第2話「俺の大切なマチェーテ…」
ここは〇X県内の山間部を走る国道**号線、時刻は深夜2時半を少し回った頃合…
今、ハイビームで前方を照らしながら一台の20FTコンテナトラック がカーブの多い道路を走っていた。法定速度をギリギリ守ってはいたが、先を急いでいるような走り方だった。
運転席には40歳前後の中年男が一人座り、黙々と深夜輸送便を走らせていた。
「…ったく! 夜中に一人で運転してっと退屈でしょうがねえや… ラジオの音楽聞いてんのにも、いいかげん飽きて来たぜ。誰か話し相手が居ねえと眠くなってきやがる。かといって運転しながらスマホなんて出来ねえしよお。
助手の予定だった松田のバカが急に腹イタなんて起こしやがるから、俺一人で遠距離深夜輸送する羽目になっちまったじゃねえか…クソッ!
ふあぁ~… 夜の単調な運転が一番眠くていけねえや…」
そんな悪態交じりのボヤキを吐きながら長距離運送トラックの運転手、浜野が欠伸を噛み殺して深夜ラジオ局を替えようとチューニング用つまみに手を伸ばした時だった。歌の合間にニュースのコーナーとなり、男性アナウンサーが生真面目な声で読み上げるニュースを、浜野は運転しながら聴くともなしに聴いていた。
『本日、○X県○X市の大野木山スカイライン付近の林で、男女合わせて二名の遺体が発見されました。発見者は近隣に住む住人で、朝の散歩で現場付近を通りかかり偶然遺体を見つけたとの事です。
○X県警の公式発表によると、遺体は発見時すでに死後半日ほど経過しており、被害者は二名とも死因が頭部と首を鉈か斧のような幅広で肉厚の刃物で叩き切られた事による即死だった模様です。県警の発表では最近県内で発生中の連続殺人事件との関連性を念頭に近隣地域に検問を張ると共に容疑者の行方を捜索中との事です。』
そのニュースを最後にニュースのコーナーが終わり、次の歌が始まった。
「ふーん、大野木山スカイラインって言ったら、この先で俺が通る道路じゃねえか… おっかねえ事件が近くであったもんだなあ。まさか、逃亡中の犯人が出て来たりしねえよな…」
浜野は先ほどまで感じていた眠気が一瞬で吹き飛び、頭がシャキッとした。運転席のドリンクホルダーに置いてあったペットボトルを左手で取り、中に残っていた生温いお茶を一気に飲み干した。
その時だった!
「うわっ! 危ねえ!」
「ギギーッ! ギャギャギャッー!」
ヘッドライトのビームに照らされた前方道路上に、道路脇の林の中から突然何かが飛び出して来たのだ。
スピードを出していなかったため、浜野の踏み込んだ急ブレーキでコンテナトラックの車体は難無く停止し、飛び出して来たモノとの衝突は間一髪で免れたらしく、車体に感じられる衝撃は皆無だった。
「ふうう…危なかったぁ… 心臓が止まるかと思ったぜ… コンテナに積んだ荷物、大丈夫だろうな…? いったい、急に何が飛び出して来やがったんだ?」
浜野はエンジンは切らず、ヘッドライトもそのままにして懐中電灯を片手に運転席から路上に降りた。
そして、トラックの前方に回り込むと手にした懐中電灯で照らし出した車体と道路上を恐る恐る確認する。
やはり衝突は無かったのだろう、車体前部には何の損傷も見られず、前後の路上にも運行の妨げとなる危険物や生き物の死骸などは何も存在しなかった。
「まあ、当たる寸前に俺がトラックを止めたんだからな… そうだよ、コンテナの荷物を確認しなきゃ。」
浜野はコンテナの扉を開けて中の様子を確認して見たが、中の荷物は急ブレーキによる影響で少し位置がずれた程度で損害は無いようだった。
「ふう… とにかく、車も積み荷も被害が無くて安心したぜ。クソッ!余計な時間を喰っちまった。急いで出発だ。」
浜野は急いで運転席のドアを開けて乗り込もうとした。
「うわあっ! な、何だ、てめえは?」
自分が目にしたものに面食らった浜野が悲鳴に近い大声を上げた。誰もいない筈の助手席に一人の男が座っていたのだ。もちろん、浜野の見た事が無い男だった。
一瞬、心臓が止まりそうなほど驚いた浜野だったが、男に二本の脚が有るのを確認すると少し気が楽になった。驚かされた仕返しにと懐中電灯の光を男の顔に浴びせかけ、自分に悲鳴を上げさせた相手を怒鳴りつけた。
「お、お前! ど、どういうつもりだ! ひ、人のトラックに勝手に乗り込みやがって!」
それまでジッと前方を向いたままだった男は、右手をかざして懐中電灯の光から顔をかばいながら、自分を怒鳴り付けた浜野の方に顔を向けた。
「あのさ… 俺、困ってるんだ。行かなきゃいけない所があって…
でも、歩いてじゃ遠いから…この車に乗せてくれないかな?」
ボソボソした声で浜野の詰問に答えた男は30歳前後の年齢だろうか…?
