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無花果の回ー15

異世界でも警察の車って白黒なんだな……



両腕に手錠をはめられ両側にはスーツの男が二人

警察車両に強引に乗せられ何処かは分からないが俺を運んでいる



一体何があったんだ



ルウ……



「おい、さっさと降りろ!」


目の前の光景にしばし頭を整理させるビルの様に見えるが警察署、か?

デカイ敷地内の真ん中には剣と盾を構えた女神像が佇み、

警察車両や軍服を着た警官、甲冑、スーツの奴等があちこちにいやがる。


思考を放棄していたからか何がどうなって俺がここにいるのかが分からないが、確か…


「さっさと降りろ、これから取り調べだ」



スーツの男が俺の腕を掴み強引に車外に連れ出そうとする



「取り調べ?」


思考が鮮明になる、そうだ…



スーツ男が俺を引く反動を利用して体当たりし地面に転がすそのまま覆い被さり胸ぐらを掴む

チッ、手錠のせいで動かしづれぇな


「おい!殺人容疑って何の事だ!ルウはどうした、本当に殺されたのか?誰がやった、早く教えろじゃなきゃお前を殺す!」


溢れでたのは圧倒的な怒り、自分じゃ制御できない暴力の塊が俺を包む



慌てて他の警官や騎士甲冑の奴等が俺とスーツ男を離す


とりあえず暴れるそうでもしないとこの憤怒が俺を壊しそうだから

何人もの奴等が俺を大人しくさせようと身体を押さえてくるが、その度に全身を使って跳ね返し、両腕を大きく振りスーツ男や甲冑を振り飛ばす、


暴れ始めてから手首に嵌められた手錠から耳障りな音、見ると青紫色の魔法陣が手錠から展開、魔法陣が俺を包むと同時に全身に激痛が走る一秒毎に痛みが強くなり思わず叫びそうになる、比例して身体もどんどん重くなる血が内臓が筋肉が鉛にでもすげ変わったように重い

身体を動かすという行為を一切放棄したくなる程の激痛と過重






でも……

こんな苦痛どうでもいいわ


正面から迫る奴を前蹴りで蹴飛ばすと周囲の怒号が強まる


大多数が力ずくで俺を拘束にかかる、ローブを纏った男女数人が警察署から出て来て俺に何かの魔法をかけているようだが知るか!

全力でそいつらにも体当たりをかます!


一際デカイ声に振り返ると俺の身体の倍以上ある熊や虎の獣人やらが走り俺を抑えつける!

頭を押さえられ強引に警察署内に連れていかれたがそんなもんさらに知るか!

廊下の隅にあるガラスのショーケースを足で蹴破り中身とガラスを飛散させ怯んだ虎と熊を振り払い蹴っとばす


後から羽交い締めしようとした甲冑姿の女を体重移動を利用して壁に叩きつける


出前で来たであろうコック姿をしたオッサンの手に持っている銀色の出前箱を蹴り上げると湯気がたつ食事やら皿が辺りに飛び散る

廊下の前後左右から様々な人種の奴等が俺を取り押さえようと声を張り上げながら走ってくる。

何人にも動きを押さえつけられ、邪魔され、身動きが出来なくなる


「ああああぁぁぁぁぁぁ!うぜぇぇぇぇぇぇ!!」










散々抵抗したが多勢に無勢、足にも錠も嵌められ簡易の拘束具で身体を固定され指と首しか自由がない状態で取調室の一室に連行されたようだ。


四角い部屋の真ん中にはテーブル一脚、椅子二脚その内の一脚に座り横を見る。

片側の壁だけガラス張り、向こう側が見えずに映っているのは俺だけ。


どうせ隣に居るんだろ偉そうに腕を組んでこっちを見てる奴等がよ



「おい!」



壁際にいる三人の男に声を掛ける、スーツの男が二人に胴着を着た獣人のオッサン達は何れも顔を腫らし痛めた箇所を擦っている


「俺に殺人の容疑者だったか?逮捕するって言いやがったあのオッサンを連れてこい」


訳わかんねぇ事を言ったあのスーツのオッサンあいつが多分偉い奴なんだろ、俺が殺害容疑者とかふざけんてんじゃねぇぞ

あのオッサンはマジでブッ殺す



投げつけられた言葉に三人のこめかみに青筋が浮かび一触即発の空気が辺りに立ち込める

今にも殴りかかる勢いで睨んできやがるよ一丁前に



「まぁまぁ、そう熱くなるな」


乾いた声と共に部屋の扉が開かれる入ってきたのはヨレヨレのスーツを着た40代後半の男、頭髪が薄く人の良さそうな笑みを浮かべて三人の男に目線で合図を送る


「こいつ無茶苦茶で、錠の魔具を最大にして結界を五重に重ね掛けしても動きよるんですわ」


「それプラスで結構な数の術者が不可かけてんのに暴れまわるし」


「被害もかなり出てて、こんな奴始めてっすよ」



三人それぞれ言い終わると


「そかそか」


穏やかな口調で近づく禿げのオッサンは酷く平凡な顔付きだ、何の特徴も無く壁際に立つ三人の奴等のような威圧感も無い、万年平社員のサラリーマンってところか


「てめぇじゃ話になっ」


ピリ


静電気?


