第二話 予定調和のアーキタイプス ⑯
カナタの操縦する自走砲から射出されたのは、亜光速まで加速された荷電粒子の束。最大出力かつ高収束で放たれたそれにより連絡橋の表面は大きくめくれ上がり、ぐずぐずに溶け出した。あっという間に三機のデシーバーを消し飛ばした火線は衰えることを知らず、遠くムセイオンの空中都市すらを貫通していった。遅れて、火球が広がっていく。
一瞬で発射を終えた荷電粒子砲の砲身は、生じた熱を排出しきれずに完全損傷していた。
それを確認したカナタは、自走砲から荷電粒子砲を切り離した。
荷電粒子砲は霊子に還元され、粉々に砕け散っていった。キラキラと空気を煌めかせる。
ブレーキをかけた自走砲は変形を始め、もとの機械人形の姿へと戻っていった。
外骨格に包まれると、内骨格にかけられていた少女の姿の表象も掻き消え、元の無骨な霊晶製の透明な内骨格に戻った。通常の躯体状態に復帰したカナタは前に向き直ると、ふわりと落下してくるソラの華奢な肢体を力強く抱きとめた。がっしりとしたトーテムにお姫様抱っこをされたソラは「きゃ」とらしくもない悲鳴を短く洩らした。
『痛くないですか?』
「全然」
二人は、安堵したように顔を見合わせた。
と、その瞬間、二人の足元が大きく傾き始める。
『きゃ……!』
「落ちる……!」
連絡橋に等間隔で埋め込まれた重力鋲の一基が、カナタの砲撃によって壊れたのだ。
重力崩壊を起こした重力鋲によって地面が崩れ――二人は空中に投げ出された。
『ソラさん!』と手を伸ばしあう。
「カナタ! 単子を再翻訳しろ! 私たちは本当にこうなるって決まってるのかッ!」
ソラが声を張り上げ、初めて〝私〟という一人称を用いてカナタに叫んだ。
『で、でも! 単子の翻訳による恣意的な事象の上書きは禁忌事項に含まれて――』
「四の五の言ってる場合か! お兄さんを探すんだろ!」
『わ、わかった! 手を――』
わたしたちは落ちてなんかいない……橋は壊れたけど向こう側に渡ることはできたはず……そうなるように定まっているんだ……。雲野カナタは、そう自分に言い聞かせた




