表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/52

第四十七話






「それでは米軍は次に来るのは沖縄と?」

「大本営並びに聯合艦隊司令部もそのように考えています」


 12月8日、最高戦争指導会議にて近藤と海上護衛総隊の野村は特別に呼ばれ出席していた。


「フィリピンはこれ以上攻めないと?」

「フィリピンは確証はありません。フィリピンに固執していたマッカーサーは既に亡く、フィリピンの地を確保しているという認識を米国民に与えたいままレイテ島を陣取る可能性もゼロではありません」


 小磯総理の質問に近藤はそう答える。近藤の発信に同じく参加している南方軍総司令官の寺内元帥も頷いている。


「万が一、万が一だ。フィリピンを取られた場合、南方との航路が途絶える事になる。内地の備蓄はどうなっているか?」


 小磯の言葉に野村大将が椅子から立ち上がる。


「燃料の備蓄に関しては海軍が護衛を出してくれた事も大きく影響し備蓄で1400万キロリットル、陸軍も備蓄で950万キロリットル、民生の備蓄で600万キロリットルの備蓄があります。おかげで海軍は約3年、陸軍も約2年は全力で戦えます」

「そんなにもあるのかね?」

「はい。海上護衛が上手くいっているおかげであります」


 昭和17年3月から実施された南方から内地への還送は上手くいっていた。開戦前から戦時標準船を整備していた事で開戦時には各標準船が5〜10隻は就役、運航されていた。

 海上護衛総隊は当初から大規模船団護衛を採用しており特に南方航路には護衛空母1〜2隻、護衛巡洋艦2〜4隻、護衛艦10隻以上、海防艦12隻、3個航空隊(901空等対潜航空隊)の2個護衛艦隊を投入していた。

 更に海軍から第三十一戦隊を期間限定で借用していたのも後押ししていた。海上護衛総隊は第三十一戦隊を南方航路の護衛に充て、大量の輸送船団を往復させたのだ。

 特にヒ船団については多い時は一回の船団にタンカー32隻、貨物船22隻が護衛されたりする程だった。そのおかげもあったのか内地で空になっていた燃料タンクに重油や石油等を補充する事に成功していたのである。


「ですが、ギリギリまでは海上輸送を行い備蓄に務める所存です」

「分かりました。輸送の方は宜しくお願いします」


 野村大将の言葉は小磯は頭を下げるのである。


「沖縄が戦場になると……住民の避難だが……」

「北部に移動してもらいましょう。今から内地に避難させるのは危険でしょう。良くて児童達を九州等に避難させるのが手一杯です」

「沖縄に増援を送る輸送船団に児童や年寄りを乗せて内地に避難させるしかありませんな」


 沖縄は戦力の増援中であった。史実と同じく第32軍が1944年3月に創設されていた。この頃、最精鋭師団である第九師団が台湾に移動しており第32軍は史実と同じく3個師団に5個独立混成旅団を揃えていたが戦力増強が決定され大陸から満州に撤退していた支那派遣軍から第61師団、第64師団、3個独立混成旅団、戦車第13連隊、海軍特別陸戦隊(3個大隊)が増援として沖縄に派遣される事になっていた。

 その増援には第32軍も驚愕していたが内地が沖縄を守ろうとする気合があると八原大佐らはそう判断していた。また、徳之島と奄美大島に陸海軍の航空基地を拡張していたりしており航空戦力のカバーも可能とするようにしていた。


「分かりました、両軍とも宜しくお願いします。沖縄を死守出来れば停戦の道も開けるでしょう」


 小磯はそう告げる。陸軍も此処に至り勝てるとは思ってもいない。せめて米軍に甚大な被害を与えれば停戦が出来る可能性が高いと判断はしていた。(なお、ルーズベルト等はそう思っていない)







「大丈夫かノブ?」

「……疲れたから膝を貸してくれ」

「あぁ……構わない」


 2000過ぎに自宅へ戻った近藤は取り敢えずメシより先にハンナの膝を借りたのである。なお、次はグレイスらしい。


「戦局は厳しいのか?」

「ん? んぅ……次は沖縄だろうな」

「沖縄……」

「成る程。ソ連の動向や大陸の動きを監視するなら沖縄が一番だな」


 近藤の言葉にラム酒を飲んでいたグレイスが納得するように頷く。


「あぁ、沖縄が取られたら次は確実に本土だ。マリアナ諸島からB-29を飛ばすより沖縄から飛ばした方が大陸に睨みを効かせる事も出来る。だからこそ、此処でケリをつける必要がある」

「でしょうね。そうしないと……日本も持たないわね」


 お茶を飲んでいた零夢はそう呟く。日本も一杯一杯なのは国民も理解はしていた。まだ、満州からの糧食(モロコシや大豆等)が可能であるからこそギリギリの線だったのだ。都市部も配給はまだ大丈夫なものの、いつ少なるかはまだ不透明であった。