浜野を見つめ返す顔は、街を歩いているだけですれ違う全ての女が振り返らざるを得ない様な彫りの深い端正な顔立ちをしているのだが、決して甘いマスクという感じではなく逆に野性的で謎めいた雰囲気を醸し出していた。
だが、その顔に浮かんだ表情は自分に向けられていてもトロンとして目の焦点がしっかりと合っていない感じがして、見つめられた浜野は何となく薄気味悪い印象を受けた。
それに加え、長距離運転を生業とする浜野自身にも何度も経験はあったが、長い間風呂に入ってないのか、男の身体からは耐え切れないほどの異臭が漂っていた。
座っているのでハッキリとは分からなかったが、男の体つきは175cmで80㎏と決して小柄ではない浜野より一回り以上も大柄で、細身ではあるが贅肉が全く無い引き締まったボクサーを連想させる筋肉質タイプの感じだった。
さすがに、自分より大柄で逞しい体つきをした正体不明の男を下手に怒らせるのは不味いと考えた浜野は、出来るだけ相手を刺激しないようにしゃべる事にした。
「わ、悪いけど、俺は急いでんだ。とにかく乗せてやるから道々、話を聞かせろや。」
謎の男を用心しながらも、浜野はロスした時間を取り戻すために早く運転を再開したかったのだ。
ただでさえ運送先への到着時間に遅れている現状で、こんな山中の道路で見ず知らずの男に関わって、いつまでも停車したままでいる訳にはいかないのだ。
仕方無く浜野は助手席に得体の知れない男を乗せたまま、予定通りの方角に向けてトラックの運転を再開した。
「あーっと、それじゃ…あんたはあれだ…ヒッチハイカーって訳か? 行き先が同じ方向なら、このまま途中まで乗せてやってもいい。いったい、どこまで行くつもりなんだい?」
浜野はトラックを走らせながら助手席に座る男に聞いてみた。
少し落ち着いてくると、浜野は男の向かう先が自分と同じ方面だったら途中まで乗せてやってもいいという気持ちになっていた。元来、この浜野という男は長所とも欠点とも言えるのだが、情にもろくおせっかい焼きなところが多分にあった。
真夜中にヒッチハイク出来る車を求めて、この寒い冬の山の中を一人で彷徨っていた男に同情を覚え始めていたのだ。
「とにかく、俺…南へ行きたいんだ。ずっとずっと南へ…」
男は話しながらも、やはり心ここにあらずと言った風情で、顔は浜野の方に向けてはいたが、あらぬ方をボンヤリと焦点の結ばぬ目で見つめるようにして答えた。
「とにかく南へって、そんな…漠然とした言い方じゃ、ちっとも分からねえよ。
でもなあ…残念だけど、この車は山を越えて日本海の方面まで行くんだよ。つまり、北の方へ向けて荷物を運んでる途中なんだ。
悪いけど俺のトラックは反対方向へ向かってて、お前さんの行きたい南へは行かねえんだ。
その代わり、この先のトラッカー連中御用達の深夜営業してる食堂で、南方面へ行くトラッカーを捜してくれるように食堂の大将に俺から頼んでやるよ。腹が減ってんなら、そこで飯も食えばいいしな。
