第1話 魔人の溺愛
召喚術科の地下実技講堂に、二十人ほどの生徒が集まっていた。
床には巨大な召喚陣が刻まれている。生徒たちは陣を囲むように並べられた椅子についていた。今日の課題は召喚獣の喚び出しだった。
喚び出した獣と契約を結んで初めて合格となる。一人前の召喚術師になるための最初の関門で、これに通らなければ二年へは上がれない。
「それでは最後に、リスタース」
シィミア・リスタースは膝の上の教本を閉じて立ち上がった。
後方で誰かが言った。
「リスタースって、あの」
「妹のほうだよ」
「ああ」
その「ああ」の中身は聞かなくても分かる。分かったところで、陣まで歩く邪魔にはならなかった。
陣の中央は思っていたより広い。四方から視線が集まる。
シィミアは息を吸って、詠唱を始めた。
二節目で喉が詰まった。詠唱は魔力を通しながら唱えるもので、通す量を間違えると声のほうが先に潰れる。一度切って、息を吸い直した。
「なにあれ」
優等生のヒサーラの声だった。抑えていない。
「詠唱で噛むの、はじめて見たかも」
笑い声が上がる。ヒサーラの取り巻きのカナンとマルネが真っ先に追随し、そこから列の後ろまで広がった。
教師は名簿を見たまま何も言わない。
「あれで死霊術科のメイミア先輩と姉妹なんでしょ」
「嘘でしょ」
「信じられない」
「静かにしろ」
教師がようやく言った。
笑い声は止まったが、止まる前に一巡した。
シィミアは陣の中央で息を整えた。
自分の番を終えた人間が、他人の詠唱の途切れ方を数えている。そんな暇があるなら、自分の術式を見直せばいい。
ヒサーラの召喚獣は立派だった。
立派な獣を喚べる人間が、他人の喉の潰れ方を数えて笑っている。
――暇なのだろう。
ただし、笑われた中身のほうは正しい。
魔力量は学年で下から数えたほうが早く、実技は毎回時間切れになる。姉と比べるまでもない。
そこは悔しかった。
あの連中がどれだけ暇でも、自分の魔力が足りない事実は動かない。向こうの言い分が正しいままでいるのが我慢ならなかった。
――なんとかしてやる。
召喚の神の采配、と術者たちは言う。喚ばれる獣は、その者に最も良いものを与える相手が選ばれる。契約がうまくいかなかったとしても、それすら本人のためになっているはずだ、と。出来の悪い生徒を慰めるときに、教師がよく口にする言葉だった。
慰めなら要らない。来るものが何であっても、自分で使いこなしてみせる。
魔力が足りないなら足りないなりにやるしかないのだ。
シィミアは顎を上げ、最後の一節を唱えた。
しかし、来るはずの光が来ない。
代わりに陣が黒く沈んだ。
床が抜けたように見えて、シィミアは半歩下がった。冷たいものが足首を撫でていく。灯火がひとつ、不自然に揺れる。
笑い声が消えた。
黒の底から手が出た。
全身を漆黒の装束で包んだ人型の召喚獣が、ゆっくりと立ち上がる。背が高い。裾が床を引きずる音だけが講堂に響いた。装束の胸には、銀糸で紋が縫い取られている。横に長い環を、一本の棘が上から下へ貫いていた。見ようによっては、縦に裂けた瞳を持つ目にも見えた。
誰も動かない。前列の生徒が椅子ごと後ろへ体を引いた。
人型が顔を上げた。目だけが装束の隙間から覗いている。
「――久しぶりの人間界の空気だ」
声は低く、講堂の壁で硬く跳ねた。
「オレ様を喚んだのはどいつだ」
視線が教壇へ向かう。
教師が口を開いたが、言葉は出てこなかった。名簿を握る手が白い。
「そこの老いぼれか。違うな。この程度の術で喚べる腕ではない」
誰も答えない。
人型が一歩踏み出す。床が軋んだ。
「聞いている。誰が喚んだ」
