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無花果の回ー18



「惜しいな」



そう告げた人物はフードを外すと月明かりが彼女を映す



左右均等の取れた人目を惹く顔立ちと海よりも深い大きな碧眼が俺を見抜く


長めのポニーテールと前髪はビル風に靡き街灯が無い路地裏には一つの光のように輝かしい金髪が映える

その光景はまるで一枚の絵画のようだ

タイトルは【ドブ街とパツキンちゃんねー】とでも名付けよう


というかこの女どっかで……


「身体能力は一流、体術は二流、武器の扱いは三流といった所か」


「あっ!?」


「其だけの腕が有りながら何故犯罪に手を染める」


犯罪?な、何、何の事…もしかしてネヅの事?

確かに傍から見たら暴力を振るった男に見えなくもないか俺

ぐったりとしたネヅを見た後に金髪ポニーテールを見る



ん?金髪ポニーテールという単語に覚えがある



「エステル。エステル・キュレイト」


「ん?私を知っているのか」


エステルが一歩二歩と近付く


「私は君に面識が無いようだが、まぁそんな事はどうでもいい」


あら、覚えてませんか有象無象の一匹に数えられたか、別に悲しくなんてないし~


此方の心情なんてお構いなしですとばかりにエステルは俺を睨み言葉をぶつける


「お前が内臓キラーなのか!?」


「はっ?」


「正直に答えろ今ならまだ」


「違うはバカ!」


「なっ!バカだと!だが沈黙が答えだと問うた時に貴様は何も言わなかったぞ!」


「何のこっちゃっ!」



その後子供の口喧嘩のようなやり取りが続きお互い冷静になった後に意見を擦り合わせた



エステルの意見をざっくり纏めると


エステル自信も内臓キラーを追っていてどこぞの情報屋から酒場で自分が内臓キラーだと言っている奴が現れたと聞き

捕まえに行くと既に姿は無い

情報を基に捜索すると渦中の人物が路地裏入るのを目撃

だがそれを追跡するように後を追う人物(つまり俺な)を目撃

様子見で状況を傍観していると情報の(ネヅ)はあっさりやられる始末


だが内臓キラーの人物像は腕が立つという見解がある

そこで後ろに立ち言葉を投げると返答はない(ビル風で聞こえませんでした)

お前が内臓キラーか?沈黙が答えだと言っても返答が無し(ビル風止んだとき言えや)

