無花果の回ー2
バースに教えられたアグニカ国の情報を思い出す。
地図で見た中央大陸セレイアは
中心部に神聖アグニカ国があり左側にはレテルスオード皇国、右側には三都市同盟国レペツェリオン、上部にはオゴウ民間共和国がある。
アグニカ、レペツェリオン、レテルスオードの下部にはシャーレ海峡が広がる。他にも中央大陸には色々な国があったが忘れちまった。
アグニカ国は23の区画に別れ、俺が今いる場所は海沿いに位置する区画でアテンナという名前の街。シャーレ海峡からの貿易や工業、産業が盛んな繁栄都市だが内情は富裕層や貧困の格差、失業率の高さから職が無い民が溢れ、スラムのような危険な地域が存在。
海沿いに有るが故に魔物にも狙われやすく街は腰に剣や短剣、背中には槍や斧を武装している民間人が多く、
アグニカ国23区画中18番目の治安の悪さを表現にしているかのようだ。
だがアグニカ国の何に一番驚いたかと言えば、
通りの左右にビルの群がありコンクリートで舗装された道路。
車道には白、赤、青の様々な色や型の車やバイクが走り。信号が青になっても走り出さない車に向けクラクションが鳴らされ。
舗装された歩道には人、人、人、さらに亜人、人がゴミのようにいやがる。
道行く人びとは携帯端末のような小型の移動式電話を耳に当て送話口に向けて喋ったり頷いたりしている。
その風貌も様々でチノパンにGジャンを羽織る大学生風の耳の先が尖り異様に長く体型は細身としたエルフ風な男や。
パンツルックのスーツ姿で身を固め携帯端末は10分の8が液晶ディスプレイに覆われている俺から見たらスマートフォンっぽい物を耳に当て怒りの表情と共に怒号をスマホに向けるのは犬のような獣耳とゆらゆら揺れる尻尾がある美人なOL風獣人の女性。
視線を迷わせ子供の一団を見る。
5人の子供達はそれぞれ人間、エルフ、猫の獣人の三人に見た目が完全な狐獣屬の子と何の種族かは分からないが青い肌に銀髪、額に角のようなものがある鬼と人間のハーフのような顔付きの子供達が歩きながら折り畳み式のゲーム機の様なもので遊んでいる。
通信ゲームでもしているのだろうゲーム機の画面の上には薄青色の立体光学映像を映し出し映像の行動や起きた結果に一喜一憂しつつ友情を深めているようだ。
さらに視線を別方向に向けると杖をついた老人が歩きながらスマホ型の端末を胸の前で持ち立体光学映像が起動、ニュース番組のような報道が映し出され昨日起きた事件やら今日のトップニュースの説明を始める。
「ギャハハハハ」と笑い声に目を向ける女子高生の集団、みな同じように制服に短めのスカート、茶色のコーンに詰め込まれた赤や白色のアイスクリームを食べながら何が面白いのかゲラゲラと大声をだして笑いあっている。
遠くの10階建位の高さのビルの群れ壁面には大型ビジョンが数ヶ所に設置されその内の一つからは
「今週のベスト3はこの曲だ~」
との合いの手の後に軽快なJ-POPのメロディーが流れ、その歌を歌っているであろう歌手のPVが流れる。
別の大型ビジョンでは
「今週末の天気は…」
とお馴染みの太陽、傘マークが表れマークに指差し何やら説明しているドワーフのようなずんぐりむっくりの樽型体型のスーツ姿の男、隣に立つのは助手と思わしき女性、
背は低いが明らかに成人を越えているであろう顔立ち、多分ホビット族。
大型ビジョンから様々な音楽や声が流れ、通りの喧騒をより騒がしくしている…
あれぇ~~~~~~~~?
ここって異世界だよね。俺が読んでたラノベだと大体転移先は中世ヨーロッパテイストで馬車が走ってて夜になると明かりは蝋燭のみで情報源は酒場が基本でギルドがあって……のはずなんだけど?
明らかな高度な文明。
日本の都会とあまり変わらない風景、いや立体光学映像に関しては日本より進んでるし。
予想の斜め上の遥か上空を通り過ぎた感覚。
こうなると田舎者が急に都会に来た感覚に襲われ一気にチキンになってしまう。
リョウ・シンザキの事を聞きたくても本当に居るのかも怪しくなる。
リョウ・シンザキって何処にいますか?なんて聞いた後に『リョウ・シンザキ誰だそれ?それより君田舎者だよね?ププッ田舎の匂いがすごいもん』とか言われたら俺は生きていけない。恥ずかしすぎるもうお嫁に行けない。
なんて事を路上の隅でウジウジ考えていると時間ばかりが過ぎさる。
このままではダメだ日本にいた時と同じになってしまう、志向を切り替える。
とりあえず人の良さそうなおじいちゃんに話し掛けてみよう。
「あの~すいません」道行く優しそうなおじいちゃんに話しかける。
おじいちゃんはこちらを見ると興味を失った猫のように俺を無視して歩き出した。
へっ?無視?
心が氷点下にまでさがるぞオイ!
