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俺と糞ゲー  作者: ピウス
12/36

買物

 冒険者御用達だというランディのお店はとことん立派だった。

 まずお店の大きさが辺りのお店の3倍以上ある。

 外観もどこかの小城みたいだ。おっちゃんの工房はここに比べると犬小屋みたいなもんだな。

 おっちゃんにいったら殴られそうだけど。


 店内も凄い。広い上に2階建てになっているのだ。

 俺たちは今1階にいるのだが、壁には一面に剣や槍、弓なんかが飾られてて、壁際には金属製の鎧がずらずらっと並んでいる。


 床に置いた樽や木箱の中には無造作に大量の武器が放り込んである。

 多分壁にかけてあるのが高級品で樽などの武器は数打ち品なんだろう。


 ちょっと店内の雰囲気に圧倒されてる俺。

 尻尾をパタパタ振って店内を見回すエルナ。

 無表情なシルク、だがそれがいい。


 ほとんど、おのぼりさん状態の俺たちに「いらっしゃいませお客様」

 と、接客の店員さんが笑顔を見せて近づいてくる。


「こんにちわ。あの、この店は初めてなんですが高級品はどこにありますか?」

「高級品ですか?失礼ですがご予算はいかほどでしょうか?」

「そうですね、1億程度でと考えていますが」


 一応俺の身なりが周りに比べてアレなので、ポケットからコインを一枚取り出して見せる。

 ドヤ!


「左様でございますか。ではこちらにどうぞ」


 期待に反して無反応の店員さん。

 こやつできる。

 まあ、考えてみればおっさんの工房とは客層が違いそうだからな。

 お金持ちのお客も多いんだろう。


 店員さんに案内されたのはお店の2階の片隅にあるフロアーだった。

 ここは下みたいにむき出しで装備はおいてなくて、透明なガラスケースみたいなものに入っておいてある。まるで宝石店の店内みたいだ。


 実際何の金属で出来ているかは知らないけどキラキラしてるし。


「ここはエーテルとオブシディアン製の装備をおいてございます。何れも付与師が魔力を込めた一品ですので1年は破損の心配はございません。特にエーテルは軽いですからお客様のお連れ様には最適かと。

 マジックアイテムもございますので、よろしければそちらもご覧くださいませ」


 エーテルねえ……知らない。

 ナプールのゲームに出てきていただろうか?

 なんか鉄製のものとは格が違うっぽいけど攻撃力とか防御力をみてから買おう。

 とりあえずエーテル製だと思われる薄い青の胸当てを鑑定してみる。



 名称 エーテルガード

 区分 軽鎧(エーテル製)

 重量 5


 希少金属エーテルの胸当て

 強度は鋼鉄をはるかにしのぎ

 軽さにおいて重革を上回る

 特に女性に愛用される



 あれ?

 防御力が見えない。

 なぜだ?重量なんか見せなくていいからそこが見えろよ。


 今度は鈍く黄金に輝くオブシディアンとかいう大剣を鑑定してみる。



 名称 オブシディアンソード

 区分 大剣(オブシディアン製)

 重量 100


 堅い・重い・強いの代名詞

 希少金属オブシディア製の両手剣

 筋力がなければ持ち上げることさえ出来ないが

 使いこなすことが出来ればその威力は他の追随を許さない



 攻撃力もでないな。


 ちょっと考える俺。

 装備すればもしかするとステータスの中に表示されるのかな?

 ということで、店員さんに断って重量が5のエーテルの剣を持たせてもらう。

 オブシディアンの剣は持ち上げることも出来なかったからなあ。

 ピクリともしないのよね。

 正直この剣も少々重い。


 装備して自分を鑑定。



 名前 東雲圭

 職業 冒険者

 レベル 1

 冒険者ランク 6等級の下


 ステータス

 HP  10/10 

 MP  10/10

 筋力 5(3)

 体力 5(3)

 器用 5(3)

 知力 5(3)

 敏捷 5(3)

 精神 5(3)

 運勢 5(3)



 装備

 右手 エーテルソード

 左手

 頭

 胴体 布の服

 足  布の靴

 装飾

 装飾


 スキル

<幸運>・・・幸運になる

<究極鑑定>・・・見えるすべてが見える

<3次召集者>・・・美しき地母神【ミュー】により異世界より召喚された者

 刀の心得・・・剣道2段の腕前

 第二種免許・・・車ないですけどね

 14歳から大丈夫・・・なにが大丈夫なんだよペド野郎



 そういえば人形の特別イベントで幸運のスキルを手に入れてたな。

 説明になってねえから効果は分からないけど。


 いや、大事なのはそこじゃない。

 装備しても攻撃力とか防御力の数値が見えない。


 ……つまりこの世界ではマスクデーターみたいな感じなのか?


