NNN臨時放送
「ねえねえみっちゃん、NNN臨時放送の噂聞いた?」
「なにそれ」
「怖い話」
「聞きたくない」
「あのね、昔ネットで話題になった都市伝説なんだって!深夜、国営放送の終了後に突然カラーテロップが消えるの!それで、クラシックの音楽と人の名前がスタッフロールみたいに流れるの。その流れた人の名前はね、明日死ぬ人の名前なんだって」
聞きたくないと言ったろうに、まーちゃんたら。
「だから深夜はテレビをつけちゃダメだからね!」
「つけないよ」
本当にまーちゃんったら、困った子。
深夜、目が覚めてしまった。
喉が渇いたので一階に降りて、リビングを抜けて台所に行く。
冷蔵庫から麦茶を出して飲んだ。
喉が潤って満足して、リビングを通り抜けて部屋に戻ろうとした時。
突如として、テレビの電源が入った。
おかしい、私はなにもしていないのに。
そしてテレビからはクラシックの音楽が流れ出す。
スタッフロールみたいに色々な人の名前が流れる。
私の名前が、最後にあった。
『以上、明日の訃報でした。皆様のご冥福をお祈りします』
…私、明日死ぬの?
怖くて震える。
テレビは勝手に消えた。
「ゆーちゃん、怖いぃ………」
ゆーちゃんに助けを求める。
すると、優しい声が聞こえた。
「みっちゃん、目を瞑って」
目を閉じる。
「はい、こーして、こーして、えーんがちょっ」
ゆーちゃんは私の手を取って、私の指で輪を作り、その輪を自分で切った。
「はい、えん切った!これで浄化できたよ」
「大丈夫?」
「うん、もう大丈夫。目も開けていいよ」
目を開ける。
ゆーちゃんの姿はなく、けれど背中に優しい気配を感じた。
結局、あのえんがちょとかいうのにどんな効果があったかはわからないが私は今日も生きている。
この間怪我するスレスレの事故に遭いそうにはなったけど、それもなんとか避けられた。
具体的に言うと暴走車に轢かれそうになったのだが、突然後ろから引っ張られて間一髪。
その時後ろを振り返っても誰もいなかったので、ゆーちゃんだろうなと思う。
「ゆーちゃん、今回もありがとう」
ゆーちゃんに今週もまた献花する。
背後に温かな気配を感じる。
なんだか最近、ゆーちゃんの気配がより濃く、そしてより温かくて優しくなってきた気がする。
「ゆーちゃん、大好きだよ」
背中の気配が揺れた。
ゆーちゃんはお礼や愛情表現が大好きらしい。
今後も積極的に感謝や愛情表現をする所存。
まあ…怖い目にはもう遭いたくないので、次はそれ以外でお礼を言いたいな。