。

なるほどだのと感嘆の声をあげながら私にどんどん近づいてくる。

この人危険だ。間違いなく、危ない人だ。

とりあえず逃げなきゃと、立ち去る理由を即座に考える。

「あ、あの。私、急いでるんで……」

「君さ、マネージャーとかに興味ない?」

これが俗にいう勧誘ってやつですか。

その手には、絶対に乗らない……

「すみません、興味ないんで」

「よかったらうちの会社に来ない? ちょうど人手が足りなくてさ」

「勧誘ならお断りします」

「カノンプロダクションっていうとこなんだけど」

ん? 今、この人なんて言った?

カノンプロダクション? あの有名な?

「新人アイドルの育成が間に合わないらしくてさぁ。適当でいいから見つけて来いって言われてるんだよね。どう? やってみない?」

「わ、私が?」

「他に誰がいるの?」

ダメだ、カノンプロダクションと言われると後に引けない。

なぜならそこは、かの有名なアイドル「YOU☆」がいるからだ。

YOU☆というのは、今話題の超人気アイドルだ。

私も大好きなアイドル。

そんな有名人に会えるなんて、天にも上る気持ちだ。

ましてや、働けばテレビ局の方にも関われるかもしれないじゃないか!

「あ、あの、私実は……!」

「見つけた」

そこに、一人の青年の声が聞こえた。

後ろを振り返ると、そこには見慣れない男性が立っている。

(で、でかっ……)

およそ百九十はあるように見える長身、怒っているようにも見える鋭い目つきを金髪の少年に向けている。

「ここだろうと思った。どうせカラオケでも行くつもりだったんだろ」

「あっはは、ばれたか。さすが衣鶴は僕のこと何でも知ってるね♪」

「嫌でも分かるだろ。何回も同じようなことをされると。仕事だ、行くぞ」

「あ、その前にさ、この子も一緒に連れてっていいかな? マネージャーにちょうどいいと思って」

金髪の少年がそう言うと、長身の男性がいぶかしげに私を見る。

なんだか怖くて、思わず身をすくめてしまう。

「この女にした根拠は?」

「勘♪」

「また勘かよ」

「僕の勘はあたるんだぞ~?」

「ふうむ……おい女ついてこい」

「えっ。ちょっ、どこにですか!?」

「決まってんだろ、うちの会社だ。こいつの仕事もあるし」

何が何だかわからない。

仕事って何? この金髪の人、何をやってるの?

「あの、失礼ですがあなたは……?」

「ん? 僕? 大西夕だけど」

オオニシユウ? どこかで聞いたような……

あれ? 確か、YOU☆の本名って……

「さぁ、行こっ♪ 僕の華麗なショーを見せてあげる☆」

そういって地毛だと思っていた金髪の髪を、投げ捨てる。

眼鏡と帽子を取った、その顔はYOU☆そのものだった。

こうして私の波乱万丈な人生が幕を開けたのです!


(続く・・・)

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