きっと年寄りだから耳が異様に遠いんだろう自分に言い訳をして。次は買い物袋を下げているおばちゃんに声がけ。
「あの~すいません。ちょっと教えてほっ」
二度目のガン無視、正確に言えば此方をチラッとだけ見て直ぐに視線を元に戻して背を向け歩き出す。
ヤバッ泣きそう……
その後もめげずにトライするものの10人中10人に無視されてしまう。
ーーー
バサバサバサ
海鳥が豪快に羽ばたきピュリピュルと変な鳴き声を発しながら大空を飛んでいる。
コンクリートの縁に腰掛け足は空中にブラブラ 、目の前の雄大な海に心を預けている。
「海は何時でも孤独を忘れさせる」
街での聞き込み開始から数分で港に戻った俺。
道行く人次々に無視される事態に深く傷付き海を見て心を癒そうとするのは当然の摂理だ。
左右後方を見る。
海鳥の声の他にも海産物を売る露店の店の声、買い物袋を下げている主婦の声や、学生のカップルが串に刺さった魚の切り身をお互いにアーンしあってたり。
業者がフォークリフトで発泡スチロールの山を運んだり。
ずっと先の目につく限りは港も人や亜人で賑わっている。
アテンナの街は人がいっぱいだな…
この中に俺に優しくしてくれる人は何人いるんだろとマイナス思考に陥ってると
「おい!奴隷のガキが鎖も付けずに何してんだ」と喧嘩売ってる感満載の声
後ろを振り向くと筋肉ムキムキで上半身裸下半身は紺のズボン、顔にも紺色の覆面を被った男が話しかけてきた。
「カンダタ」思わず呟いてしまった。
「あ、カン?まぁいいそれより何で奴隷が鎖もつけずにウロウロしている主人はどこだ?後ろじゃねぇ!ガキテメェに話しかけてんだ!」
なんとまぁ高圧的なりあえず無視しとくかトラブルの匂いがプンプンするし。
「おい、奴隷なら奴隷らしく返事を返せ」
こいつは何をもって俺を奴隷と決め込んでるんだろ
……アレ?
海に視線を戻そうとした時
遠くの方で同じ灰色のボロ布を身に纏った数人の子供がいた皆首輪、足首には足枷が嵌まり歩きずらそうにしながら数十人は入れそうな檻に向かって歩いている…既に何人かは檻の中で体育座りし虚ろな目をしている。
アレってもしかして奴隷商か?
しかも皆子供ばっかり…
「おい!カンダタあの子達は奴隷か?」とりあえずカンダタを睨む。
「さっきから何だカンダタってのは!!お前も奴隷だろガキ!
丁度良い俺達サウス商会がお前を奴隷として拾ってやる。さっさと奥のガキどもと一緒に檻に入れ?」
豪快に唾を飛ばしてカンダタが叫び俺の腕を掴みにかかるが
「おっそ…」
オークと戦った時と同じだな敵対する奴が攻撃のモーションに入ると相手の動きがスローモーションになる……ん?攻撃のモーションがスローモーション思わぬ所で韻を踏んでしまった!
軽く回避して港の縁まで歩き目の中に怒りの炎を燃やしながら一隻の船を捉える!
目の前のカンダタよりも今俺の怒りをランキングするとこうだ
第一位
奴隷服を満面の笑みで渡してきたバース
第二位
奴隷商の糞共
第三位
顔面に唾を飛ばしまくってきやがったカンダタ
一位に関してはもうどうしようもないな船が出発して結構時間がたったし、絶対してやったりとか思ってんのがまたムカつく。もしバースに会うことがあるなら蝉の刑3時間だ!
さて…後ろを向くとカンダタが睨みながら此方に歩いてくる肩が怒りで上下してるのがまた滑稽だ。
あえて胸ぐらを掴ませ殴りかかってきた所を
「ヤーーー!」どうでもいい掛け声と共にカウンターでワンパン!
カンダタの鼻っ面にクリーンヒット!
鼻を抑えながら後ろによろけ膝をついたカンダタの顔面目掛けて
適・当・キック!
これまた見事なクリーンヒット!
大きく身体を反らせ地面に寝そべる意識を失ったカンダタのズボンとパンツを脱がす。
「これぞスッポンポンの刑だ!」
そう叫ぶと、周りの通行人達がざわざわと叫び始める。
カイ○か!と心の中でツッコミ子供奴隷達の元に歩くと。
「おい!何してんだテメェ!」
「こいつ殺すか」
カンダタ二号とカンダタ三号が現れた!コイツらも紺の覆面被ってるよ。ダセェと思わないのかな?
とりあえず無視して子供奴隷がいる檻の前まで行くと、カンダタ二号が蹴りを放ってきた。
「遅いってことで。」
蹴りをかわして俺も蹴りでカウンター!軸足の内腿にヒットした後、前方に崩れるように倒れたきた丁度良い位置に顔面が迫ってきたので膝蹴をお見舞い衝撃で後ろに倒れる二号。
俺無双!と思いつつカンダタ三号に振り向くと腰に差していた寂れた剣を片手で斬りかかってきた、が華麗に回避、懐に入り込み鳩尾に正拳突きを連打!
連打!
連打!
スッと横に移動カンダタ三号は胃液を撒き散らしその上に突っ伏す。
ふっ、まさか通信教育で習った空手がこんな所で役に立つとは。
「やれやれだぜ」と呟き周囲を見るとざわざわから「うわっ」と言う悲壮感漂う声に変わる!
おや?悪役を倒したヒーロー的な感じで拍手喝采がくると思ったが…なんか不味い事しちゃったのかな…
急に不安になったので近くにいた獣人に話しかけると
「あの~」
「ヒッ」っと小さく叫び駆け足でその場を去っていく。
その他の周囲の人達も目を会わせまいと逃げ出していく
露店の人達も店じまいと言わんばかりに片付け初める。
あららやっちゃった?
アグニカ来てそうそうに…でも絡んできたのはカンダタだし俺は悪くない。正当防衛を内心で主張してると
「何の騒ぎだ!」場の空気を一掃するような清涼な声が響き渡った。