「わたし」
シィミアは片手を挙げた。
人型が止まった。
首だけをこちらへ向ける。
鋭い目が、シィミアの頭のてっぺんから足元まで往復した。
――こいつが。
術者としては話にならない。
魔力量はこの場にいる者の中でも下から数えたほうが早い。今も陣の上で足元が覚束ない。この娘に、数百年の隔たりを越えて自分を引き当てる術が組めるはずがなかった。
だが、娘は目を逸らさない。
値踏みされていることを承知した上で、それがどうしたという顔で立っている。
なぜ喚べた。
答えは出ない。
出ないが、この娘が喚んだことは動かない。
仕えるかどうかを決めるのはオレ様のほうだ。応じねば、元いた場所へ帰るだけだ。
――だが。
喚べたという一点だけは、他の誰にもできなかったことだ。
ならば次に考えるべきは連携だ。
召喚獣の力は、術者へ向ける情の深さに比例して増す。膂力も、術の出力も、傷の塞がる速さも、一様に上がる。
好意と呼べる程度で二割から三割。古い時代に幾度も検証された数字だ。
その先の段については記録がない。正確な数字を測っていなかっただけで、好意により増していくという記述はあった。
逆に言えば、情のない召喚獣は最初から二割を捨てて戦うことになる。
合理的でない。
自分の内側へ術を向けた。
認識の一部を掴んで、向きを変え、固定する。
装束の隙間から光が漏れた。輪郭に沿って線が走り、胸の中心へ収束して消える。床の陣が呼応して、一度だけ脈打った。
教師が息を呑んだ。
光が引いたとき、人型はすでに顔を上げていた。
焦げ茶色の髪を二本に編んだおさげが肩の上で揺れている。娘は顎を上げたまま、まだこちらを見ていた。
――可愛いな。
かくして認識は捻じ曲がり、先ほどの侮りは好意として上書きされた。
人型は頭部の覆いへ手をかけた。引き下ろす。
長い黒髪が肩へ落ちた。
現れたのは、若い男の顔だった。
鋭い目つきはそのままだった。だが、通った鼻筋と薄い唇、白い肌、伏せれば影を落とすほど長い睫毛まで、不思議なほど釣り合っている。
人の年齢で測れば二十を少し越えたあたりに見えるが、それが正しい数字だとは誰も思わなかった。
前列で誰かが小さく声を上げた。
「……えっ」
「うそ、顔……」
椅子を引いて下がっていた生徒たちが、今度は前へ身を乗り出した。
男はそれを一瞥もしない。
シィミアの前へ進み出ると、片膝をついた。
流れるような動作だった。腰を落とす角度も、床へ触れる膝の置き方も、頭を垂れる深さも、あらかじめ定められた形をなぞるように整っている。
数百年前の作法だった。
石造りの地下講堂が、古い時代の謁見の間に見えた。
悲鳴が上がった。
「きゃああっ」
「膝ついたよ今」
「なんで、なんでリスタースに」
シィミアは半歩下がろうとした。
下がれなかった。
手を取られている。
「主よ」
「……なに」
「オレ様の名はゼッドという」
声が変わっていた。
さっき教壇へ向けたときの、固く冷たい響きではない。低く、柔らかく耳の奥へ直接置かれるような声音だった。
ゼッドはシィミアの手を一度離し、取り直した。指を一本ずつ開かせて、手のひらを上へ返す。そのまま持ち上げ、自分のほうへ引き寄せた。
シィミアの視界が黒髪で塞がる。
伏せた睫毛が近い。
息がかかる距離で、ゼッドは彼女の手の甲へ唇を落とした。
時間をかけて、離れていった。
唇の触れていた場所が熱い。熱は肌の内側へ沈み、手の甲に細い線を描いていく。二本の線が一度だけ絡み合って、結び目の形で止まった。
召喚印だった。召喚獣が主の手に触れて契約を結ぶと、その証として刻まれる。