 面倒な仕様にしやがったな。

 ステータスとか作ってるんだからそのままにすればいいじゃん。


 大体なぜか俺のステータスが(3)になってる。


 しばし考え込む俺。

 多分、これは筋力の数値以内じゃないと、ステータスにマイナスの補正がかかるということなんだろう。おぼろげだけど、なんかのゲームでそういう仕様をみた記憶がある。


 重量がわざわざ鑑定で表示されるのと、エーテルの剣を店員さんに返してから再鑑定すると(3)の表示がなくなったからまず間違いないだろう。


 うーん。

 とりあえず、シルクは力があるからオブシディアンでいいか。

 使いこなせば強いって説明にあるし。


「シルク。この剣もてるかな?」


 オブシディアンの大剣を指差して聞いてみる。


「はい試してみます」


 ヒョイっという感じで軽々と持ち上げるシルク。

 す、すげえ。

 やはり一月は手を出してはならないようだ。


「ど、どうだシルク、重さは?」


 迷宮に潜るわけだから例え大丈夫でもギリギリはダメだろうと思う。

 装備して長時間動くわけだし。


 シルクは大剣を棒切れのようにぶんぶん振り回してる。

 風圧で俺と店員さんの髪の毛があおられてます。


「この程度の重さなら1日でも十分行動可能です」


 す、凄いねシルク。

 この程度ときたよこの子。


「シルクは武器はなにが得意なのかな?好きなものがあれば言って欲しいんだけど」

「何でも出来ますのでマスターが決めてください」


 さすがだ!

 偉いぞシルク。何でもできるのか。


 シルクは戦闘では一番前に立ってもらわないといけない。

 かわいそうな気もするけど、一番強いわけだしね。

 俺はその後ろでサポートする形だな。

 サポートじゃなくて守ってもらうのが本当のとこだろうが。


 エルナは状況によって動いてもらおうか。経験者だしね。

 あとでその辺もエルナと相談しないとな。


 となると出来るだけリーチの長い武器がいいだろう。

 シルクの横を敵がすり抜けて俺に襲い掛かってきたら多分俺は死ぬだろうし。

 ……バックアタックとか多分即死だな。


「じゃあ店員さん。この子に迷宮でも使える長さのオブシディアンの長手武器選んでやってください。鎧や兜、靴も様子を見ながらお願いします」


 シルクの頭に手を置いてそう店員さんにお願いする。


「オブシディアンでございますね。かしこまりました」

 店員さんに連れられていくシルク。


 お店の倉庫に在庫があるからそこで一番体にあったのを見つけるらしい。

 ここにあるのはいわば見本ということかな?

 どうしても体にあわなければオーダーメイドらしいが、価格も高くなるしなにより完成までは半年だというから今は無理だ。

 頼むとしてももう少し情報を集めてからだな。


 次はエルナの装備だけど、とキラキラした目でケースを見つめているエルナに声をかけた。

 耳がピコピコしてるんだよな。

 興味津々という感じだ。

 だからおとなしかったんだなこいつ。


「エルナの装備を買いたいんだけど希望があれば言ってくれ」

「わ、私も買っていただけるんですか」

「ああ、お店でエルナを買うときにそう約束したはずだけど?」

「あ、ありがとうございます。じゃあ胸当てと冒険者のときに使ってたので槍をお願いします」


 槍と胸当てね。


「兜と靴はどうする?」

「あの、できればお願いします」

「じゃあ店員さん。この子に合うエーテル装備をお願いします」


 うれしそうに店員さんについていくエルナ。

 後姿だから尻尾が尋常じゃないぐらいブンブン振られているのがよく見える。

 やはり尻尾はいいな。

 あれで顔がなあ。

 いや、もう言うまい。エルナはいい奴だ。


 さて、2人はアレでいいが問題は俺だ。

 筋力5の俺はどう考えてもエーテルの防具。中でも一番効果が高そうな鎧を買うべきだろう。


 鑑定の情報からして多分布製品は重量1だ。

 つまり俺は重量4までの鎧しか着られないわけか。

 裸足なら重量5まで持てるけど、靴は履かないと外歩けないし、死にたくないから防御力重視だ。武器は諦めよう。

 

 エーテルを色々鑑定して、重量4のエーテルジャケットというものを見つけた。

 着てみると俺は中肉中背なのでぴったりとあう。


 鑑定


 名称 エーテルジャケット

 区分 服(エーテル製)

 重量 4


 希少金属エーテルを編みこんだ服

 軽い上に並みの鎧を硬度においてしのぐ

 普段着としても使える



 まあ、これでいいか。

 武器はもてなくなるけど。


 レベルアップして筋力増えるまでは後ろで傷薬なんかを使おう。

 戦闘中に使えるんだろうか傷薬?塗り薬らしいが……


 そういえばお約束の魔法があればそれを使ってもいいな。付与師がいるという話だから多分魔法使いもいるはずだ。付与師がなんなのかはよく分からないけど。

 あとでエルナに聞いてみよう。


 俺についてきている店員さんに服を預けて、もう重量的には装備できないはずだけど一応武器も物色する。簡単に遠距離から攻撃できる武器はないものだろうか?


