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無花果の回ー12

「とりあえずは一人該当者がいたぞもうちょっと時間をかければまだ出てきそうではあるがとりあえずな。

データを今から携帯に送るから確認してくれ」



「ありがとう。しょ」


「それから!俺の名前はヤザイラだヤザイラとそう呼べ!」


 強引に電話を切られ後送られたデータを確認する。

どんな人物なのか見といた方がいいだろうな。

データの住所を確認し携帯で調べる、出掛け準備を済ませルウの家を出ると左側にピッタリと獣耳少女かキラキラした目で見上げてくる。



「いやっ、飯行かないよ南地区に行くんですけど」


「ヘ?」


 この世の全てに絶望した悲劇のヒロインのような面持ちになるルウは「アウ、アウ、」と口をパクパクさせながらウルウルした目を向けてくる。



「じゃあここでお別れって事で、昨日の件に懲りたら夜に出掛けるのは止めとけよ、じゃあな」


 背を向け後ろ髪を引かれる思いで歩きだす。

まぁ住む家も有るみたいだし仲良くやってる大人の人もいるようだから下手に首突っ込まない方がいいだろうな

今は自分一人で手一杯だし、そのうちまた会えるだろ。

チラリと後ろを振り返ると飯を食えないショックからか、はたまた急に別れを告げられた状況についていけないのか分からないが。

オロオロしている、後を追うかどうしようか迷っているようだ。



「じゃあな」


 と片手を降りルウに別れを告げた




ーーー



 盗んだバイクで走り出す。

まさか実際にやることになるとは人生何が起こるか分からんね。

東地区《野蛮で下品な街》から南地区に向かう。

アテンナの中心部からやや外れにある小金持ちや没落貴族何かが住むちょっとお高い物件が並ぶ住宅都市。

携帯で色々調べられる異世界ってのもなんだかなぁ。



「フゥ~~~~!」



 送られたデータを脳内で再確認

名前:コルティ・デリ・マイオ

年齢:17歳

性別:男

住所:南区175669番地36


 こいつが翔さん事ヤザイラが教えてくれたHLAの型がB52-DR222今まで殺害された人達と同じタイプ。

もしかしたら次に狙われるかも知れない要注意人物。


「カゼーーー!イマ、カゼトヒトツニナッテル!!!ゴールハスピードノムコウガワダー!」



 ヤザイラの口振りからすあの依頼をしたのは俺が最初じゃないっぽいしな「あんたもか」って言ってた事は何人かは既にコルティとやらに接触してるかも知れんな



「コノテリヤキバーガーウマイゾー!」



 さてはてどうアプローチするべきか、急に

「君は凶悪犯に狙われているぞ!」なんて言っても信じてもらえないだろうしなぁ~



「チョッ!ノドカワイタ!コーラヲショモウル!」


「うるせぇ~よ!!さっきから後ろでごちゃごちゃ、あっ!おまっ食べかす服につけんなよ!」


「テトラマタコマカイコト、、オトコハデーントカマエルオケー?」


「オケー?じゃねぇよ貧乳獣耳が!」


 原付きバイクの後ろ側にはスーがここは私の指定席と言わんばかりにふてぶてしく座ってやがる。

何故別れたばかりなのに一緒に行動しているかというとですな。






 ルウに背を向けて歩き出した途端に「泥棒~ひったくり~誰か捕まえて~」的な叫び声が聞こえ振り向くと


全身黒いジャージにフルフェイスのヘルメットを被り原動付二輪車バイクに跨がったている奴を発見、左手には厚手の野暮ったい地味なバッグ

恐らくバッグの持ち主である肥ったおばちゃんは息も絶え絶えバイクに向かって走っている。


しかし文明の利器vs豚(肥ったおばちゃん)では勝負にならずどんどん差が開いていきどんどんひったくり犯が此方に近づいてきている。


昨日も泥棒に遭遇して今日も泥棒に遭遇、何?アテンナの街って一日一泥棒とかなの?


