吸血鬼
吸血鬼。
トランシルバニアのあの人が有名だ。
嘆かわしいことに最近の吸血鬼は男でもなんでもかまわないで吸血するみたいですが……
昔の吸血鬼は処女の血しか求めなかったはず!
この世界の吸血鬼は昔ながらの吸血鬼であって欲しいと思います。
ナプールのゲーム的に言うと吸血鬼は結構深い階層、30階ぐらいだったかな?で出現する雑魚だったりする。
まあ、麻痺とか毒があるのでいやらしいといえばいやらしいですが、たいしたことはない。
あくまでナプールでの話だが。
ただ、今回の相手はどういった設定なのか、色々と強化されている強敵だ。
因みにゲームだとイベントさえ無視すれば、こいつと戦わないでゲームクリアーできたりする。
いわば隠しボス的な存在。
本来ならレベル1で倒すことは無理無理無理のカタツムリ状態。
ぺちっと潰されること請け合いです!
正攻法で殴り合いをすればね。
必勝法を知っているとはいえ、かなりナプールの世界にアレンジが加えられているみたいなので、もしも勝てそうになければ逃げよう。
まだ日が出てるし屋敷から出れば大丈夫……だといいなあ。
シルクがいるから杞憂だとは思うが。
そのシルクはお店で買った色々な雑貨や下着をこれまたお店で買ったリックにつめて背負っている。
見た目は黄金の小山がでっかいリック背負ってモゾモゾ移動しているという、意味の分からない状況だ。
俺もエルナも重すぎて持てなかったから仕方がない。
少し調子に乗って買いすぎた。
ということでやってきました町外れの豪邸に!
大まかな場所は工房のおっちゃんに聞いていたから、その周辺で「カルンスタインさんの家はどこですか?」
と聞きながらたどり着いたのだ!
裏門をシルクがこじ開けてあっさりと豪邸に進入成功。
鋼鉄製らしき裏門の柵が飴みたいにグニャリと曲がってるのをみると、改めておっちゃんの忠告が身にしみてくる。
もしかするとこれは器物破損とか不法侵入という行為かもしれませんが、人命がかかっているんでまあ問題は無いんじゃないかと。
……これでカルンスタインさんが普通の人間だっらどうしよう。
ゲームと同じように裏庭の木の下にあった隠し通路を通って豪邸の地下室へ。
その地下室の中にはでっかい棺おけとなんだか高そうな調度品の数々!
おおっなんだかそれっぽい!
地下室の扉と隠し通路の入り口に太陽石をセット。
光よ!というワードを唱えると煌々と地下室を照らす太陽石。
石の位置を微調整して部屋全体に光が届くようにする。
ついでにそこいらの地面に聖水を撒き散らしてと。
棺おけの左右に陣取って槍とヤリモドキを構えている2人に声をかける。
「エルナ!シルク!準備はいいか?行くぞ!」
「はいご主人様大丈夫です」
「いつでもどうぞマスター」
道々この2人にも吸血鬼退治の作戦は伝えてあるのだ。
カルンスタインを奴隷屋で見たことがあるというエルナは「カルンスタインが本当に吸血鬼なんでしょうか?」と半信半疑みたいだが……
とりあえずみていなさいエルナ君。
聖水の小瓶のふたを開けて少し蓋をずらした棺おけの中に中身を投入。
「ギャアーーーー」
身の毛もよだつ悲鳴と共に棺おけの蓋が跳ね上がり、飛び出てくる顔の白いナイスミドル。
多分、こいつが吸血鬼なんだろうな。
聖水の効果なのか顔がやけどしたようにただれてるし。
名前 カルンスタイン
種族 不死者
レベル 70
ステータス
HP 1320/1600
MP 1420/1420
筋力 800(400)
体力 800(400)
器用 600(300)
知力 820(410)
敏捷 650(325)
精神 600(300)
運勢 200(100)
装備
右手
左手
頭
胴体 闇の服
足 闇の靴
装飾 カミーラの指輪
装飾 シェーリダンの腕輪
スキル
<上級魔族>・・・魔族の中でも高位のもの ステータスに補正
<夜の王>・・・夜は能力倍増 昼間は能力半減
<上級吸血>・・・吸血により大幅にHP回復 吸血により死亡したものは下級吸血鬼となる
怪力・・・筋力に補正
変化・・・夜に限りこうもりに変化できる
不死・・・本体の灰が無事であれば10日でよみがえることが出来る
中級魔法・・・中級の魔術を使える
闇の上位魔法・・・闇属性の上級魔術を使える
闇の爪・・・素手の攻撃時に高確率で麻痺・毒・混乱・恐怖を与える
魅了の瞳・・・魅了の状態異常付与
ここまできて間違いではないだろうが、念のため究極鑑定で確認。
やっぱりこいつで間違いないな。
不意打ちとはいえ聖水で280もHPが減ってるのも良い感じだ。
さすがに最高級聖水は効果が高いらしい。
……こいつなんかスキルがカッコ良くてむかつくんですけど。
「貴様ら!この私を高貴なる……」
「いまだ!突いて!」
吸血鬼の言葉を遮って2人に指示を飛ばす。
エイとばかりにそれぞれの武器を突き刺す2人。
「ぐばっ!」
おーおー、もろにお腹にめり込んでる。
痛そうだ。
シルクのヤリモドキなんて貫通してるもんな。
さすが筋力999!