「だが大丈夫だ。ノブがいるからな」

「そうだぞ。余の伴侶であるノッブがいるからな!!」

「旦那が聯合艦隊司令長官なら大丈夫よ」

「……お前らなぁ……」


 笑う三人に近藤も苦笑するしかなかった。近藤も三人が励ましてくれてるのは理解していたからこそ近藤もやる気を出すのである。


「いよっし、元気100倍。次は子ども達と遊ぶかな」

「残念、もう寝たぞ」

「あらららっ」


 意気込み近藤だったがグレイスの言葉に転けるのであった。

 翌年(1945年)1月5日、日本海軍は燃料の備蓄は十分だったがそれでもいつ南方航路が遮断されても良いようにと南方からの資源輸送を目的とした『南号作戦』を発令させた。未だにレイテ島には米軍が居座り続けていたが陸軍は元より米海軍の空母は護衛空母を主力としており肝心の正規空母はウルシー環礁にて4〜5隻がトラック諸島から発進した『彩雲』にて確認されており動いていないのと判断されていた。その為の発令であったのだ。

 なお、海上護衛総隊は護衛巡洋艦『香取』を旗艦にした第一護衛艦隊と同じく護衛巡洋艦『香椎』を旗艦にした第二護衛艦隊の2個護衛艦隊を『南号作戦』に抽出する程の入れ込みである。また、護衛するタンカーは合計で72隻であり全て航海速力が12ノット〜16ノットで構成された高速タンカーであり他にも加入する貨物船等52隻も生ゴムや錫、コメ等を積載した貨物船も上記で航海可能な高速船であった。



 第一護衛艦隊

 司令長官 岸福治中将

 独立旗艦『香取』

 第101戦隊

 『対馬』『大東』『鵜来』『日振』『第23号』『第27号』『第51号』

 第102戦隊

 『屋代』『昭南』『久米』『稲木』『第2号』『第33号』『第34号』『第35号』

 第103戦隊

 『粟国』『宇久』『羽節』『竹生』『崎戸』『第18号』『第25号』『第60号』『第67号』

 第一護衛空母戦隊

 『大鷹』

 【零戦12機 九七式艦攻12機】

 『海鷹』

 【零戦12機 九七式艦攻12機】



 第二護衛艦隊

 司令長官 渋谷紫郎少将

 独立旗艦『香椎』

 第104戦隊

 『沖縄』『深江』『天草』『満珠』『干珠』『笠戸』『隠岐』

 第105戦隊

 『三宅』『金輪』『高根』『久賀』『志賀』『伊王』『第9号』

 第106戦隊

 『第15号』『第20号』『第22号』『第26号』『第29号』『第40号』『第41号』

 第二護衛空母戦隊

 『雲鷹』

 【零戦12機 九七式艦攻12機】

 『冲鷹』

 【零戦12機 九七式艦攻12機】



 また、海軍も『五十鈴』らの第三十一戦隊を投入しており聯合艦隊の本気度も違っていたのである。

 他にも海上輸送支援の為にエンガノ岬沖海戦には参加していない『大鳳』以下の機動部隊が台湾の基隆に展開していた。

 なお、米海軍も潜水艦等からの通報で大規模輸送船団の兆候を掴んではいたが出撃する事はなかった。


「ニミッツ!?」

「……ハルゼー。君が一番良く知っているのではないかね?」

「ッ」


 オアフ島太平洋艦隊司令部に出撃中止の報に怒鳴り込んできたハルゼー大将にニミッツ長官はジロリと睨み、ハルゼーは思わず凄んでしまう。


「……先のフィリピン戦で機動部隊に予想していた損害は無い……しかし、空母が無事でもベテランパイロットはいないのだ!!」

「………………」


 ニミッツの叫びにハルゼーは何も言えなかった。エンガノ岬沖海戦でハルゼーの機動部隊は囮である小沢中将の機動部隊を攻撃したものの、待ち構えていた『烈風』や零戦隊に阻まれ『天城』以下の空母を大破させるに精一杯だった。

 しかも未帰還機が大量に発生し小沢中将の機動部隊がハルゼー機動部隊の攻撃圏内から離脱した時に纏めた被害報告では戦闘機196機、艦爆179機、艦攻146機が未帰還となっている。

 厄介なのはこれが『小沢中将の機動部隊での被害』であり宇垣中将らの第一遊撃部隊を攻撃した時も未帰還機が多数存在しており報告では五波の攻撃で未帰還は戦闘機96機、艦爆192機、艦攻139機となっており事実上、ハルゼーの第三艦隊は航空戦力を喪失したに等しかったのである。

 しかしながらパイロットは補充されるも補充されたのは航空クラスを卒業したばかりのヒヨコ達であり直ぐに攻撃に向かうだけの技量を存在していなかったのである。ニミッツとしてはハルゼーを無期限の閑職に追い込みたかったがハルゼーは兵士達から人気はあったのでそれは出来ず、代わりに盛大な愚痴を数時間も言ってハルゼーの思考を停止させたりしている。


「今、鍛えているパイロットがモノになるのは早くても3月の下旬だ。その頃には『アイスバーグ作戦』も発令される。良いかハルゼー? それまでは動くな!! これは厳命だ!!」

「……サー……」


 マジギレのニミッツ長官には流石のハルゼーも頷くしかなかったのである。






御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
アメリカ側も人材面に悩まされているか・・・ベテランを大量に落としていなければ、どうなってた事やら・・・
無尽蔵の物量が自慢のアメリカでも、流石に経験値が必要な人材までは工場で量産はできませんからね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