無花果の回ー8
「ふぁ~ぇぇ~~いぃ~~あー」
ベッドの上で身体を伸ばす。
久々の五度寝をしてしまった。
時計を見ると16時35分。
「メッサ寝たな」
攻性ギルド課に教えてもらった近場のビジネスホテルに宿泊。
部屋の面積は10㎡部屋内にシャワートイレ付、ふかふかベッドに自由に入れる大浴場付、さらに朝食は無料。
これでなんと一泊8000エーン!
ホテル:ニューイージーは貴方の睡眠を約束します。
「約束されたわぁ~」
添えつけのパンフレットを眺めながら再度身体を伸ばす。
「異世界に来てビジネスホテルか」
純白のシーツ、机とイスとテレビのみがある無駄の無い清潔な部屋。
日本のビジネスホテルと何ら変わらないね、うん。
昨日テレビ点けて見てみたが普通にテレビだったね、うん。
小鬼族がスーツを着てバラエティー番組の司会をやっていたのを観たときはそっと電源を消したね、うん。
「とりあえず生きていく為にはお金を稼がないとなぁ」
ベッドから芋虫のように這い出てシャワーを浴びる。
ホテルの売店で買った下ろし立てのパンツと靴下を装着。
腰のベルト部分には黒いナイフを収納。
当面の資金稼ぎのために攻性ギルド課へ向かう。
ホテルの受付のおばさんに鍵を返す
「気を付けていってらっしゃいませ」
と頭を下げるおばさんの左右の頭頂部には
角!
つの!
tuno!
角がある種族をクエルノ族と言うらしい。
携帯の検索サイトで調べました。名前はゴーゴル
頭に角以外は普通の人間。
異世界はスゲーなーと実際は何にスゲーと思っているか分からない内心を落ち着かせる。
ホテルニューイージーから攻性ギルド課までの道のりは徒歩で約10分
相変わらず異世界感がまったくしないアテンナの街だが今日はやけに街が騒がしいな,
いや確かにアテンナは基本的に人が溢れ、車やバイクの走行音が付き纏うが。
今日はいつもより人が、というか警察や甲冑姿の騎士、腰や背中に武器を携えている攻性ギルドの数が多い。なんだか物々しいな。
そんなこんなで攻性ギルド課に到着
昨日の獣耳お姉さんがいた、カウンターを挟んでゴツい斧を持ったオッサンと話している。
やっぱり可愛いな名前聞いとけば良かったな~
あっ!チラッと目があったニコッと笑いかけてくれた!
可愛い、でも仕事中にわざわざ俺を見つけて笑いかけてくるだなんて
もしかしてお姉さん俺の事…
よし今日も良いことありそうだ!
攻性ギルド課入って左側巨大モニターのスペースに人溜まり、おや?なんだろ。
野次馬根性全快で見に行ってみると。
「また新しい死体だとよ」
「内蔵と足が無いやつか?」
「これで五件目か気味が悪ぃぜ」
「なぁそれって例の連続猟奇殺人のことか?」
「おい、モニター見ろよ更新されてるぜ犯人捕まえたら報酬に800万エーンだってよ」
「高額なのはいいけど殺しかたが気味悪いわ」
「そうよね、警察に任せましょ」
なんだか井戸端会議してるな。巨大モニターを見てみると
【アテンナの街からの依頼。最近多発している連続猟奇殺人事件の犯人の有力な情報提供、捕まえた方には報酬800万エーン。】
ふ~ん。
800万か楽して暮らすには良い金額だな。
情報提供って事は犯人を見つけて警察に教えればいいのかな?それで800万エーンか、わるくないな。
でもどんな事件か分から無いのでここは目の前の井戸端会議をやっている一団にさりげなく話し掛け会話に入れてもらおう。
そんでもって仲良くなって美味しい飯屋とか教えてもらおう。
滑らかに一歩踏み出し
「いや~本当怖いよね~連続猟奇殺人って、ところでこれどういう事件なんですか?」
一瞬の静寂
「あっすいません、俺テトラっていうんですけど。この事件について教えてもらっていいですかね?」
「えっと。君はどこかの攻性ギルド事務所のお使いとかかな?君のような子供を雇うのは感心しないな」
獣耳(兎)の男が苦笑いしながら告げてきた。
「いえっ、あの~お手伝いとかでは無くて、事件の」
「君は攻性ギルドの人間なのか?学生だろ?だったら学校に行って勉強しなさい!」
岩のような顔をした巨漢の男が嗜めてくる。
「おい!ここはガキが遊びに来る所じゃねぇんだよさっさと帰れ!」
二足歩行の犬が吠える。
「子供は帰ってママのおっぱいでも呑んでな」
ダークエルフの女が冷めた目線を向けてくる。
「おいおいママのおっぱいってバカにするテンプレじゃんかよ!」
人間の男が笑う。
「ギャハハハハハ」
その言葉を皮切りに笑う人間と亜人達。
「僕?怖い?おしっこチビったらダメだからねお姉さんがママの代わりに慰めようか?」
頭部に角がある女がバカにしてきた。
「分かったらさっさと帰りなさい、ミルクのお金位なら私が払おう」
馬と人間のハーフみたいな男がさらにバカにしてきた。
「ギャハハハハハ!」
広い室内に拡散する笑い声。
「お前らいい加減にしろ、お使いに来ただけのこの子が可哀想だろ」
ずれたフォローをする全身甲冑の女
………
コイツら全員ぶち殺していいのかな?
