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 おまけ

 千夜千夜叙事 エピソード、その後です


      

「ラス!」

 

 巴が呼ぶと、ラスがこちらを見た。


「なんでこんなところにいるの!」

「おまえを迎えに来た」

「……すごく目立っているんだけど」

「そうか?」


 当たり前だ。

 学校の正門前。

 戦車のような黒いハマーを横づけにして、金髪長身の男が寄りかかっていたら全校生徒の注目を浴びるに決まっている。

 担任に呼ばれて職員室にいた巴のもとへ、綾子と千波がすっ飛んできて教えてくれたのだ。


「もう終わりか?」

「うん」

「じゃ、乗れ」


 車のドアを開ける所作が憎らしいほど様になる。

 巴が助手席に乗り込むと、「ぎゃーっ」だの「羨ましいー」だの、「紹介しろ」だの、外野がうるさい。


「どこに行くの?」

「買い物」

「なんの?」

「指輪と宝冠」

 

 ラスがステアリングを切る。

 巴は言葉に詰まった。


「……エメラルドの?」

「そう」

 

 ちらりとこちらを見る。


「約束しただろ?」

 

 忘れたのか? とでも言いたげな眼だ。

 巴は無言でかぶりを振った。

 忘れるわけがない。

 いったいどれだけの永い時を待ったのか――


「ラス!」


 思わず抱きついた。


「ばかやろう、危ない!」

「大好き」


 言ったら、くしゃっと髪を撫ぜられた。


「知ってる」

「ラスは、私のこと好き?」

「何度も言っているだろうが」

「何度だって聴きたいの。ね、言ってよ」

「断る」

「なんでよ」

「なんでもだ」


 巴は横を向いた。内気な男は口が堅い。


「拗ねるなよ」

「拗ねてません」


 ラス。

 ラススヴィエート。

 ロシア語で『夜明け』を意味するという名前は彼にとても似合うと思う。


「トモエ」

「なによ」

「こっちを向け」

「いや」

「トモエ」


 その声に抗えない。

 不承不承、運転席を向く。

 と、いきなりキスされた。

 形のいい唇が甘く、一瞬だけどぎゅっと口に押しあてられて、言葉より明確に気持ちを告げられる。

 ラスがぶっきらぼうに言う。


「これで許せ」


 巴はかあっと赤くなりながら、それでも憎まれ口を叩いてしまう。


「仕方ないな。許してあげよう」

 

 だから幸せにして。

 ううん、違う。

 幸せになるのだ、今度こそ、二人で。

 永遠の愛を誓い合うのだ。

 この奇跡の惑星で。








                                   今度こそ、終幕


 ありがとうございました!

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