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無花果の回ー20



「見知らぬ天井やん!」


あえて、あ、え、て、かの有名な台詞を関西風味にしてみました。


とりあえず寝起きなのにここまでのクオリティの高い発言をした俺を誉めてほしい

ベネットとの激戦を繰り広げて意識を失ったまでは覚えてるけど。



ここはどこ?



白で統一された部屋は四隅にベッドが有り病室を連想させる、清潔感は程よく無い、壁紙や天井が所々黄ばんで汚い、白のカーテンもヤニか何かでベージュに見える


うん、汚い。


身体を起こすとギシギシと鳴る、錆び付いたベッドフレームが煩わしい


シーツも毛布も所々血がついたりしてキモイ


結果不愉快



ただただ不快感が募るこの一室、場所は何となく思い当たる、恐らく変態闇…


「やぁ、テトラ君調子はどうかな?」


「あっ、やっぱり」



「ん?」



ーーー



「傷は治りはどうかな?」


見た目は浅黒い肌をした10代の少年だが実年齢は50~60代

そんな体は子供頭脳は大人その名も内臓愛好家変態闇医者ジャック先生がベッドの側に立ち俺の身体を眺める


痛みは無い、腕や足をグルグル回した後に腹部を見る穴が開いた箇所は縫合され既に抜糸済み

触ってみるが痛くない、炭化した左肩は皮膚が新たに再生したのか何なのか謎だが傷痕のみで綺麗なもんだ


ベッドから起き上がり軽くストレッチする


うん


「絶好調っすね!」


俺のドヤ顔にジャック先生は苦笑する


「無事で何よりだね。此処に運ばれた時は死ぬ確率の方が高かったのに奇跡的な回復力だよ」


病衣びょういを脱ぎ自前の黒の洋服に着替える


穴だらけだ…真黒なナイフを腰に装着する

ありがとうお前のおかげだよ


ナイフを二度程軽く叩き次に木製のペンダントって……無い!黄色の石が無くなってる



あっ!もしかして…



あの時の音と光はお前だったのか?やべっ泣きそう…


ゴブリンの村で出会った村長とペンダントに感謝


胸が張り裂けそうだ


紐のみになったので足首に巻く

アンクレットとしてまた俺と旅しような


「そういえばエステル嬢と知り合いだったんだね?」


感動に打ちひしがれているとジャック先生から意外な声


「ジャック先生、金髪ポニーテールことエステル・キュレイトと知り合いなんですか?」


「テトラ君は相変わらず面白いね知ってるというかアテンナの街で彼女を知らない人はいないんじゃないかな?」


そんな有名人だったのかあいつ…

流れる思考のなかで次々に疑問が溢れてくるが先ずはこれを聞こう


「っつかなんで俺ここにいるんすか?」



「意識を失った君をエステル嬢が僕の病院に連れてきたんだよ。

テトラ君は瀕死の状態だったからね治療した後は一週間丸々寝てたし」


「えっ!?一週間も寝てたんすか俺?」


「うん。すやすやと気持ち良さそうに」



なんてこった、じゃあベネットとやコルティは一体どうなったんだ…


それにしてもと言葉を切り出すジャック先生は処女の中学生のように顔を赤らめチラチラと此方の様子を伺う


気持ち悪い


「やっぱり、うん、本当に素敵な内臓だったよテトラ君10年に一度、いや!100年に一度の才能の持ち主だよ。

本当に仕事を忘れてすっかり作業にのめり込んでしまって。

ハハッ年甲斐もなく恥ずかしいな~」

と満面の笑みを向ける変態闇医者


「待て、何の作業だ!治療だよね!?作業って治療だよね?

内臓抜いたりしてないよね!?

いや!笑ってないで答えろよ!」


「それはそうとエステル嬢から伝言があるよ」


「無視すんなや!俺の内臓無事何だろう!それだけでもいいから教えて!」


「あとテトラ君が一番気になる、寝てる間の一週間の出来事を伝えるね」


「いや、今はそれより俺の内臓の方が気になるから!なんで内臓全部無事だよって言ってくれないの!?

