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赤リンゴの回




夢を見た




真っ暗な空間に俺は立っている

360度何も無いどこまでも暗闇だけが続く空間、何もない空間の唯一の光源である光玉を見上げる。


人の顔ほどの大きさの光玉は不規則なリズムで上下に揺れ放出する純白の光もこれまた不規則に強弱をつけているのを口をポカンと開け見るともなしに見ていると



手嶋虎雄てじまとらおはもうすぐ死にます」



柔らかな女性の声で名前を呼ばれた

俺の身長より高い位置で不規則に上下移動する光玉を見続けややあって俺は「はい、」だか「はぁ」だののあやふやな返事をする。


「手嶋虎雄の死は余りにも理不尽」


重く緊張させる言葉は続く


「故の救済お送る。

新たな世界で何を手にしますか?」


新たな世界って、何?えっと、急に言われても俺どうすればいいの?

これ夢だよね?

何をどう答えていいか分からない俺は声の発生源である光玉を見上げる

厳しくも母性溢れる真っ白い光は空中で酷く悲しい雰囲気を醸し出す



「………………」



「………」


俺の沈黙と光玉の沈黙が加速度的に空気を微妙にする



どうすればいいの?

頭の中をグルグルと色んな思考がごちゃ混ぜになる、まずここどこ?夢?もう俺は死んだの?状況が飲み込めねぇよ!?救済って何?何を願えばええねん?

と最後には使ったこともない関西弁が出るほどに軽くテンパっている



「沈黙が答えですか?」


「えっ!?あっ、ちょっと待ってください!」


思わず叫んでしまう

どうしよ、何か言わないと!どうしよ、いっそきゅりー○みゅぱ○ゅになりたいとか言ってみようかな。ダメだ願いかブレブレ過ぎる……落ち着け俺!33歳のいい歳したオッサンがきゃりーになっても気持ち悪いだけだ

そもそも理不尽で死ぬんでしょ俺、だったら


「じゃあ…」


一旦言葉を区切り光玉を見上げる


「じゃあその、理不尽を跳ね返せる何かが欲しい、とか?」


光玉は俺の言葉に返事をせず空中を退屈そうにたゆたっている

折角なんで色々言ってみよう


「後はそうだな。ファンタジーな人生を歩みたいかな俺の人生THE・普通だったし」


33歳で定職にもつかずアルバイト生活、結婚もせず趣味に生きる俺は普通ではなく駄目な部類かも知れん

そんな心のツッコミを知りませんとばかりにまだ光玉は沈黙しているので続けてみよう


「後は電光石火的な、スピードの向こう側に行ってみたい、とか?ひき肉にしてやんよ的な!?そんな年代に戻りたいと思わなくもなくもない今日この頃的な…」


先日某疾風伝説 特攻の○を全巻読破したのでのりで言ってみる。

だが完全な悪ふざけで言ってみたがどうだろう?

手を組んでうんうんやっている俺は光玉が返答が無いことに焦りチラッと半目で様子を伺うと



純白の光がさらに輝きを増し淡い光の粒子が人の姿を作っていく。


輪郭が定まり色を取り戻したそれは女神という言葉がぴたりと当てはまる

女神が目の前に降りてくる

綺麗よりも美しいと思ったのは人生で始めてだ、触れてはならない美しさがこの女性を女神と思わせる要因なのかもしれない。


腰まである髪はどの宝石よりも美しい金色

白いワンピースのようなローブが揺れ服越しでもはっきりと分かる男の情欲をそそる身体つき、だがそこに性は感じない、正確には性は感じる

だが感じた瞬間に女神は踵を返し何処かに消えてしまう儚さがある、故に性を感じてはいけない

顔の作りは最早言うまでもない言葉にしてしまうとかえって失礼だ、全ての称賛を送ったとしても女神の美は表現できない




見とれる



しばらく見とれていると女神はゆっくりと俺に近づく




近い






近いぞ!





これ大丈夫か!?大分近いけど!!!




