赤リンゴの回ー3
流れる汗が全身を伝う。
決して不快では無く、むしろ心地良い。
シャワーを浴びて汗を流したいがその感覚は不粋ですらある、風が火照った体を冷やす。
とても気持ちいい、なぜならそう。
俺は全裸だから。
可愛らしくなったジョニーも心なしか嬉しそうだ。気のせいか体毛が大分薄くなった気がする髭に関しては男爵級の称号をもつ我が顎髭が今では天使のおしり並みにトゥルトゥルになってるし
一番嬉しいのはやゃ、本当にやゃ寂しくなり始めた頭皮が今はワッサワッサになっている事。
もしかして若返った?鏡で見てぇ~~!
そんな事を考えながらひたすら走る。
走り疲れて何処でもない草原に腰を落とす。
夜の帝王とバトンタッチしたかの如くすっかり太陽さんはお昼寝中だ
「星スゲ~な」
荒い息を吐きつつ暴力的なまでに犇めく星を眺める。
走り始めてからどれくらいの時間が経ったのだろう、走って、休憩、走って、休憩を繰り返して体感的に5時間位はずっと移動してた気がする。
さすがに疲れた、もう一歩も動けん。
今だ景色は変わらず草と遠くに山が見える。途中森林の様なものを何度か抜けた位か。
これ以上移動しても意味無さそうだし今日は寝るか
草原に大の字倒れる、
ここは何処なのか?何故全裸なのか?何故自分の身体がこんなにも若々しいのか?何故全裸なのか?俺は本当に死んだのか?何故全裸なのか?出ない答えを考えながら眠りにく。
眠れないかな~と思っていたが大自然の一部となったような感覚にあっさりと意識を手放す。
ピリッ
ん?
ピリッ
んん?
俺の中の何かが何かを訴えているような…
身体が叫びたがってるような…
感覚で例えるならリラックスしてる時に急に鳴った携帯アラームで体がビクッとしたような感覚まだ眠いが強制的に目を開ける
「ギィギィ」
寝起きの俺の視界が捉えたのは二足歩行の変な生き物。
手足は鶏ガラのようなカッスカスなのに腹だけが異様に主張している。
目が真っ白で赤い毛細血管が目尻に複数浮かぶ瞳孔もなければ何もない、ただただ真っ白だ
笑顔でニヤニヤする口元は剥き出しになった犬歯が以上に長く鋭い。頭はハゲ散らかすというか毛が無い
うっすら白い毛がパヤパヤ生えてる弛んだ皮膚が気持ち悪い、んでもって耳がない。
とどめは全身緑色。
こいつスゲーブスだなと思いつつ更に観察する。
背は低いかな?寝転んでる俺でも見上げることができるから150位かな、
さっきから「ギィギィ」煩い
あれ?右手になんか持ってるなあれはドラク○とかでよく見る棍棒?
あれで殴られたら普通に死ぬだろうな
ピリッ
あっ、また静電気みたいな何かが身体に流れた。
一度まばたきをした後に再度ブス、もとい棍棒を持ったブスを見上げる
ギィギイ言いながらゆっくりと棍棒を振りかぶって一直線にこっちに降りおろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
次の状況を察して慌てて真横に飛び出す
地面に棍棒がぶつかる衝撃音!
さっきまで寝ていた場所に棍棒が振り下ろされ雑草が曲がり地面に深くめり込んでいる
一瞬で意識を覚まし今あったことを頭で確認する。
うん、ヤバイのは分かるヤバイのは分かるけど
「ギィギ」
「ゴブリンじゃぁ~~~ん!!!」
突然の大声に身を固くするゴブリン
だが昔からゲームで慣れ親しんだゴブリンに出会えた興奮は計り知れなん
おーおーおーおー興奮して叫ぶ俺に
「ギィ」と叫びながら棍棒を肩に担ぎ襲いかかるゴブリン
狙った獲物を逃がすまいとしてる様だ
よし!とりあえず一旦逃げよう!
今は出会えた興奮よりも命の方が大事だ、生きる!
ゴブリンに背を向け全力ダッシュ
とにかく一旦逃げよう!
2、3分走った後気配が無いので振り向くとゴブリンはいなかった。
いや、いた!
メッサ遠くの方でスゲーゼイゼイしながら走ってる。
そういや目もよく見えるな。
前のオッサンver.の時は眼鏡が必需品だったのに。
いやそんな事よりもゴブリンだ、必死に走ってるな、遠くからみてもスゲーブスだ
いやブスとかはともかく何だか必死に走る姿は酷く残念に見える。
そう思うと急にゴブリンが雑魚のように見えてくる不思議。
ゲームとかでも序盤に出てくるキャラだし
ん~、悩んだ末もしかしたら勝てるんじゃないかと思いゴブリンの方に走る
ゴブリンは近づく俺に棍棒を構え乱暴に振り回してきたが、
遅っ!!
スローモーションみたいにゆっくりゆっくりと棍棒が向かってきやがる
やる気あんのかコイツは!?
棍棒をマイコー並みのムーンウォークっぽい足さばきで華麗にかわす。
振り回した勢いに負けよろけるゴブリンに向かって顔面にワンパン!
「ギィャ」小さく呻きゴブリンは倒れる
弱っ!!!
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