今日この講堂で先に契約を済ませた生徒たちの手にも、それぞれ印が浮かんでいた。光の精霊を喚んだ生徒の印は羽のような形で、ヒサーラの手の甲には尖った星のような印があった。一つとして同じ形はなかった。
これが、わたしの印。
獣なら鼻先を当て、精霊なら光を落とす。口づけは、この召喚獣の触れ方だったにすぎない。恋物語の口づけとは違う、契約を刻むためのただの儀式だ。
シィミアはそれを知っているのに、耳が熱い。
顔を上げたゼッドが、下から彼女を見る。目が合った。
「何でも命じろ。何でもしてやる」
講堂が爆発した。
今日この講堂で喚ばれた召喚獣は、一体も口をきかなかった。鼻先を当てるか、光を落とすかして、あとは黙って主の足元に控えるだけだった。召喚獣が言葉で主に仕えると誓うのを、この場の誰も聞いたことがなかった。それを、この顔の男が主の手の甲へ口づけた、その唇で言ってのけた。
「見た、手にキスした」
「何でもって言った? 今、何でもって」
「ちょっと待って、無理」
シィミアは手を引いた。
抜けない。
「離して」
「断る」
「みんな見てる」
「構わん」
――そういう台詞を吐く男は、よその女のところでも同じことを言うのだ。
そう決めつけてしまえば楽になるはずだったが、ならなかった。顔の熱が引かないせいで、余計に腹が立った。
ゼッドが立ち上がった。
シィミアも立とうとして、膝が言うことを聞かなかった。
陣の上で崩れる。手をついた。
腰が抜けたわけではない。
魔力を根こそぎ持っていかれている。
「あ、足が」
最後まで言えなかった。
膝の裏と背中へ腕が回って、体が浮いた。
視界が高くなる。
シィミアは、自分が抱え上げられたのだと理解するまでに数秒かかった。
落ちないように反射で掴んだのがゼッドの襟だと気づき、慌てて手を離しかけ、離したらまずいことに気づいてもう一度掴んだ。
「下ろして。腰が抜けたんじゃない」
「さっき転んだな」
「転んでない。魔力切れ」
「主を地に這わせるわけにはいかない」
講堂のあちこちから、悲鳴が上がった。
「お姫様抱っこ……」
「片手じゃなかった?」
「私もされてみたい……」
椅子から崩れ落ちた者までいる。
ゼッドの視線が動いた。
ヒサーラが立ち上がったまま固まっていた。口が半分開いて塞がらない。頬から耳まで赤い。
「召喚の時に笑ったのはお前か」
ヒサーラの肩が小さく跳ねた。
「な、何よ! 私は別に、ただ、詠唱で噛んだのが珍しかっただけで」
言い訳が途中から小さくなった。
「べ、別にあんたには関係ないでしょ。召喚獣のくせに」
「関係はある。オレ様の主だ」
ゼッドが歩き出した。
装束の裾を引きずって、生徒たちの間を抜けていく。誰も止めない。一歩進むたびに、背中の銀糸が講堂の灯火を拾って光り、通り過ぎたあとの生徒たちの目に焼きついた。胸のものよりひと回りもふた回りも大きな、同じ紋だった。
ヒサーラの召喚した炎の毛並みを持つ獣が主の前へ出ようとして、途中で足を止めた。
そのまま動かなくなった。
ヒサーラの正面で、ゼッドの足が止まる。
シィミアを抱えたまま上体を倒した。
顔と顔の距離が、手のひら一枚ほどになる。
「もう一度言え」
声が低い。
ヒサーラは動けなかった。
「……ぇ」
「聞こえん」
「な、な……」
ヒサーラの顔が耳まで赤くなった。眼球だけが左右に泳ぐ。
「なんでもないです」
「そうか」
ゼッドが微笑んだ。
鋭い目つきが緩む。口の端がゆっくり上がって、至近距離のヒサーラへ向けられた。
ヒサーラの膝が笑っている。
顔が良いだけの男に、至近距離で微笑まれただけで、優等生がこれである。
