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両親の呵責

 

 カリーナを地下室に入れて2週間が経った。


 もちろんその間も鍛練は続けている。

 俺の『成長補正』のお陰で3人ともグングン成長してるけど、それだけでも無さそうだ。

 俺が最初に地下室に行った時から鍛練により真剣に取り組むようになったみたいだし、鍛練が遅れてるからカリーナを売るって言ったのが効いたのかもしれない。



 ちなみに俺はここ1週間は地下室に行ってない。

 少し静かになったから苦情を言いに行くことが無くなった。

 後は、カリーナを閉じ込めるだけじゃなく最近は手足を縄で縛ってあるのだ。

 暴れたのかと思ったけどオリンが言い淀んでたから、たぶん逃げようとしたんだと思う。


 まぁ悪いことをすれば日本人だって手錠で繋がれるんだし別にいいけど、手足を縛ったお陰で誰かがが部屋に入っても自分の身体を隠せなくなってしまったのだ。

 そのせいで俺が地下室に入った時の罵声がものすごく酷かった。

 オリンが鞭で叩いてもやめないし、地下室だから声が反響してかなり煩かった。

 まぁそれ以来地下室には行ってない。


 それでも最近は屋敷にカリーナの怒声が響かなくなってきたので、調教は上手くいってるのかと思って聞いてみたんだけど・・


「いや・・」

「・・ごめんなさい」

「無理だと思うよぉ」

 という返事が帰って来た。


 正直に言ってお手上げだ。

 よくライトノベルとかで、主人公がワガママなお嬢様を手懐けたりするシーンがあるけど、俺には無理だ。

 というか俺が見たライトノベルでは、主人公がお嬢様の言いなりになって仲良くなっていくのを『手懐けた』と表現していたけど、あれは手懐けられているだけだろう。

 現実にワガママで凄く強い有能だけどバカなお嬢様なんてどうやって手懐けたりするんだよ。

 こっちが言いなりになるか、恋か、それともお菓子で吊るか?


 あれ?

 お菓子?


 いけるかも


 そう思ったのでお菓子を持って地下室に行ってみた。


「ふざけないで変態!私の裸を見に来たんでしょ!」


 効かなかった。


 久々に地下室に来てわかったけど、地下室には弱いサイレントみたいな結界が張ってあった。

 それでカリーナの叫び声をあまり聞こえなくしていたのだ。


 折角なのでその結界に重ねてサイレントの結界を張っておいた。

 これでこの地下室を1歩でも出るとカリーナがどんなに叫んでいても何も聞こえないようになった。

 まぁ結界は一方通行にしてあるから外の音は中でも聞けるし、壁より内側に張ったから音が壁に反響することもない。

 これで外も中も過ごしやすくなったはずだ。



「ふむ・・ちょっと太ったか?」

「な、なんですって!」


 運動もしないで食べると寝るくらいしかやらないのでは、少しくらい太ってもおかしくはない。

 まぁ太ったと言っても地下室に入る前に戻ったくらいだと思うけどね。

 健康そうで何よりだ。


 叫ぶのもそれなりにカロリーを使うと思うんだけど、そんなに食べてるのかな?

 まぁいいけどね。

 こいつがどんなに食っても俺は食費で破産したりしないさ。


「出ていきなさい!それに勝手に入ってくるんじゃないわよ!ちょっと!聞いてるの!」

 もうこれだけ長くいると地下室を自分の部屋扱いだ。

 カリーナを閉じ込めてから元々あった物も運び出したから、家具も何も無いんだけどね。


「聞きたくないけど聞こえるよ。ここは俺の家だぞ。出ていくならお前だろ。」

「じゃあこの縄を解きなさいよ!・・ちょ、ちょっと!何見てんのよ!」


 なんてめんどくさい女だ。

 つーか、なんでこんなに元気なんだよ・・


「お前はしばらく黙ってろ。」


 俺はカリーナにサイレントの魔法をかけて静かにさせると、溜め息を吐きながら地下室を後にした。




「そうですか。制御不能とは・・」


 今日は久々に奴隷商が奴隷を連れて屋敷に来ている。

 もう商談は終わったから、試しにカリーナのことを聞いてみたのだ。


「でさ、やっぱり返品出来ないか?」

「いやいや!いつもお世話になっておりますし、ご迷惑をお掛けしたなら返金処理を致します!」


 金貨1枚返されても全く嬉しくないぞ。


「じゃあ金貨1枚払うから引き取ってくれよ。」

「いえいえ!それでは筋が通りません!どうか金貨2枚の返金で!どうか!」

「じゃあ3枚だ!」


 と、おかしなオークションを開催していると、部屋にメトラの妹のミリィが入ってきた。

 彼女も今は立派なメイドとしてメトラと一緒に働いてくれている。


 応接室にミリィが入ってくることはほとんどない。

 俺の斜め後ろでは突然入ってきたミリィを何事かとメトラが不思議そうな顔で見ている。


「旦那様。お話し中、失礼いたします。お客様がお越しになっておりますが。」

「それはそれは!お忙しいのに失礼致しました!私はこれで!」


 といって奴隷商が逃げ出した。

 まぁあの様子じゃ、いくら金を積んでもカリーナは引き取ってくれなそうだな。


「ミリィ。お客様の前で失礼でしょ?」

 メトラがミリィを咎める。

 まぁ確かに失礼だけど、奴隷商なんだから客じゃないと思うし、別に良いと思う。

 ミリィも話に割り込んだのは当然理由があるわけで、それを説明する。


「でも、カリーナの親が来たから。」

「カリーナの親が?」

「はい。本人がそう言ってますよ。」


 カリーナの親が何でうちに来るんだ?