なんで質問しただけなのにこんなにdisられなあかんの?
うん、やろう!血祭りの刑だ!
殺しはしないがぼっこんぼっこんだ!
人が下手にでてりゃ調子に乗りやがって。
よし!showtimeの始まりだ。
苦笑いしつつも腰にあるナイフにそっと指を掛ける。
「テトラ?テトラじゃないか!」
人の気持ちを折るこの甘ったるい声は……嫌な予感はするが声の主を探す。
あっ、やっぱり。
「昨日の今日で会えるなんて凄い偶然だ、もしかしたら俺とテトラは運命の輪で繋がっているのかもな!まぁ俺の一番はミルネだから、そこは諦めてくれよ、アッハッハハ。」
うん、コウ君出会い頭にグイグイ来るのやめてほしいな。
だが周りの空気が一変する。
「おい、おれって。」
「ああ、鷹の羽三番隊コウ・オリゼだ」
「あれが有名な剣客か!」
「でもなんであの子供と仲が良いの?」
「いや、わかんねぇけど、鷹の羽の使いとか?」
「バッカ、老舗の攻性ギルド事務所があんな子供雇うわけないだろ」
明らかにざわついとる。
えっ?コウ君ってもしかして結構凄い?
そんな外野の野次を一切物ともせずにコウ君のマシンガントークは続く
「昨日は別れた後はテトラの話題で持ちきりだったぞ、若いのに立派だって。そうそうテトラ携帯の番号を交換しよう。何かあった時は力になってあげてってミルネに言われてね。勿論僕は最初からそのつもりだったがミルネと意見が一致してお互いに照れ笑いしてしまったよ。あの時のミルネは可愛かったな。テトラにも見せてあげたかったよ、ミルネの微笑む姿はあの夕陽の赤よりもっと情熱的で奥ゆかしいそれに━━」
あぁもう夕方かそういや起きたのが大分遅かったからな。
永遠に喋り続けるコウ君は無視して巷で噂の猟奇殺人事件を調べるためにパソコンに向かう。
その途中にギルド全体がざわつきだしやがった。
「おい!あれ」
「ウソまじかよ!」
「本物初めて見たよ」
「キャー!フロム様~」
「黄金の羅針盤だぞ!」
「スゲーな!俺初めて見たよ。」
何故か出入口に人だかり、
攻性ギルド課全体が一気に騒がしくなる
騒ぎの原因を見てみると。
ハイ!明らかに目立つ奴登場。
高い上背を黄金の鎧に身を固める40代位の人間の男。
短く刈り込んだ髪には白髪が混ざり顔立ちは武人。豪快が鎧を着て歩いている印象。
背中には絶対有名な奴が作ったであろう槍斧。
左側の腰にはレイピア。
………
なんだろ、あのレイピアなんか綺麗だな目が離せない。吸い込まれそう
コレが異世界マジックか!?
あっ、目があった。
レイピアに見とれているとオッサンと目があってしまった。オッサンは不適に笑い視線を正面に戻す。
ん?
黄金鎧オッサンの後ろに民族衣装っぽいローブを着た金髪のイケメンが歩いている。
あっ目が合った。
……………
絶対聞こえない距離だけど一応挨拶しとくか。
「チィーッス」
金髪イケメンは顔を正面に戻し何事も無いかのように歩き始める。
「受付嬢の綺麗なお姉さん、ギルド課の長に会いたいのだが取り次いでもらえるかな?」
デケー声だなオッサン、やっぱり豪快なイメージ通りだよ。
「はっ、ハ、イハイ!今すぐお呼び致しましゅ!」
受付嬢のエルフのお姉さん緊張で噛んじゃったよ。
「待たせて貰おう」
腕組みをして目をつぶるオッサン斜め後ろに立つ民族ローブイケメンはハードカバーの本を読みだす。
その間にも辺りはザワザワ。
コウ君はまだミルネ嬢の自慢話中、コイツ本当にぶれないな。
「コウ君、あの黄金の鎧のオッサンって有名な人?」
コウ君はミルネ自慢聞いてよとやや不満顔を向けてきたが周りの空気と俺の質問を感じとり漸く辺りを見回し渦中の人物を見た後顔を引き締める。
「テトラ、よく見ておくんだあの人はアテンナの街で最も権威と力がある最大大手の一角、黄金の羅針盤という攻性ギルド事務所だよ」
コウ君が急にマジ顔になって語りだす。なんだよイケメン!
急に真面目な顔すんなよ、あれかギャップか!そのギャップでミルネ嬢を惚れさせたのか!そういうことなのかシネ!
そして羨ましいですこの野郎!
「聞いてるのかいテトラ?黄金の鎧を纏っている方はフロム・バンズさん。
黄金の羅針盤では二番隊隊長の席にいるお方だ、後ろのローブを来ている少年は見たことは無いが、新しく黄金の羅針盤の一員にでもなるのかな?
あの若さで凄いな!テトラと同じ位じゃないか?俺達も負けずに頑張ろうな!」
あの金髪小僧と俺が同い年となるとやっぱり年齢は16~18だな。
めんどくさいから年令設定は17歳にしておこう。
後コウ君俺は頑張るつもりは無いです。人生楽しく生きたいだけだから。
とりあえず当初の予定通り連続猟奇殺人事件でも調べますか。