「ーっ!!」



ゆっくりと顔が近づき唇が触れあう



数秒経った後に女神は離れこの世の花を全てかき集めたとしても足りない笑顔で俺に笑い掛けた後に淡い光になり消えていく。


女神の唇が動いているがその言葉は音を失っている為俺の耳には届かない







そんな夢を見た気がする。


辺りを見渡すと見慣れた六畳一間のカビ臭いアパート、寝汗のせいで煎餅布団が気持ち悪い



余りにも強烈な夢だったので誰かに言いたいと思い携帯を手に取るが数秒で特に親しい友人がいないことに気づき携帯を布団に投げる


一瞬で気持ちが冷却する

友達なんていないさ!

この前中学の同窓会の案内がきたけど舜殺で破り捨ててやりました!


掛け声は「はじけてまざれ」です。




さて……




今日はバイト休みだし薄い本でせん○りでもして充実した休日でも過ごそうかな

そんな平凡な春うららな長閑な日、

俺の運命を大きく変える出来事が起こった。


なんて紋切り型な定型文は使いたくないけど本当に起こりやがった。



ピンボ~ン



インターホンのベルが鳴る



ん?平日の昼間に我が家に訪ねてくる者は誰もいない新聞の押し売りか何かかなと思いとりあえず無視。



ピンポ~ン



ピンポ~ン









ピンポ~ン








ピンポ~ン

ピンポ~ン




ピンポ~ン、ピンポ~ン、ピンポ~ン、ピンポ~ン、ピンポ~ン、ピンポ~ン、ピンポ~ン、ピンポ~ン、ピンポ~ン、ピンポ~ン、ピンポ~ン、ピンポ~ン、ピンポ~ン、ピンポ~ン、ピンポ~ン、ピンポ~ン、ピンポ~ン、ピンポ~ン


しつこい!何コイツ、どんだけ鳴らすんだよ!

一言言ってやろうと思い玄関まで移動。


鍵を開錠し勢いよく扉を開けると同時に

「あの何か用です―――」



大量の怒り成分を含んだ俺の言葉は誰に届くわけでもなく空中に四散する



誰もいない……

イラッ!

腹立つ~何なんだよ帰るならさっさと帰れや!

内心でぼやきながら、扉を閉めて振り返ると。




部屋の真ん中に真っ黒い人が立ってました。



うん


もう一度言うよ



部屋の真ん中に真っ黒い人が立っていました。


目をバシバシ開閉&二度見、三度見、何なら四度見、最終的には五度見したけども目の錯覚じゃあなく黒い人はいる


へっ?何?誰?どうやって入ったの?っつか…誰?っていうか怖い!


部屋にいる人物は黒い布のようなもので全身を包み顔は口元だけが見える、体格は俺と同じ位の中肉中背、幽霊?いやっ違う足はある靴も履いてる。

ってか土足禁止だよ!いやっそんな事はどうでもいい!何かとにかくヤバ!


逃げようと思って玄関のドアノブに手をかける、



あれ、開かない!?なんでや!鍵は開いてるのに開かない!

なっな、なななななんだこれ!


恐怖で頭がパニックになっていると



【みしり】

靴で畳をを歩く音


振り替えると黒い奴が此方に向かって歩いてきてる!



「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!」

恐怖のあまり大声で叫ぶ!

扉を壊す勢いで殴ったり蹴ったりしりドアノブをガチャガチャやるが一向に扉は開く気配が無い



ヤバい!ヤバい!ヤバい!ヤバい!ヤバい!ヤバい!ヤバい!ヤバい!ヤバい!ヤバい!ヤバい!殺される!




…………





一瞬の静寂、

足音が止んだ

恐る恐る後ろを振り向く。



「っつ!」

黒い奴はやっぱりいる……今度は目の前



恐怖により思考停止、唇かガクガクと震える

黒い奴はゆっくりと掌を俺の顔に向けてくる。

人間の掌だ、

「なっ、何を、」声にならない声をだす。


黒い奴の口元がゆっくり動き何かを呟いている

「また会いましょう」黒い奴が喋ったモザイク処理されたような変な声で。


次の瞬間俺は意識が遠のく


薄れ行く意識のなかで見慣れた部屋が視界に入る。

床に突っ伏しながら最後に視界に飛び込んできたのは使おうと思って押し入れから取り出しておいた同人誌。



(そうだ、アレをおかずにしようと思ってたんだ。)









どうでもいいわ









暗闇に意識を奪われながらどうでもいいツッコミを自分自身にいれた。

最後までお読み頂きありがとうございます。

感想、評価等々良ければお願いします。

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