しかも太陽石の光を浴びてぶすぶすと体から煙を出す吸血鬼。
「なぜだ、なぜ日の光がここに……そうか、太陽石を……」
なんだかブツブツといってますが、かまわず蓋を取って最高級聖水を投げつける俺。
一旦ヤリモドキを引き抜いてぶすぶすと吸血鬼をさすシルク。
刺さった槍をぐりぐりとひねるエルナ。
そういえばヤクザはドスで相手をさしたら刃先をひねるんだよね。
そうすると内臓がだめになって確実にやれるんだとか。
どうでもいいことを思い出しながら、ひたすら筋力5の俺は聖水を投げ続ける。
吸血鬼は逃げようとしているのだが、そのたびにシルクに叩き落とされている。
聖水を4本ほど投げているとついに限界を超えたのか「ぎゃああああ」
という叫び声を残してボロボロと崩れ落ちる吸血鬼。
高そうな指輪と服も同じように消えていくのが多少もったいない。
ここで勝った!
と思うのは吸血鬼の素人。
玄人というか、正解を知っている俺は棺おけをどけて下の床のじっくり調べる。
あった!
手のひらほどの石をどけるとそこには骨ツボみたいな壺。
これを見逃してると復活するんだよねーこの吸血鬼。
最高級聖水のふたを開けて中身を壺の中に注ぐ。
すると
ジュウ
と言う音と共になんとも嫌なにおいが地下室の中に立ち込める。
ふっ悪は滅びた。
勝利の余韻に浸る俺に「……あのご主人様もう終わったんでしょうか?」
エルナが遠慮がちに声をかけてくる。
うーん吸血鬼の灰も浄化したから大丈夫だと思うんだけど……
と、ポケットの中のカードが震える。
来たな!
取り出して内容を確認。
挑戦者<ケイ>さんが特別イベント<吸血鬼>をクリアーしました。
<ケイ>さんは特別イベントを3つ以上クリアーされましたので<制限解除>のスキルが付与されます。
おめでとうございます♪
なお、特別イベント<吸血鬼>は消滅しました。
どうやら無事吸血鬼は倒したいみたいだな。
「うん、完全に吸血鬼は滅んだよ。お疲れ様エルナ。シルクもね」
その言葉を聴くとエルナはヘナヘナとその場に倒れこむ。
そうだよねーレベル10で吸血鬼退治とか普通はないもんね。
怖かっただろうな。
いそいそと俺のそばにシルクがやってきたので頭をなでなでする俺。
兜の上からなので感触が今ひとつなのが残念だ。
そういえば、俺も初めて実戦を経験したんだよな。
もっとびびってしまうのかと思ったけどなぜか全然余裕だった。
自分で言うのもなんだが俺はこんなに勇敢じゃないはずなんだがねえ。
なんか精神を神様にいじられてそうで怖いんですけど……
まあ、それはひとまず置いておいてだ。
今回はアイテムが手に入ってないよな?
今までは特別イベントでレアなものが手に入ってるんだから、今回も入るはず!
ということで家捜しを開始する。
座り込んでるエルナをこき使うのはかわいそうなので、シルクと二人で究極鑑定のスキルを使いながら箪笥とかをごそごそとあさる。
泥棒というなかれ。
勇者たるもの箪笥をあさるのはいわば必然なのですよ。
結果
ケイはシルバーソードを手に入れた。
ケイは闇の外套を手に入れた。
名称 闇の外套
区分 装飾(闇紗製)
重量 1
闇紗製のマント
闇に溶け込む漆黒の外套
回避に補正
補正は周囲の明るさによって変化
名称 シルバーソード
区分 片手剣(銀製)
重量 10
間を払う銀製の片手剣
不死者に特攻