ねぇなんで!?」




ーーー




ベネット自身の喉元にナイフをを突き立て自殺を計り

俺が意識を手放した後はエステルが介入したが結局はベネットの自殺を計り止めることができずに


ベネット・デリ・マイオは死亡


直ぐに警察や騎士団による現場を押さえる作業が始まる

エステルが警察や騎士団に事情を話し俺をクソ変態闇医者に託す


テレビやネット、新聞等から内臓キラーを捕まえたとの報道が上がる


デリ・マイオ家に報道陣が殺到、内臓キラーの犯行理由が息子の為といった事からネットで一部の人間には美談とされ話題になっている


警察や騎士団は関連事案を調べている最中でまだまだ事件の傷痕はべったりとアテンナの街を包んでいる

悲しい事にアテンナを襲う凶悪な事件は多岐にわたるので解決した内臓キラーの事件はお座なり扱いになりつつある


コルティを救う会なるものが発足しコルティの病気を治すために寄付きが集まり近々コルティはアグニカで一番大きな病院で手術する事が決定


そして今日コルティは報道陣に向けて記者会見のような催しがあるらしく


その場所と時間が書かれている用紙をジャック先生から受けとる

これがエステルの伝言って事ね、

時間と場所が記された用紙の下部には

【事件に関わったのなら最後まで見届けろ】

とのエステルらしい端整な字で記されている


因みに巷では内臓キラーを捕まえたのが一階級の新人攻勢ギルドとの噂が流れる(フッ俺の事か…)




結局内臓が無事かどうかは一切触れられず話が進んだのは言うまでも無い



ーーー



「君のバイクは表に止めているよ」


とのジャック先生の言葉に礼を言い表に出ようとすると


「そういえばごめんね」


変態闇医者が急に謝ってきた、人の内臓をいじくり回した事に漸く謝罪かとジト目を向けていると


「内臓キラーの五人目の被害者な情報間違ってたみたいで」


ジャック先生は申し訳無さそうに掌を併せゴメンねのポーズをとる


「あぁ」



内臓キラー、ベネット・デリ・マイオの五人目の被害者である

ビッテル・ソロウ


当初五人目の被害者として名前が上がったビッテル・ソロウ

苦悶の表情をし無惨にも切り刻まれた遺体は全くの別人である事が判明した


あの日ジャック先生から渡された資料で確認した男の名前はマキューリ・ラント

内臓キラーによく似た殺害方法をされており痛々しいまでの切り刻まれた顔面やイタズラのように開かれた腹部を見て雑巾のようだと感じたのを覚えている。


マキューリ・ラントを殺害した犯人はもう捕まっている


ネヅ


そう俺が捕まえて警察に引き渡したあのハイパー三下野郎が犯人だ



ビッテル・ソロウとマキューリ・ラントが殺害された時間はほぼ同じ

場所に関しても同じで西地区の歓楽街の路地裏

最初に発見されたマキューリの路地裏から通りを隔てた路地裏にビッテルの遺体は隠れるようにあったという


マキューリ発見から数日後

丁度俺が警察に捕まっていた頃に両目が潰され時間が無いと言わんばかりに内臓と足が子削ぎとられていた状態でビッテルが発見された

これは間違いなくベネット・デリ・マイオの犯行との事


HLAが違う時点で何かに気づけば良かったがスーの事件のせいであやふやになっていた


同じ日の同じ時間帯に通りを隔てた路地裏で似た方法で殺害されたビッテル・ソロウとマキューリ・ラント



体のいい撹乱にまんまとハマったという訳か…


だがそこで引っ掛かりを覚える


何故こうも都合がよく似た遺体が現れたのか?