故に実力行使に出たという訳だ



俺の意見は……まぁ説明するまでもないだろ。



「何処までこの事件を知っている?」

仕切り直しの様にエステルの問い


「まぁ、そこそこ…」


エステルは俺の答えに不快を表し薄目を向ける


「大体の目星は付けているといった雰囲気だが」


「犯人は絶対に俺が捕まえるそれだけ…」


これは俺なりのけじめだ

あの時俺が内臓キラーの情報を聞きにルウと離れたからスーが殺された

内臓キラーがいなかったらルウはまだ生きている。

こじつけでも理不尽でもなんでもいいこの怒りは全て内臓キラーとルウを殺した奴に向ける

今の俺の原動力はそれだけだ


「そうか、気負いすぎて空回りしないことだな」


エステルがチラリと此方を一瞥した後に大通りの方角を向く

遠くからパトカーの音、ネヅよどうやらお迎えが来たようだぞ


「状況の説明は捕まえた貴様に任せる、私はもう行く」


路地裏から出ようとエステルは歩きだすがすぐに止まる


「知っていたら余計かも知れないが。警察と騎士団連中は日付か変わると同時に動くそうだ」


それだけ告げてエステルは路地裏を抜け出しその姿を見えなくした



「あっそ」



あの(アマ)は恐らく俺が犯人に行き着いているということに気付いている、あの雰囲気だとエステルも犯人の目星はつけているはずだ

恐らく警察も…

エステルと警察が今日か明日動くんだったら俺は今動く


数分後に着た警察にネヅを渡し場を去る、事情聴取やら何やらで警察が引き留めにきたが全て無視だ



俺は体内通信である人物に電話を掛ける


「なんだ…」


疲れた声が耳に届く


「あの件はどうなってるのヤクさん?」



ちっと舌打ちが一つ聞こえたが俺は大人だ聞こえないふりをしてあげようじゃあないか


「お前の指示通りの段取りは全て終わらせといたよ」


「さっすがエリート警察官仕事が早いね~」


またまた舌打ちが聞こえた直後に言葉が返ってくる


「いいか、今回だけだぞお前にはもう二度と協力なんてしねぇし俺とお前は今後一切赤の他人だ」


「おいおいそんな悲しい事言うなよヤクさん。

じゃないと、あんたが警察の情報を横流ししてる事バラしちゃうよ~、娘さんと奥さんがどんなめに合うんだろうな~あ~可哀想。

あとお前に命令できるのは俺の方だからあんま調子のんなよカスが、てめぇは一生俺のペットとして生きろ拒否権とかはねぇから」


 こいつの弱味はもう握ってるんだ。

ヤザイラに高い金払って調べ済み。

やられたらやりかえす! とはまさにこの事。


「……いい加減に」


「何!?それとも秘密バラされたいわけ?エリート警察官不祥事は大変だと思うよ。

てめぇは黙って俺の犬やっとけ、わんわん」


体内通信を切りマリオン通りを抜け出し目的地に向かう




バイクを走らせ向かうのは工業地帯の一画、スラムとは違った陰湿な空気が肌を舐める

錆びたガラクタ、今は使用されていない工場やコンテナが並び昼はまだしも夜は訪れる人間が殆どいない。

街灯が少ない道をゆっくり歩く

獲物がかかるまで人通りが無い薄気味悪い道をただただ歩く。



これ迄あった内臓キラーに関しての情報を纏めていく。

一人の人間が巻き起こした不条理に頭を悩ませる


何故?というのが素直な疑問だあんなにも、あんなにもやさ、ふと視線という気配のような何かを感じたこれは……


「あれ、君は確か」


掛けられた言葉で思考が中断される

前を見据えると糊の利いた紺色のスーツを身に付け手にはスーツカバンを持った人物が多少面食らった顔で此方に近寄ってくる



「警察から連絡があったから何かと思ったけど、えっと君は確か…」


「ども!コルティの友達のテトラと言います。覚えてます?」


満面の笑顔で挨拶をする。

錆びた鉄の匂いが鼻につく場所でコルティの父親ベネットは対峙する


「警察のヤクさんっていう人を知らないかいテトラ君?彼に呼ばれて此処に来たんだけど見当たらないんだ」


「いや、もうそういう探り合いとかはどうでもいいんでさっさと本題入りましょうよヤクから話は聞いてるんでしょ。内臓キラーさん?」


ビッテルはあぁとまったく場に合わない間抜けた返事を返す


「ヤクからはHLAのハプロタイプB52-DR222が工業地帯に居るって教えられたんだろ?

でも残念それウソ情報だから」


ビッテルが無言なので喋っておこう。


「てめぇの事は調べさせてもらったよ尻の皺の数まで事細かくな、とりあえず大人しく掴まっ」


突風が全身を貫く、いや違う!ビッテルの突進。

硬質の音が空気を切り裂く


ビッテルの持つ獲物と黒のナイフが衝突

ナイフでは捌ききれずに衝撃が身体を貫く地面を蹴り後ろに後退する。



「せっかちだな~話は最後まで聞いて欲しいなお父さん(ハート)」


ビッテルは無言のまま獲物を持ち直す、鈍色の短い槍か…ナイフ対短槍だとリーチも含めて分が悪いしなによりまた(・・)スローモーションにはならないのが問題



エステル程の速さは無いが非常に計算違いだ

ビッテルがこんなに強いなんて…


「知られたからには仕方無いね。

テトラ君は死んでもらうよ」


漸く喋ったと思ったら何て下らねぇ事言うんだあんたが犯人だってのはもう大体の奴等が周知してるよ。


「まず理由が知りたいな。コルティと同じHLAを持つ人達を殺した理由と内臓と足を奪った理由」


コルティの名前を聞いたベネットの空気が僅かに弛緩する


「コルティの内臓を丸ごと変えれば多機能不全やベーチェット病が治ると?切断した足をつければコルティがまた歩くから何て阿呆な理由では無いよな?

仮にも軍で医療班に所属し第一線で活躍してた人間が考えるには余りにも稚拙すぎる」


このタイミングで一気に畳み掛けよう


「アテンナの街にコルティと同じHLAが五人もいたのが不可解だ?

一体どんなからくりをつかったのか是非教えて欲しいな?

あとあんたの殺人行動のせいで関係の無い奴等まで模倣犯に殺されてるコレについては何も思わないのかも是非是非聞いてみたいな?」


ベネットがゆるりと短槍を構え直す


「コルティは治る、妻も戻ってくる、貴族として返り咲く。それだけだ」


「はぁ?」


ベネットが距離を詰め短槍を横凪ぎに振るう

髪を数本犠牲になるが屈んで回避右手の真黒なナイフで切り上げると短槍の柄の部位に阻まれる

お体勢が崩れ互いの肩がぶつかり合うと同時にベネットの顔が近距離に近付く


「っなっ!」


思わず上擦った声が出たと同時にベネットの膝蹴りが腹に決まる、お決まりのピリピリピリの危険信号の報せに従い前を向くと短槍の穂先が目の前に迫る胃液を吐きながら後退

体勢を立て直し戦闘に集中したい所だがあのベネットの


「目、飛んでんぞアレ」


誰に言うわけでも無い独り言は自分への再確認

さっき間近で見たベネットの目は明らかに以上だ、生気が無い、常軌を逸してる…いや違う当てはまるとしたら何かに操られている?

催眠?それも違う気がする。

もっと深くに蓄積された、まるで何年も何年も洗脳されているような異常者の目、根底にあるのは何かへの増悪


「君、弱いな」


ベネットの声と同時に最大限の危険信号

やべっ!考える事に気を取られ戦闘が疎かになっちまった。


回避するよりも早く動いた短槍が腹部のど真ん中にに穴を開ける

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