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29話 よっちゃん


『真っ白最高: ねぇねぇ、無記名でフォームに送信なら在校生じゃなくてもわかんないよね。わたしが送ってもいいやつだよね!』


 菜子さんからそんなLINEが来たのは昼を過ぎた頃だった。


 大白先輩への連絡に文芸部LINEを使っているので、当然、菜子さんもこのイベントについては知っている。


『蒼井陸斗: 送られたものは全部見ますよ。誰が送ったかなんてわかりませんし。でも、フォームのURLとパスは在校生にしか配りません。校内にポスターを貼って、そこには書く予定なので送りたいならそれ見てください』


『真っ白最高: それくらいくれよー』

 

 まぁ、別に送ってもいいのだが、菜子さんを特別扱いするのも違う気がする。


『蒼井陸斗: 学校まで来てくださいよ。運営を手伝ってくれてもいいんですよ』


『真っ白最高: んじゃ、今度行くー』


 本当に来るのか。


『真っ白最高: わたしに会いたいなら素直に言いたまえ』


『蒼井陸斗: そういう意図ではなかったんですが』


『真っ白最高: それを素直に言うんじゃないよ』


 こういうのがあると菜子さんと話していると実感できる。


『真っ白最高: 応募締め切りいつ?』


『蒼井陸斗: ゴールデンウィーク開けです』


『真っ白最高: 集まるかな?』


『蒼井陸斗: 集まらないと思いますよ』


『真っ白最高: だよね。なら、わたしがサクラの1人を引き受けよう』


 それは普通にありがたい。


『真っ白最高: 蒼くんはこれで春休みの残りは忙しくなりそ?』


『蒼井陸斗: いえ、事前準備の方は基本漫研がやってくれますので。昨日の夜にフォームを完成させた時点で、後はチェック作業ばっかりです』


『真っ白最高: 文芸部で春休みに旅行行く話、色々あって流れちゃったでしょ』


 色々あってというか、何もなくても自然消滅していたように思う。


『真っ白最高: 大くんなんて勝手に旅行行ってるし』


 勉強合宿や親の実家でも旅行と言えるのだろうか。恨めがましく言うものではないと思う。


『真っ白最高: だからさ、3人でどっか行こ』


『蒼井陸斗: 3人というのは誰と誰と誰のことでしょうか?』


 菜子さんと僕はたぶん確定だと思う。ここで、菜子さん、大白先輩、紅林さんの3人と言われたらかなり困惑する。

 問題は3人目で、まぁ、たぶん妹、もしくは紅林さんか。大白先輩の帰省に2人で乗り込みに行こうとかそんな狂った提案では流石にないだろうし。


『真っ白最高: 蒼くんと愉快な仲間たち』


『蒼井陸斗: 僕の周りで常時愉快な人は菜子さんくらいなものですけど』


『真っ白最高: わたしとわたしの親友の子』


『蒼井陸斗: 妹ですか、紅林さんですか?』


『真っ白最高: わたしには他に友達がいないとでも!?』


『蒼井陸斗: いるんですか? 親友と呼べるような相手が』


『真っ白最高: いるかもよ? イマジナリーフレンドのよっちゃんが』


『蒼井陸斗: イマジナリーって言っちゃってますけど。では、菜子さんと僕とよっちゃんさんの3人ですね』


『真っ白最高: 蒼くんとわたしと妹ちゃんとよっちゃんの4人』


 4人目のよっちゃんも来るらしい。3人目は順当に妹と。


『真っ白最高: 妹ちゃんから蒼くんとの仲睦まじいデートのお話を聞いたんだよ』


 聞くなよ。というか、話すなよ。


『真っ白最高: わたしも妹ちゃんとデートしたい!』


『蒼井陸斗: お二人、いえ、よっちゃんさんも含め3人でどうぞ』


『真っ白最高: 蒼くんも行きたいよね?』


 ものすごく嫌というわけではないが、なぜ彼女と出かけるのに妹を同伴しなくてはならないのかと思うわけで。


『真っ白最高: 鍋を見にさ』


『蒼井陸斗: 行きます』


 始めからこれなら断られないと確信があって色々話していたわけか。

『学校で鍋を食べるために』のアニメ映画、それを観に行くなら同行者に菜子さんと妹は適している。


『真っ白最高: 帰りに3人で鍋食べようぜー』


『蒼井陸斗: 妹へ話は通してあるんですか?』


『真っ白最高: 蒼くんと一緒。作品名出したら二つ返事で快諾。似たもの兄妹だよね、本当』


『真っ白最高: ちなみに明々後日で大丈夫?春期講習は終わって、火曜日だから部活もないよね?』


 その通りなのだが、部活はともかく春期講習の日程を把握されているのは何故なのか。まぁ、妹から聞いたとかだろう。


『蒼井陸斗: 大丈夫ですよ』


『真っ白最高: OK!食事代は3人で割り勘?妹ちゃんを除いて2人で割り勘?』


『蒼井陸斗: 妹の分は妹本人か僕が出しますよ』


『真っ白最高: ご飯代は男性が出すべきってのは理解しがたいけど、妹の分はお兄ちゃんが出すってのは、年長者だしって感じ?』


『蒼井陸斗: バイトとかしてませんし、収入が多いわけじゃないんですけどね』


『真っ白最高: 蒼くんって結構お金に厳しいイメージ。というより貧乏性?』


 うちは一般平均より裕福だし、小遣いをもらっていないわけではない。しかし、親からもたらされる金を無駄に使いたくはない。


 一時期は全く手をつけずにいたが、今はある程度心の折り合いはつけた。使う分は使う。が、極力手をつけない。


『真っ白最高: でも、それ以上に妹ちゃんに優しいよね。てか、妹ちゃんに本当に優しいんだよね。なんか理不尽だよね』


『蒼井陸斗: 理不尽なことはないと思いますけど』


『真っ白最高: いいけどさ。それで妹ちゃんとのデートの話なんだけど』


 このLINEを終わらせるタイミングが掴めず、ダラダラと無駄話を続けた。


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