禿げの拳がゆっくりと向かってくる回避は出来ないうざってぇ錠と拘束具が身体の自由を奪っている

派手にぶっ飛び耳を刺す音が室内を反響する

思ったよりも大きな音がしやがる


「ん~、今日は娘の誕生日だからな早めに切り上げるか」


右手をひらひらさせながら禿げ頭が呟く


「てめぇ何しやがんだよ!」


「黙れよグズ!」


先程までの人の良さそうな笑みを消し表現を歪ませ大声を出す禿げ

はっ、っつか今何つった


「おい!オッサ」


「俺が喋ろって言うまで口を開くなよクズ、それともゴミの方がいいか?ゴミゴミゴミゴミゴミゴミゴミ」


「てめぇぶっこっ」


半笑いで顔面に一発、腹に三発のパンチをもらう


「テトラ君、だったかな?今日の夜何してたの?あの獣人とずっと一緒にいたみたいじゃない?

だったのにどうして夜になったら別行動したの?」


「あぁ!」


「君が殺しちゃったとかじゃないの?」


言葉尻に併せて腹を蹴る禿げ、


「それともペットとして飼ってたのかな獣人だけど面はよかったもんねあのガキ、獣人とのセックスは楽しかったかなテトラ君!」


連続で腹を蹴り上げてくる禿げ


「お前ら下級の攻性ギルドなんてみんなゴミクズなんだよ!社会に迷惑ばかりかけやがって」


「攻性ギルドになりたての若者が犯罪に手を染めるのは良くあることだ、力と人を殺せる凶器の所持が許されて自分が強くなったと勘違いして欲望を満たす為に犯罪行為を行う、君もそなんじゃないか」


壁際に立っていた三人の内の一人が捲し立てる


「そういうことなんだ、テトラ君。

君のこと調べたけど攻性ギルドの新人っていう以外は身元が確認できなくてさぁ、ますます怪しいよね」


蹴りを止め胸ぐらを掴かんで身体を起こされる目の前には禿げは親の仇のような顔から孫を見る顔に変わる


「今ならおじさんの力で便宜を図れるからさ、獣人殺害認めたら?」


「……」


「悪いようにはしないからさ、ちゃんと各所に手を回してテトラ君が」


「おめぇ息が臭ぇな今度から人と話す時は歯を磨いた方がいいぞ禿げ」


下卑た笑みをくれる禿げは一瞬表情を固めた後眉間に青筋を浮かべこれから怒りますよという間抜けたモーションを開始しやがる


「この、クソガキてめぇ」


「どっちがクズだよ!」


喉から血が出るほどの大声で叫んだ


「てめぇらの方がよっぽどクズでゴミじゃねぇか!

俺がルウを殺すとか、んなことはまずありぇねぇ!こうしてる間にも本物のゴミクズはまだ捕まえてもねぇんだろうが、だったらてめぇらも俺と同じゴミクズだろうが!」


「なっ」


「上等だよ!ゴミクズなお前らに変わって俺が犯人をつかまえてやるよ!誰よりも早く俺が!

ルウを殺した犯人を捕まえてやるよ!」


胸ぐらを掴んだまま拳を振り上げる禿げだが殴られる前に室内に放送が流れる


――ヤクさん、其処までです彼は裏がとれたので釈放です――


放送を聞いた禿げは舌打ちを一つして俺を放り投げ扉に向かう


「てめぇの名前は覚えたからな、ヤクさん」


皮肉をたっぷり含ませ言ってやる

扉に手を掛ける禿げ、ヤクに言ってやると何も言わず部屋から出ていった。



手錠やら拘束具を外され取調室から連れ出された俺は長い真っ直ぐな廊下を歩く

見るまでもなく顔が腫れているのが分かる、口の中はズタズタで歩く度に全身に激痛が一緒についてくる



廊下の先には見知った人物

武具情報屋の肥ったババアのロリータと変態闇医者ジャック医師



「警察にテトラ君のことで呼ばれたから何事かと思ったら、こういう事だったんだ。

テトラ君大丈夫ヒドイ顔をしているよ。」


変態闇医者は心配顔を向けてくる


「私とジャックとそれからヤザイラにも感謝するんだね、裏で色々動いてやったんだからこんなに早く釈放されたんだよ」



警察に呼ばれたジャック先生がロリータ婆に連絡、婆からヤザイラに繋がり三人が裏で助けてくれたって流れか…


「…別に頼んでねぇよ」


そのまま二人を素通りする、すれ違った時にババアから盛大なため息が聞こえた



「落ち着いたら借りは返すから」


背中越しに二人に伝え俺は出口に向かって歩き出す。



ささくれだらけの心は今は誰も寄せ付けたくないと叫んでいる



「何が異世界だよ、くそっ」


今の俺にはそう叫ぶこと以外に出来ることはない

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