俺はさっき食ったばかりだし急いでっから一緒には探してやれねえけど、食堂で飯食ってる連中は、みんな荒っぽいが気のいい連中だから安心していいぜ。
それからな…言いにくいけんど、そこでシャワーも浴びさせてもらえや、兄ちゃんよ。お前さん、結構匂ってるぜ…」
浜野は最後の言葉を、実際に顔をしかめて男に言ってやった。
「ああ…そうするよ。あんた、本当に優しい人だな…」
男は自分の頭に両手を当てがいながら言った。気分でも悪いのか、だんだんと男の上体が自分の膝に向けて折り曲げられていく。
「なあに、困ったときはお互い様よ。俺もお前さんと話してたら眠気を感じないですんでるんだから、気にすんな。
ん…? おい、兄ちゃん…頭を両手で抱えてどうした? 痛むのか…? なあ、大丈夫か?」
浜野は運転しながら助手席に座る男の様子を横目で見て、心配になって聞いた。
「い、痛い… 頭が…痛い…」
男は両手で頭を抱え込み、前のめりになって苦しそうに言った。
「おい、しっかりしろ! 何か、いつも持ってる薬とか無えのか? おい、兄ちゃん!」
見かねた浜野はハザードランプを付け、路肩に車を寄せて停車した。
「リュ、リュックの中…薬…」
男はそう言って、頭を抱えた両腕の肘を自分の両膝について上体を丸めるように屈めたまま苦しそうに言った。大きく頑丈そうな身体が小刻みに震えている。
「このリュックだな? 開けるけど、いいな?」
念のため男に断ってから、浜野は助手席の足元に置いてあったリュックを取り上げた。男からの返事は無かった。
「うっ! 何だ、こりゃあ?」
男のリュックを持ち上げた浜野は顔をしかめた。男から発していたと思った異臭の原因は、このリュックが大勢を占めていたようだった。
「うぅ…くせえな…鼻が曲がっちまう! 何なんだよ、この物凄い匂いは…?」
浜野が付けたルームライトの光の中、濃い赤色だと思っていたリュックは、元々は薄く明るい色彩のピンク色だった全体に、あとから汚らしい液体か何かをぶちまけたみたいに、汚れで赤黒く染まった感じだった。匂いは鼻を衝く腐敗臭と共に鉄サビのような匂いも混ざっている。
「お…おい、これ…?」
浜野はリュックのジッパーを下ろし、リュックから突き出していた木製の柄のような取っ手を指先で掴んで引っ張り出した。
中から現れたそれは、幅広で肉厚の刃を持った大ぶりの鉈…というより刃が奇妙な形状をした山刀とでもいうべき代物だった。刃の部分の長さだけで50cmはあろうかという、見るだけで恐ろしい威力が想像される刃物だと浜野は思った。
その山刀は持った重さからして間違いなく本物の様だが、その刃の表面全体に赤黒いねっとりとした粘液が付着していたが、まだ乾き切ってはいなかった…
まるで…生き物を捌いた後に、手入れもせずに放ったらかしにしてある包丁のようだ…と、浜野は手に持った山刀を見て思った。猟で捕らえた獲物を解体するための刃物だろうか?