――単純。
そう思ったところで、自分の頬まで熱いことに気づいた。
同じ顔をさっき真正面から浴びて、自分も赤くなった。
人のことは言えない。
シィミアはゼッドの襟を掴み直して顔を伏せた。
伏せたせいで、次が見えなかった。
「では消えろ」
「え」
指先に光が集まる。
詠唱はない。
床の石が振動する。
ヒサーラの召喚獣が主を庇おうと飛び出して、途中で伏せた。炎の毛並みが逆立ったまま動かない。
格が違いすぎて、獣のほうが先に理解していた。
微笑みは消えていない。
「ちょっ……だめっ!」
シィミアが叫んだ。
襟を掴んでいた手を離し、ゼッドの腕へ両手でしがみつく。
全体重をかけたところで、魔人の腕は動かない。それでも、しがみついた。
「だめ、それはやりすぎ」
シィミアはゼッドの指先の光の前に手を出そうとした。
その瞬間、光が掻き消えた。
ヒサーラへ向けた手はそのままに、ゼッドが腕の中を見下ろす。
「なぜ止める」
「やりすぎだって言ってんでしょうが!」
「こいつはお前を笑った。侮辱した。オレ様の主をだ」
「笑われたのは事実だけど、それでも人を消していい理由にはならない」
言い切った声が、最後で裏返った。
ゼッドの腕を掴んでいる自分の指も震えている。
シィミアは指へ力を入れ直した。
「……理解できんな」
「敵は排除する。それが最も効率的だ。生かしておけば次がある」
「次があってもだめ」
「損をするぞ」
「損じゃない!」
即答だった。
「そっちの計算が間違ってるだけ」
ゼッドは彼女を見下ろしたまま、しばらく動かなかった。
「……お前は妙な主だな」
そう言って手を下ろした。
ヒサーラは椅子に座り込んだまま、まだ動けずにいる。伏せていた召喚獣が、ようやく体を起こした。
ゼッドはもうそちらを見ていない。
腕の中を覗き込んでいる。
「主よ」
「……なに」
「顔を上げろ」
シィミアが顔を上げた。
至近距離で目が合う。
「今の啖呵、なかなか良かったぞ」
「え」
「震えていたな。声も裏返っていた。あの距離であれを浴びて、それでもオレ様を止めようとした」
「震えてないって!」
ゼッドが笑った。
「だが、手が吹き飛ぶからやめたほうがいい」
鋭い目つきが緩み、口の端が上がる。
整った顔立ちが崩れるのではなく、崩れて初めて完成した。
講堂が息を呑んだ。
「オレ様の主は大したものだ」
下ろした手が、そのままシィミアの頭へ伸びた。
大きな手のひらがシィミアの頭に置かれる。抱え上げられたときに乱れた髪が、指の下で押さえつけられた。
二度、撫でた。
「よくやった」
子供扱いをするなと言い返すつもりだった。
口が動かなかった。
シィミアの顔は首まで赤くなっていた。
数秒遅れて、講堂の後方から声が漏れた。
「笑った……」
「笑顔も良すぎ」
「完全に二人の世界じゃん……」
ヒサーラは何も言わなかった。
自分に向けられたものと、同じ顔だった。
同じ顔で、殺されかけた。
ゼッドはシィミアを抱え直すと、講堂全体を見渡した。
「聞け。今後この娘を侮る者、害する者は、オレ様が処理する。覚えておけ」
ゼッドの声は鋭く変わっていた。
講堂は静まり返って、誰も動かなかった。
「――教師もだ」
これは首輪の要る召喚獣だ、とシィミアは思った。
首輪を付ける役は、自分しかいない。
ゼッドに視線を向けられた教師は何も言わなかった。
教壇へ手を伸ばし、召喚獣目録を引き寄せる。
分厚い本で、上級精霊も古代種も、この学園で過去に喚び出された記録は全て載っている。
頁が繰られた。
何度も同じ場所へ戻っては、指が止まる。
