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最終話 狂人の最期

短いです(書くことがありませんでした)

 彼女が精霊と聖女の関係がないと偽ったのは、自分が精霊と話せることが知られたとき、自分が聖女であると悟られないため。彼女は自分が聖女であることによってサミュエルが被る害を考え、発覚を避けていた。



 彼女が自身の親友、ミリュエリアス、ナーシェノ、ネルアイミーと交流を絶ったのは、自身の断罪で彼女たちまで罰が及ばないようにするため。結果的にそれは逆効果で、彼女たちを壊してしまったが。



 彼女が目を覚ました時、精霊がうるさいぐらいに騒いでいた。

「精霊王が傷つけられた!」

「いっぱい死んだ! いっぱい死んだ!」

「報復だ! 復讐だ!」

 これはいけないと思い、テーベは着替えることも忘れて精霊の祠へと向かう。その混乱した頭で手記を記していたのは、彼女は気付いていなかった。


 祠に到着して見たのは、大精霊がその左腕を失くした姿。

 それは自分が罰を受ける程度で到底済まされないということを、テーベは肌で感じ取っていた。

「罰はどう受ければよろしいでしょうか」

 ただ平伏し、懇願する。待つだけの時間がテーベにはひどく長く感じられた。

 しばらくして、大精霊の低い声が聞こえてくる。

「命だ。貴様の命を貰う」

「それだけで、良いのでしょうか?」

「お前の魂が新たな場所へ行く事はない。ずっと我らに囚われ、弄ばれ続けるのだ」

 それすなわち、永遠に罰を受け続けろということに他ならなかった。

 だが、それは根本的な解決にはならない。この場を凌げたとしても、次に同じようなことが起きれば、また誰かが死んでしまう。テーベはそれを避けたかった。

 考えを巡らせていると、一つ頭に妙案が浮かぶ。

「大精霊さま。私の聖女の権能を、一部アネスさんに移すことはできますでしょうか」

 精霊を見ることができ、話すことができる力を与えれば、彼女が精霊を傷つけることは無くなるはず。

 そう考えた彼女の提案は受け入れられ、魂を奪われる寸前に移譲することで話がまとまった。


 全ての権能を渡さないのには、彼女なりの理由があった。

 聖女の魔力は大きすぎるというのもその一因だ。膨大な魔力は訓練を受けなければ暴走し、垂れ流すだけで害を与える可能性がある。

 だが、それ以上に彼女が危険視していたのは、人の心を惑わす能力である。彼女がその能力を意図的に使うことはなかったが、押さえきれずに流れ出している部分だけでも、彼女の提案を断ることはできないという思考に追いやられる。しかもその考えが当然だと思ってしまうのだから、性質(たち)が悪い。

 故に彼女は自ら何かを望むということがなかったのだが、婚約破棄の件だけは国王夫妻へ頼み込みに行った。その際にも何とか抑えつけようとしたのだが、少しばかり影響してしまったようだった。

 また、一度だけその力の制御に失敗したとき、その茶会にいた面々が彼女の信者じみた集団になってしまった。ゼノボルレア・トマンソム令嬢などがその一人である。

 テーベでさえその能力を御しきれなかったというのに、いきなりその力を与えられたアネスが制御などできるわけがない。そう考えた彼女はアネスへ移譲する能力を見て話すだけの力へ限定した。


 そしてテーベ=ティヴァインは、死亡した。



 彼女の意識は途切れてはいなかった。精霊に弄ばれながらも、まるでこの地の神になったかのように、地上の全てを視ることができた。

 だからこそ、彼女は自分の幾つもの間違いに気が付くことができた。

 親友たちの末路、サミュエルが望んでいたこと。

 自分がどれだけ馬鹿なことをしていたのかようやく理解することが出来たのである。


 そして彼女はひどく後悔し、自己嫌悪に至り、生きていた頃よりずっとずっと深く狂っていく。

 その瞳の中に、確かな炎を滾らせながら。

最後までお読み頂きありがとうございました。

続きがありそうな終わり方ですけれど、その予定はありません。

百合か純ファンタジーを書こうとプロットを練っている最中ですので、またご縁があれば。

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