 呼んだ覚えもないし、呼べる人も知らないぞ。

 ってドラゴンクロウの誰かなんだろうけどさ。


「会うよ。案内してくれ。」



 ミリィに案内された部屋は地下室に一番近い部屋だった。

 だから選んだのか、それとも奴隷の親を良い部屋に案内するのを躊躇ったのか。

 まぁ両方かな?



 部屋の中に入ると、そこでは4人の大人が俺のことを待っていた。

 4人ともかなり鍛えているようだ。

 気配もただ者ではない。

 まぁカリーナの家族ならおそらく竜人族だと思うし、能力が高いのも当然だ。


 結構若く見えるけど、おそらくソファに座った男女がカリーナの両親だろう。

 後ろの男2人は・・護衛?

 じゃないよな。

 友達か?


「始めまして。ロイと申します。」

「あぁ・・はい。俺は、バルディ。これは妻のローザだ・・です。」

「あぁ、無理しなくていいですよ?僕は貴族とは名ばかりで、ただの商人ですから」

「・・すまねぇな。俺とローザは一応カリーナの親だ。それと、後ろの二人は俺達の仲間だ。付いてくるって聞かなくてな。まぁ気にしないでくれ。・・それで、娘がここにいるって聞いてるんだが。」


 バルディは敬語をやめた途端に身体から力を抜いた。

 相当苦手みたいだな。


「いますよ。正直言って困ってます。」

「そうか。いや、申し訳ない。娘は、その・・どんな様子だ?」


 俺が状況を説明しようとしたところで部屋のドアがノックされる。


 部屋に入ってきたのはオリンだった。

 両親にはおそらく彼女が連絡したんだろう。

 オリンは部屋に入ると、カリーナの両親に駆け寄っていく。

「お父さん!お母さん!」


「・・は?」

 何だって?


「オリン。元気にしてた?」

「元気よ、お母さん。私のご主人はとっても優しいから大丈夫!」

 ローザさんとオリンは抱き合って感動の再会ムードに浸っている。

 バルディさんの両手が寂しそうに宙を泳いだのは、見なかったことにしよう。


 どうやらオリンとカリーナは家族・・というか姉妹だったらしい。

 もちろんオリンが姉だ。


 ドラゴンクロウについて流れてる噂の1つは正しかったわけだ。

 ちなみにメンバーは全員同じ小さな村の出身で、まぁ家族みたいなものらしい。


 ん?

 竜人族の村があるのか?

 その村って・・敵無しなんだろうな・・



 その後、オリンがドラゴンクロウの今までのことをみんなに説明した。


 俺も初めて聞いたけど、迷宮を討伐してしまったキッカケは罠だったようだ。

 迷宮内には様々な罠があるけど、イズナが転移系の罠に触れてしまったらしい。


 まぁ転移系の罠と言っても色々ある。

 基本的には迷宮の内外に限らずランダムに転移したり、仲間同士がバラバラになることもある危険な罠だ。

 中には他の大陸に転移した例もあるらしい。


 イズナが引っ掛かったのは近くにいるものがみんなでボス部屋に転移する、という単純なものだったけど、そこでカリーナが迷宮のボスを全力の一撃で倒してしまったのだ。

 自分達の足で進んだわけではないので迷宮のボスだとは知らなかったにせよ、不用意極まりない。


 死刑じゃないだけましで、奴隷にされても仕方ないと思う。

 しっかり育った迷宮で取れる様々な物のうち、食糧だけでも街を2つ3つ賄える量が取れるのだ。

 その価値は計り知れない。


 ちなみに、カリーナ達に大人しく死ねば良かったと言ってるのではない。

 倒さずにボス部屋を出れば良かったのだ。

 出入口はちゃんとあるし、倒すよりも多少は楽だろう。


 しかもバルディさんの話によると、ボスに必要以上のダメージを与えて倒すと迷宮が一気に崩壊して中にいる人が生き埋めになることもあるらしく、一撃で倒すなんて論外だそうだ。


 救いようがないね。


 まぁ迷宮のボスはなぶり殺しにされる、という悲しい運命はほっとくとして、今回討伐したのが食糧に片寄った迷宮じゃなかったのが救いかな?

 いや、職を失う人が大量にいるのに不謹慎か。



 その後から今日までの話を聞き終わったバルディさん達は明らかに怒っていた。

 カリーナとは違って静かな怒りだ。


「カリーナに・・合わせて貰えるか?」

「いいですよ。オリン、今は?」

「・・いつも通りよ。」


 叫んでるのか・・

 まぁすぐそこにいるんだけど、結界で聞こえないからね。


「こっちです。」


 俺は怒れるバルディさん達をカリーナのいる地下室に案内した。


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