 スキルに刀の心得はあるものの糞みたいなスキル説明だから効果が分からない。今の俺が近接戦闘するのは危険極まりないだろう。

 今というかずっとやるつもりはないけど。怖いし。


 店員さんに聞いてみる。


「スイマセン。遠くから攻撃できる武器で軽いものってありますか?」

「そうですねえエーテルの弓ですとかスリングなどがございますが」


 弓とか無理だろ。使ったことがない。

 高校時代に弓道部に入ってればそれにするんだけどなあ。


 俺が弓をうったらシルクに当たりましたとか洒落ではすまない。

 シルクに嫌われるかもしれないからね。

 うん、弓はダメだそんな危険は冒す訳には行かない。


 スリングは石投器みたいな奴だろ確か?よく知らないけどなんだかショボそうなのでヤダしなあ。

 せっかくの異世界だ、出来ればカッコ良い武器にしたいところだ。

 だって男の子だもの。


「他にないですかね?出来ればあまり技術がいらないものがいいですが」

「はあ、そうは言われましてもそれ以外となると中々1億以内ではございませんね。そういったものは強力な魔法の武器でございますので単品で1億ヘル以上はいたしますからねえ。しかも冒険者レベルが1等級でないと国からの補助もございませんし」


 1等級だと補助とかあるのか?

 いや待て。店員さんは無いとはいってないぞ。


「あの9億出せば何かありますか?」


 コインは残り10枚なのだ。

 1枚は2人の支払いがあるしこれが俺の限界だ。


 「9億でございますか少々お待ちを」


 そういって店の奥に行く店員さん。

 9億でも驚かないのね。ちょっと寂しい。


 少しして店員さんは、着飾った恰幅の良いおっさんと5人ほどの完全武装の兵士を引き連れて戻ってきた。おっさんの手には綺麗な小箱がある。


「お客様。遠距離で攻撃できる武器をお探しと伺いましたが」

「ええ」


 まずかったのか?

 何で5人も兵士連れてくるのさ。


「お値段はいささか張りますが……こちらをご覧ください」


 といって箱を開ける。

 中身は……銃だよ。

 銃というか、空中のお城で「バルス!」って叫ぶ人が持ってた大砲みたいな奴。

 アレよりも装飾が綺麗だけどね。

 

 ……この世界にも銃があるのかよ。

 剣とか槍とかいらなくないだろうか?

 まあ、兵士まで連れてきてるのだから凄く高いのだろう。


「こちらは当店の所有しておりますアーティファクトの一つでございますが……いかがでしょうか?」


 意味は分からないけどなんかすごそうな感じだぞ。


「お値段の方は5億ヘルになりますが、弓矢などとは比較にならない強力な遠距離攻撃が出来る一品でございます」


 弾は別売りだろうか?

 とりあえず鑑定してみる。

 5億は俺にとっても大金だからハズレをつかまされてはたまらない。


 名称 《地母神の裁き》

 区分 神器

 重量 20


 美しき世界の守護者

 輝ける地母神【ミュー】の祝福を受けた神器

 精神力を魔力として打ち出すことが出来る

 威力は持ち主のレベルに依存する



 鑑定の解説に軽くイラつく俺。

 あのメガネはどこに向かおうとしてるんだ?


 いや、それはともかく、要するにこれはMPを消費して撃てる銃ってことだろ?

 これは買いだ!

 

 銃なら弓矢よりもはるかに早く習得できるだろうし、レベル依存で威力が上がるのなら最後までこれでいけるはずだ。


 補助が出るという冒険者レベル1等級になってから買おうとしても売れてしまう可能性もあるだろう。

 そもそもそれまで俺が生き残れる保証はないのだ。


「いただきましょう」


 おおー。というどよめきが護衛の周囲からおこる。

 5億だもんな。

 よく考えたら、俺は15億ポケットに突っ込んで歩いてたけど……

 これは早いうちに拠点となる家を買わないといけないかもなあ。

 お金がドンドン減っていく


「お買い上げいただきまことにありがとうございます。お支払いの方はカードでございますか?」


 にこやかに俺にたずねるおっさん。多分この人店主なんだろうね。


 いや、これで頼むと古銭を5枚渡す俺。


 おっさんは1枚ずつ丁寧に眺め透かし確認して満足したのか、それではと箱を俺にくれる。

 5億はたしかに高いがこれはいい買い物じゃないかな?と自画自賛する。

 まあ当分使えないとは思うけどさ。


 ……なんだか当分使えないものが増えている気がするなあ。

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