躾
まずは弁解から始めることにする。
「僕は服を着せろって言ったんですけどね・・」
カリーナは裸だ。
ご両親に娘が奴隷になって裸でしかも縄で縛られてるところを見せるとか・・これは何て罰ゲームですか?
「気にしないでくれ、服が勿体ない。」
えー
ちょっと、その反応は予想してなかった。
「えーと・・ご飯はちゃんと食べさせてますし、風呂にも入れてますよ。」
「そんなことまで・・申し訳ない。」
バルディさんが頭を下げた。
その後ろではローザさんも同じように頭を下げている。
「それで、治療なんかもして貰ってるようだが・・」
「治療、ですか?」
俺はオリンに目線で問いかけると、オリンが首を振った。
「すみません。してないようです。」
「してない?ってことは・・オリン!お前は何をやってた!」
バルディさんが突然怒り出した。
オリンの首根っこを掴むとカリーナがいる部屋にズカズカと入っていく。
自分の娘が鞭で叩かれた痕を見て怒るのはわかる。
でも、思ってたのと違う。
どうやらカリーナの身体に大した傷が付いていないのが気に入らないらしい。
どんな親だ。
と、思ったけど・・いや、そろそろいいか。
この世界は地球視点で見ると結構考え方が遅れてる。
未来がどうなるかわからないから遅れてると言って良いかはわからないけどね。
どっちが正しいとかも俺には判断できないし。
流石に親が不祥事を起こした子供を家の名誉のために殺すとか言い出したら俺も止めるけどさ。
今回の不祥事で起こるのは大量の失職と餓死、後は暴動とか略奪かな?
それが一冒険者の不用意な行動で起こった。
いや、これから起こるんだ。
客観的に見れば十分に死刑に当たると思うよ。
そうでもしなきゃ国民が黙ってない。
それこそ大規模な暴動に発展するよ。
もちろんその犯人達を奴隷として匿っているニートグループは無関係ではいられない。
まぁうちに表立って文句を言える人はなかなかいないから別に良いけどね。
かといって実のところ、カリーナは勿論ドラゴンクロウのメンバーだって何がなんでも欲しい人材って訳ではない。
少なくとも今のところカリーナは奴隷になっても役立たずなんだし、無理して生かしておく価値はない。
何の役にも立たないなら、こいつが食べる食糧はこれから飢えるであろう他の人達のために取っておくべきだ。
まぁ他人だけじゃなく、親からしても子供の不用意な行動は一大事だ。
何も知らない子供だって魔物や盗賊は見逃してくれる訳じゃない。
カリーナの歳になれば自分の命は自己責任だけど、仲間や周りの人の命もかかってくるしね。
それに、相手が人間だと家族にも被害が出ることだってある。
貴族に粗相をした時とか、ね。
まぁ躾を間違った親の責任ではあるんだけど、カリーナの歳になって親のせいにするのもなぁ・・。
バルディさんもローザさんも見た感じマトモそうだし、思ってたのと違う。
何でこうなったんだか。
俺が廊下で考え事をしていると、オリンへの説教を終えてカリーナの様子を見に行ってたバルディさんが俺の所に戻ってきた。
カリーナの両親とその仲間を交えて話合った結果、しばらく両親とその仲間でカリーナの教育・・というか、躾をしてもらうことになった。
大歓迎という訳ではないが、まぁオリン達が訓練に集中できるなら構わない。
カリーナの両親達、コーラドールのみんなは夜中の見張りも兼ねているので、全員俺の屋敷に泊まって貰うことにした。
一応、部屋なら空いてるからね。
その後、手の空いたオリン達の訓練をすると伝えると、すぐにカリーナの躾を始めるバルディさん以外の3人が見学したいと言ってきた。
何も問題はないので、お互い軽い自己紹介を済ませてみんなで庭に向かう。
もしかして、と思ったので聞いてみたら、やっぱりコーラドールのシバクさんとダブルさんはそれぞれイズナとドルチェの父親だった。
何となくそうじゃないかと思ったんだ。
面影があるしね。
「いやー楽だわ。」
最初は見学のつもりだったんだろうけど、流石に自分の子供の不甲斐なさに我慢出来なかったらしい。
今は俺の代わりに親グループが色々と教えてくれてる。
体力はともかく、技術はこのベテラン陣に任せた方が良さそうだ。
というか、知らないことが多いからしばらくは俺も教わろうかな?
仕事をしながらだと色々限界もあるし。
うん、そうしよう。
ということで、コーラドールのメンバーに色々教わるようになってから数日がたった。
屋敷では3食風呂メイド付きということで、コーラドールのメンバーも快く教えてくれてる。
3日がたった時、カリーナが俺の奴隷ということをやっと認めた。
今までのことを考えると早いけど、実の親を相手に3日粘るカリーナもすごい。
そのあと数日は仕事で屋敷にあまりいられなかったけど、再び訓練に顔を出した時は何とカリーナが訓練に参加してた。
服は着てたよ。
ビキニみたいな布切れだけどね。
さすがにカリーナは後から参加したのでちょっと遅れぎみだけど、おっぱいを揺らしながら・・いや、髪を振り乱して頑張ってる所を見る限り、しっかりやってるみたいだ。
カリーナに付きっきりで教えてたバルディさんが俺を見付けて歩いてきた。
「ロイさん。今日は参加は?」
「バルディさん。おはようございます。・・そうですね。参加させて貰います。」
「ちなみに1つ聞いても?」
「どうぞ?」
バルディさんが質問とは珍しい。
数日観察して何となくわかったけど、厳つい見た目通りに普段は余計なことを喋らない人みたいだからね。
ということは大事な話かな?
「この訓練は何のためにやってるんだ?言われたことを教えちゃいるが、今のままでも十分にこいつらは戦えると思うが。」
「あぁ。そーゆーことですか。もちろん働いて貰うためですよ。うちの仕事で死なれたら後味が悪いですからね。」
「仕事ったって・・竜種でも狩るつもりか?」
まぁ言いたいことはわかる。
現時点でAクラスの力を持ってるチームを鍛えても、その上にいるのは竜種くらいしかいないからね。
「いやいや、竜には困ってないんで。」
材料にして良い竜種なら欲しいけどね。
「じゃあなんだ?具体的に言ってくれりゃ、それに合わせた訓練もできるぞ?」
「なるほど・・まだ確定じゃないんですけどね・・。うちの店で迷宮を育てようかと。」
「はぁ!?」
あっ、やっぱりビックリしてる。
迷宮ってのは基本的に人類にとっては魔物と同じで退治するものだ。
例外的に育ててる迷宮はあるにせよ、それはあくまで例外だ。
街か、あるいは国規模の力でどうにか管理をしているに過ぎない。
「店でって・・マジで言ってんのか?国が許すとは思えないが・・」
「許可は取りましたよ。候補地も大体決まりました。」
「マジかよ・・」
ここ数日屋敷をあけてたのはそれが理由だ。
意外かもしれないが、国からの許可は簡単に貰えた。
大事に育てていた迷宮が退治されたばかりということもあって、国としては代わりとなるものがどうしても必要なのだ。
新しい迷宮を育てるのには時間と労力と、何よりも暴走を押さえ込む戦力が必要だ。
多くの竜種をペットにしているニートグループにはうってつけ、というか、現状でイゴイスで出来るのは俺だけじゃないかな?
利権とかでかなり揉めるかと思ったんだけど、即座に許可が下りたんだから国の焦りは相当な物なんだろう。
「それで、場所はどこだ?」
「それはもちろん、うちの領内です。」




