第三話 現世人類のアタラクシア ⑧
それからというものの、二人は来る日も来る日も国のあちこちを訪ね歩いた。
平たく言えば、毎日のようにほっつき回り、遊び歩いていたことになる。
しかし二人はそのことについてあまり気にしなかったし、周りの人間も指摘することはなかった。二人とも想像を絶するような大冒険の直後であったし、それを除いても、二人の若々しさと瑞々しさは国の者達にも歓迎をもって受け入れられた。カナタとソラは、年頃の少女らしいフットワークの軽さを活かし、あっという間に国の人々とも馴染んでいった。
すると国中で、まるでアイドルのように二人の動向が話題にのぼる。今日は二人があんなところへ行った、こんなものを食べた。そういう当たり障りのない微笑ましげな報告が、毎日のように国王の元にも届いたという。彼はまるでそれが自分の娘たちのことのように目を細め、楽しそうに耳を傾けるのだった。
最後は玉座に深く体重を預けながら、深く息を吐くのだという。
「子供たちに大人の世界を委ねることほど、独善的なことも無いのかもしれないな……」
そしてこうも付け加えるそうだ。
「子供たちが無邪気に走り回っていられる世の中こそ、大人たちの責任だというのに……」
王を取り巻く賢人たちは、一様に頷いたという。
広大な連邦の一国家であるブリューゲルのバベルは、何度も戦争を続けているという。
混迷を続ける帝国連邦内での国境再統一戦争だそうだ。