「……ないな」
「先生?」
「目録にない。属性も、階位も、判定できん」
教師は頁をもう一度戻した。
「等級が出せんと使役の登録ができん。登録がなければ契約の記録も残せん。単位の判定も同様だ」
「記録が残っていないというなら、それはお前たちの過失だ」
ゼッドが目録を一瞥した。
「オレ様の知ったことではない」
講堂が静まり返った。
教師は目録の頁を閉じられずにいた。
「……本日の実技は、ここまでとする」
それだけ言って、教師は急いで講堂を出ていった。
扉が閉まる。
「下ろして」
シィミアが言うと、ゼッドは一瞬だけ眉を動かした。
「もう立てるのか」
「さっきよりは」
ゼッドはすぐには手を離さなかった。
シィミアの顔を見てから、ようやく腕を解く。
まず足先が床へ触れた。
それから背中を支えていた腕が離れる。
シィミアは自分の足へ体重を乗せた。膝はまだ頼りない。少し揺れたところで、ゼッドの手がすぐに腰へ回った。
「大丈夫」
「そうは見えん」
「立ってるでしょ」
シィミアは腰へ回った手を押しのけた。
今度は倒れなかった。
それを確認したのか、ゼッドもそれ以上は触れてこなかった。
「……ねえ、結局これ合格なの?」
「そんなのどうでもいいって。それより」
残された生徒たちが一斉に動いた。
向かう先はシィミアだった。
「ねえ、どうやって喚んだの」
「教本のとおりにやっただけ」
「契約どうなってるの? 等級がないとか言われてたけど……」
「それはこっちが知りたいよ」
答えるたびに人が増える。
円が縮んで、背中が誰かの肘に当たった。
――さっきまであざ笑っていた口で、図々しく聞いてくるのか。
向こうはもう終わったことにしている。
シィミアの中に嫌な感情が湧き上がってきた。
「下がれ」
ゼッドの一言で、生徒たちが半歩下がった。
それでも誰も帰ろうとしない。
シィミアはゼッドを見上げた。
ゼッドは生徒のほうへ顎を向けたままだった。
囲まれた時ではなく、こちらが嫌になった時に下がれと言った。
――まさか、助けてくれたのか。
召喚獣は主の心を読み取ると聞いたことがある。
だとすると、さっき自分が考えていたことも全部読まれている。
シィミアはゼッドの横顔から目を逸らした。
――これからずっと読まれるわけ。
顔が熱くなった。
「ねえ、聞いてる?」
「ほんと、教えてほしいだけなんだけど……」
「わたし召喚やり直したいし……」
生徒たちは輪を作ってシィミアを囲んでいた。
ゼッドが睨みを利かせているぶん、輪は遠巻きに広がっている。
その輪の外で、ヒサーラが立っていた。
カナンが袖を引く。
「ヒサーラ、行こ」
「……なんで」
「え」
「なんであの子なの」
声は低かった。
ヒサーラの召喚獣は炎の毛並みを持つ上級獣だった。
目録の三十七頁に載っている。
喚び出したとき教師は褒めたし、拍手も起きた。
学年で一番の召喚だった。
シィミアの番が来るまでは。
「詠唱で噛んでたのよ。実技はいつも時間切れの、あんな子が」
「ヒサーラ」
「なんであの子に、あんな……」
カナンとマルネが顔を見合わせた。
「あっ……あれは……偶然かもしれないじゃない」
「そうそう、あんなのレベルが違いすぎるから、すぐ破綻するって」
シィミアはそんな三人のやり取りを聞いていない。
囲まれた生徒たちの声に埋もれて、聞こえるはずもなかった。
それでも一度だけ、顔を上げた先でヒサーラと目が合った。
ヒサーラは何も言わなかった。
そのまま踵を返し、講堂を出ていった。
今日一日で、五話まで更新します。
面白ければブックマークと評価をお願いいたします。