恐ろしい想像が頭に浮かんだ浜野は、山刀をルームライトにかざし、赤黒く汚れた刃の表面をさらに詳細に確認した。
するとそこには、真っすぐに伸ばせば40cmほどもあると思われる人間の毛髪に似た毛が数本絡まって付着し、その根元には赤黒い肉片状の物までこびり付いていた。
「お、おい… これって…」
浜野は突然、男を乗せる前にラジオのニュースで言っていた、昨日大野木山スカイライン付近で起こったという男女二人の猟奇殺害事件を思い出した。
たしか…被害者は二人とも、頭と首を鉈か斧のような肉厚の刃物で叩き切られていたという…
「う、うわあっ!」
浜野は手に持った山刀を助手席の足元に放った。
それまで頭を両手で抱えて助手席に丸くなって蹲っていた男が、ゆっくりと上体を起こした。その右手にはたった今、浜野が放り投げた山刀が握られていた…
「ん…? これかい? これは、僕の山刀だよ。僕の大事なものなんだから、投げ捨てたりしたらダメじゃないか。だって、刃物は危ないからね…」
そう言って男は、さも大切な物であるかの様にマチェーテと呼んだ刃物をルームライトにかざした。
「この曲線… きれいな刃の形だろ…? これ、お祖父ちゃんの形見なんだ。」
うっとりとした目で、男はマチェーテの刃を見つめている。
「お、おい…兄ちゃん、それって…ひ、ひょっとして…お、大野木山で起きた… だ、男女…さ、殺人事件の…」
浜野は男の持つマチェーテと、その刃全体に付着している汚れから、自分の隣に座っている男が猟奇殺人事件の犯人である事を覚った。
だが、すぐにでも運転席のドアを開けて逃げ出したい気持ちと裏腹に、浜野の身体は蛇に睨まれた蛙の様に、金縛り状態となって動く事が出来ないのだった。
「あっ…! マチェーテが汚れてる。そっか… 昨日、使ったときに汚れたままだったんだ。大変だ、手入れしなきゃサビちゃう…」
そう言ったかと思うと、それまでマチェーテをうっとりと見つめていた男は浜野の見ている前で突然、犠牲者の血と脂で汚れ表面に髪の毛や肉片の付着した刃を… 何という事か、突き出した舌で舐め回し始めたのだ。
男は舐める事で自分の唾液で浮き上がらせた汚れを、舌で綺麗に拭い取ろうとしているみたいだった。
「う、うっぷ! ウゲエェーッ!」
目の前で男が取る行動のあまりの気持ち悪さに、金縛りに陥って動けなかった浜野の身体から呪縛が突然解けたかと思うと、運転席の自分の足元に晩飯に食堂で食った『スタミナ焼肉定食』を全て吐き戻した。汚いなどと言う余裕は彼には微塵も無かった。
すぐにトラックの運転席はヒッチハイカーの身体とマチェーテから漂ってくる体臭と死臭、それに浜野の嘔吐物の匂いが充満した。
「うわ… あんた、ばっちぃじゃないか。あんたのゲロが俺のズボンにかかっちゃったよ…どうしてくれるんだよ…?」
ヒッチハイカーは、お仕置きだとでも言う様に右手に持ったマチェーテの鋭く尖った先端を浜野に向けて真っ直ぐに突き出した。
「ひっ!」
グシュッ! ズブブ…
一瞬だけ上がった浜野の悲鳴を打ち消すような胸の悪くなる嫌な音を発して、マチェーテの50㎝もあろうかという鋭い刃の先端が、浜野の額に吸い込まれるようにして根元まで埋まった。マチェーテの握り部分が、まるで一本の角が生えているかの様に浜野の額から突き出ていた。
「あっ…しまった。 また親切にしてくれた運転手さんを壊しちゃった… 何やってんだろう、俺…」
ヒッチハイカーの男は、せっかく親切に自分の事を考えてくれていたトラック運転手の浜野を、マチェーテの一突きで瞬時に殺してしまった事を後悔した。
しかし、後の祭りで… 即死した浜野の身体は、目の前でピクピクと痙攣するのみで二度と動くことは無かった。
「また乗せてくれる新しい車を探さなきゃ… でも、その前に腹が減ったなあ…何か食い物無いかな…?」
この男に罪悪感や後悔の念といった感情は無いのだろうか…? ヒッチハイカーは自分をトラックに乗せたがために犠牲となり息絶えた浜野の遺体には、すでに興味を失ったのか見向きもせず、食べ物を求めて運転席後部にある仮眠用の簡易ベッドルームを漁り始めた。
そして探し当てたお茶やジュースを飲み、お菓子を片っ端から食い漁った。見つけたカップラーメンも生のままバリバリと齧った。
彼は酒やタバコ等には見向きもせず、見つけた食べ物という食べ物を手当たり次第に口にし、残りは以前に犠牲者から奪い赤黒く異臭のするリュックサックに入るだけ押し込んだ。
「それじゃあ、また乗せてくれる親切な車を探しに行こうかな… おっと、忘れ物をするとこだった… これを忘れたら大変だ…」
そう言ったヒッチハイカーの男は、自分が手に掛けた浜野の遺体に近付くと額から突き出していたマチェーテの柄を握り、無造作に引き抜こうとした。 しかし、死体の首がガクガクして抜き難かったため、頑丈そうな軍用ブーツを履いたままの右足で浜野の顔を力強く踏んで押さえ付けると、胸の悪くなる様な音とともにマチェーテを頭から抜き取った。
ガボっ!