此方を邪魔だとばかりに当てる気満々で突っ込んでくるのでフライングプレスで応酬

綺麗にきまったと同時に地面に原付きバイクが派手に転がる音が嫌に響きそれに巻き込まれる俺とひったくり犯。

運動エネルギーに身を任せ転がりきった所で立ち上がる、思った以上に傷を作ってしまった、痛い。


 ひったくり犯に「大丈夫か?」と声を掛けるが返事がないただのひったくり犯のようだ。

フルフェイスを剥ぎ取り素顔を拝見

、白目を向いて気絶中だが

「クソガキじゃん。」

明らかに10代前半の顔立ちの少年。


やれやれルウといいこの少年といいアテンナの東地区はなかなかの場所のようだな。


 豚。じゃなくておばさんにバッグを返し

少年のバイクを起動してみると問題なく走れそうだな。

どうしようか迷ったが、ヘルメットとバイクを少し借りて行く事にしよう。南地区行ったら必ず返すからと心の中で名もなきひったくり犯に告げ立ち去ろうとすると。

ルウが小走りで此方に近付き


「テトラダイジョウブ?」


 と捨てられた子犬のような目で俺を見てくる。

何が起こるか分からない危険な所に一人で置いておくのもなぁ~

助けた手前なんだか守ってやった方がいいのかな~的な空気が流れているように感じる。



「あぁ~なんていうか、ルウ?」


「ン?」


 もし俺と別れた後何かの事件にあったりしたら、と思うとなぁ~。

俺が眉値を寄せ考えながらルウを見ていると。


「アゥ、テトラ、ドコカケガシタ?ダイジョウブ?スーカットバンモッテルヨ。」


 おろおろしながら俺の身体をペタペタ触り無事かどうか確かめている。

俺の事心配してくれてんのか?

でも俺からしたらお前の方が心配だけどなこんな危険な街で美少女が一人で生きてくにはしのびねぇなだろ。


「グギュルルルゥ」


 盛大に鳴る腹の雄叫び。

そういや飯連れてけって行ってたから腹減ってるのか、ルウは顔を真っ赤にしながら


「ウゥ、ナンデイマナル~」


 と消え入りそうな声で呟いていた。

空気が軽くなる、丁度風が吹き太陽のせいでじんわり上がった体温が緩やかに下がる、体の中にまで風が吹いたような感覚。

きっと気持ちのい風だけではないルウの持つ雰囲気もあるだろうな。

なんだかごちゃごちゃ考えてたけど心配とか情がわいたってのもあるんだろうけど一番は……


「テトラ?」


 じっと見ていたからかルウが俺の顔を覗きこんでいた


「ルウ良かったら一緒に行かないか?」


「ヘッ?…ツイテッテイイノ?」


「おう!どうする?」


「マ、マァ、テトラアブナッカシイカラスーガツイテッテアゲル!」


 獣耳と尻尾をパタパタと動かしながら此方をチラ見するルウ

一番は敢えて言うまい、なんか悔しいから。






 そんなハートフルな感じで旅立ったのにやれ飯を食わせろだ喉が乾いただの長年連れ添った彼女みたいなふてぶてしさ。

なんだろぅこの貧乳スゲームカつく。


 バイクで走ること約一時間後ろでごちゃごちゃ騒がれながらも南地区に到着。




 整備された道路、落書きが無い外壁、小金持ちが住む地区だけあって小綺麗な住宅街って感じか。

住所を調べながら移動し漸く コルティ・デリ・マイオの家に到着。


まぁ、普通の平屋ですな小さくもなく大きくもなくって感じか。



インターホンを押す【ピンポーン】という平凡な音だが安らぐ音色に思わず目を細める。

異世界って忘れそうだわ、


応答が無いのでもう一度押す【ピンポーン】


時間を置いてさらにもう一度押すが平凡な音は義務的に響くだけ


「留守かな」


窓を覗こうにもカーテンで完全ガードされており覗くことは出来ない。

一応玄関ノブに手を掛けるがやはり鍵はしまっている。


時間つぶしてまた出直すかな



「テトラ~~!ヤッテイイカ~?」


呼ばれて見るとルウがこぶし大の石を窓ガラスに投げ込もうとしている、って待てバカ!やっていいかじゃねぇわ



「ダメに決まってんだろバカ!」


近付き止めさせようとすると


「バカッテイウホウガバカダー!」


と俺に石を投げつけやがった

うおっ危ねっ!頭を横に降って回避


「何すんだ貧乳!」


「ヒッ、ヒンニュウ、」


自分の胸を触り顔を真っ赤にし怒りの表情をすると


「センソウダー!」


と叫びながら殴りかかってくる。


「ちょっと止めて此処で目立ちたくないなら暴れないで」


ルウの攻撃をいなしながら宥めるが全く聞いてはくれない。

手刀を後頸部に当てて気を失わせようかと考えたがやっと事ないし、失敗したら凄く怒りそうだしどうしたもんかと悩んでいると



「あの、何か用ですか?」


掛けられた声に俺とルウの動きがピタリと止まる。

声の主を探すと玄関に近い窓が開けられそこから顔だけを出した少年が怪訝な顔で此方に話しかけてくる。


「家の敷地内で喧嘩しないで下さい」


「えっと、騒がしくしてごめんなさい君はコルティ君かな?」


「……」



長い沈黙



「そうですけど貴方は誰ですか?」


その問いになんて言っていいか分からず、とりあえず作り笑いをしておくと隣から

「テトラキモイ」



何とも言えない空気になったのは言うまでもない。

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