そもそもビッテルとマキューリが同じ日の同じ時間帯に殺害されたことが出来すぎている


そのネヅを捕まえた俺がベネットまで辿り着く、これもあまりにも出来すぎている


何かがおかしい


ベネットとやり合った時にも感じたこの感覚


確かめる必要は十分にある。



エステルの伝言を再確認、会見の場所はコルティの家の前東地区から貴族の住む東南地区にはバイクで約一時間


携帯電話をONにし現在の時刻を確認

16:00

コルティ家で始まる催しは17:00


考える時間は一時間

十分だ…





ーーー



「父がやった行為は決して許される事ではありません。

生涯をかけて被害者の遺族に罪を償おうと思います。

この身体が治ったら十字架を背負い必死に生きようと思います。

本日はお忙しいなか足を運んでいただき誠にありがとうございました」



小綺麗な住宅が並ぶ一角、デリ・マイオ家が見える開けた道路に到着すると会見は終わりを向かえていた


バイクを降り少し離れた所からコルティを見る


玄関前で大勢の記者に囲まれているコルティは涙で目が腫れ頬が痩けている、色々なバッシングがあったのだろう以前会った時より大分老けたように感じる

だが目の奥には強い意志が見える

何が何でも生きる、必死で生きて父の罪を償うといった強い意志が



「随分遅い到着だな」


背後から声を掛けられ振り向くと白金の髪を靡かせたエステルが眉間に皺を寄せ何か言いたげに睨んでくる


「病み上がりなんで勘弁してほしいです~」


軽口を叩きエステルを向く、相も変わらずお綺麗で


「どんな感じだったの?」


「別に特に変わった事は無いさ、父の罪を背負って必死に生きる、とコルティが告げ、具体的には?という記者の質問に答える。

その繰り返しだ」


「あっ、そ」


エステルから視線を外しもう一度コルティを見ると記者の波を縫うように俺とコルティの視線がぶつかる



お互いに視線が泳ぐ


先に動いたのはコルティだった

自分で車イスを動かそうとハンドリムに手を掛けるが何かを思い付いたように動きを止め真っ直ぐに俺を見据える


そしてゆっくりと唇が動き


あ・り・が・と・う


と声を出さずに伝えてきた初めて出会ったあの時のように



それだけで十分だ、救われた

コルティだけが心配だったから…


再びの記者の質問に向き直ったコルティは英雄のように凛々しく質問なに答えていく



エステルが何だ今のはと聞いてくるが答える訳ねぇだろバカこれは俺とコルティの友情の印だ



「まぁ、いい私はもう行くぞ」


とエステルが振り向きながらに歩き出すと



「テトラ君かな?」


呼び声に反応し記者会見から視線を真横を向く


腰が曲がり杖をつき以下にも好好爺ですよといった雰囲気が辺りの空気を和らげる


ノーマン・デリ・マイオ

コルティの祖父、ベネットの父でもある爺さんが俺を見上げてくる



「何だか大変な事になってしまって、テトラ君もあのバカ息子に随分と酷い目にあったとか。

この老いぼれに謝られても奇聞が晴れないだろうが謝らせておくれ

本当に申し訳なかった」


杖のグリップ部分がギュッとなるような音が聞こえた


「いや、謝らないでくださいよ。

なんか色々大変なのはお互い様じゃないですか?」


「そう、言って貰えると助かるよ。コルティも前を向いて歩き出そうとしている」


「老い先短い爺には何がやれるか分からんが必死に支えようと思とる」


俺と爺さんは静態したまま首だけを横に振りコルティを見る

真剣な表情で記者の質問に答えているのが遠くからでも分かる


コルティは必死だ


だったら俺も必要にならなければいけない


必死に…必死に…



そう思うと童話の中の転がるおむすびのようにポロリと転がった言葉に自分自身でも驚いた





「よかったですね、計画が上手くいって」




コルティの方を向き言葉だけ爺さんに投げ掛ける

俺の言葉を聞いた爺さんはゆっくりと首をスライドさせる

ゆっくりとゆっくりと動いているのが分かる


爺さんは俺を捉えると歯の無い口を剥き出しにし子供のようににぱっと笑った

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