吐き気を覚える嫌らしい音をさせてマチェーテの刃は浜野の頭から抜けた。
額にパックリと開いた大きな裂け目から、血と脳漿の混ざった気味の悪い色をした液体がドロリと流れ出た。
「ああぁ… 綺麗だよ… 君の血… 俺…綺麗な血を見ると、勃起するんだ。ほら…ね。」
いつの間にか男のズボンのチャックが開かれ、長さが40~50cmはあろうかという、ドス黒い色をした巨大なペニスがそそり立っていた。すでにペニスの先端からは透明で粘液質な液体が溢れ出し、根元まで伝い落ちていた。
そして、ヒッチハイカーの男は何を思ったのか、すでに息を引き取った浜野の額の傷口に右手を伸ばすと、血と脳漿の混ざった液体を指先ですくい取った。右手全体に血と脳漿をたっぷりと塗り付けた男は、その右手で自分の屹立した巨大なペニスを握りしめて、ゆっくりと上下にしごき始めた。
「あああ… ぬるぬるして気持ちいい…」
次第に冷たくなっていく浜野の遺体を横にして、その血をローション代わりにして自慰を始めた男はギシギシと巨大なコンテナトラックが揺れるほどの勢いで夢中になって行為を続け、やがて絶頂を迎えた男は呻き声と共に大量の精液を勢いよく放出した。
「ビュッ! ビュルルッ!」
放出された男のおびただしい量の白い精液が、運転席のフロントガラスの内側にへばり付いた。そして重力により白い糸を引きながらドロリと垂れ落ちていった。
「ふうぅ… スッキリしたな。」
男は手に付着した精液を浜野の着ている服で拭うと、傍に置いてあったマチェーテを拾い上げて刃をジッと見つめた。
「あーあ、また汚れちゃったよ…俺の大切なマチェーテ…」
そうつぶやいたヒッチハイカーは、今度は舐めるのではなく手に着いた精液と同様にして、遺体となった浜野の着ている服で丁寧にマチェーテの刃を拭った。
「うん、これで綺麗になった! 今回の切れ味も悪くなかったしね。」
ヒッチハイカーは刃の状態に納得したのか、マチェーテを愛用の赤黒く汚れたリュックサックに無造作に放り込むと背中に背負った。
「じゃあね、親切なおにいさん… 少しの間だったけど、俺を乗せてくれてありがとう。」
ヒッチハイカーは、浜野の遺体に語り掛けるようにそうつぶやくと、トラックの助手席側のドアを勢いよく開けて路上に飛び降りた。
「あのカップラーメン、美味かったなあ… また食べたいや。」
ヒッチハイカーは、コンテナトラックのハザードランプの黄色く点滅する光を全身に浴びながら道路を離れ、再び林の中の暗闇へと姿を消して行った。
彼はまた、自分を乗せてくれる親切な車を求めて木枯らしの吹き荒れる寒い山中を彷徨い歩くのか…?
そして彼は…
無益な殺戮を繰り返しながら、どこへ行こうとしているのだろうか?




