ティナの目覚め
私が目を覚ましたのは、マナ欠乏症で意識を失って四時間後だった。今回は比較的早く起きることが出来て安心したよ。皆を手伝えなかったのは申し訳ないけどさ。
それにしてもフェルはチートだ。まさかあんなに巨大なセンチネルウォーカーを一撃で倒しちゃうなんてね。ビックリして無茶が祟って倒れちゃったのは恥ずかしいけど、お陰で大勢の命が助かったんだから文句はない。うん、フェルは凄い。
目覚めて直ぐにアリアが知らせてくれたんだけど、センチネルウォーカーの攻撃でドライブシステムに異常が発生したらしい。目の前の事で必死だったから気付かなかったけど、センチネルウォーカーは荷車を攻撃する前に何度か母艦を攻撃したみたいだ。
シールドで防いだんだけど、あの巨体から発射されたビームは大出力でシールドジェネレーターにかなりの負担をかけたみたいで、急遽ドライブシステムのエネルギーもシールド維持に回したから影響が出たんだって。
「ハイパーレーン航行速度の大幅な低下により、アード到着は地球時間で明日の正午となります。到着後に修理を行うことを強く推奨します」
「時間が掛かる感じ?」
「んーん、宇宙ステーションのドッグがあれば簡単に直せるよ。多分一日も掛からないと思う」
「メカ関係は良くわからないからフィーレに任せるよ」
「ん、任された」
長く時間が掛かるならって心配したけど、取り敢えずフィーレのお墨付きが出たから安心かな。
「ティナちゃん、今回助けた人達だけど、セシルちゃん達と同じ扱いをした方が良いと思うよ☆」
「うん、そのつもりだよ」
ばっちゃんと相談して、ゼバ星系の皆さんは月面にある居留地へ連れていくことにした。ばっちゃんがよく言うミドリムシ対策だ。
それについて私も異論はない。あの人達は大嫌いだし、生き残りの皆さんや、特にセシリアに対してどんな対応をするか分からないからだ。
まあ、フェルの立場を思えばロクな扱いを受けないのは分かる。それに、大勢の妊婦さんが居るんだ。出きる限り負担は避けたい。
「となると、アードへ戻ったら朝霧さん達を回収して直ぐに地球へ向かわなきゃね」
居留地には充分な設備があるし、セシルさん達は皆経験者だ。妊婦さん達も安心できるはず。
出産時期については、ばっちゃん曰く魔法である程度は調整できるらしい。ただ、それでも限界はあるから出来るだけ早く落ち着いた環境を用意してあげたい。
「そうなるかな☆まあ、ザッカルちゃんも準備は充分にしてるから直ぐに出発できるはずだよ☆」
「あっ、そっか。ザッカル局長も一緒に来るんだよね。お部屋は足りるかな?」
銀河一美少女ティリスちゃん号、元になったデストロイヤー級重巡洋艦は居住性が高くない。ゼバ星系の皆さんを乗せてるからちょっと心配だ。朝霧さん達のお部屋もあるし。
「そこは大丈夫だよ☆今回は地球に常駐させる戦力として、ハンマーヘッド級を二隻連れていくからさ☆」
「あっ、そうなの?」
ハンマーヘッド級駆逐艦は、プラネット号の同型艦だ。センチネルはもちろん、またフロンティア彗星みたいなものが来たら大変だからね。戦力は多いに越したことは無いよ。
ちなみに地球の為政者達からすれば、急に宇宙戦艦が二隻追加される現実に胃を痛めることになるが、ティリスとしては地球側への抑止力としての意味合いもあるのでサプライズとして黙っていたりする。閑話休題。
「じゃあ、今は気にしなくて良いんだね?」
「そうだよ、ティナちゃん☆それに、今回はザッカルちゃんだけだからあんまり気にしなくても大丈夫☆」
「一人だけ?サポートする人は居ないの?」
「サポートは私が行いますので御安心ください」
「あっ、そっか。それなら安心だね」
アリアが居るんだし、その辺りは問題ないか。地球と違ってAIが補助するから人員も少なくて済むのかな。
ばっちゃん達と簡単な打ち合わせをした後、助け出したゼバ星系の皆さんの様子を見に行った。
私が眠っている間にフェル達が差配して、ちゃんとお部屋を用意してくれた。手伝えなかったのは申し訳無いけど、取り敢えず皆さんが元気そうで良かった。
「改めて感謝を捧げたい、ティナ。体調はどうだろうか?」
「うん、もう大丈夫だよ!心配かけてごめんね、セシリア」
「それは良かった。恩人である貴女の身に何かあったとなれば、我々はどう償えば良いかと……」
「あはは、私がマナ欠乏症で倒れるのはいつもの事だから心配しなくて良いよ」
「いや、いつもの事ではいけないのでは……?」
「それがティナですから」
フェルが困ったような笑顔を浮かべて、セシリアがちょっと引いてるよ。
「そっ、そうか……こほんっ!ともあれ、貴女が眠っている間に長と話をしたんだ。どうすればこの恩に報いることが出来るのかと」
「そんな、気にしなくても良いよ。助けたかったから助けただけなんだから」
見返りを求めた訳じゃ無いからね。
「その気持ちは嬉しいが、それでは我々の気が収まらん。だから、貴女のやっていることを手伝わせて欲しい。知らないことばかりではあるが、役立てることもあるはずだ」
「それはとっても嬉しいよ!でも、良いの?」
一緒に旅をする仲間が増えるのは素直に嬉しい!
「もちろんだ。それに、貴女の傍に居ることが結果的に皆を護ることになる。長からそう言われてな。私個人としても、ティナの旅路に興味がある。もし迷惑でなければだが」
「迷惑だなんてとんでもない!大歓迎だよ、セシリア!フェル!仲間が増えたよ!」
「良かったですね、ティナ。セシリアちゃんも、これからよろしくお願いします」
「ああ、こちらこそよろしく頼む。まあ、先ずは色々と話を聞いたり馴れたりするのが先になるが」
ハーフのセシリアが仲間になった!
……なんかドラ◯エの音楽が流れたような気がするけど、気にしないでおこう。
セシリアへの説明をフェルに任せて私は一人で居住区へ向かった。目的地は、クレアの部屋。ゼバ星系に辿り着いてから顔色が悪かった。本人は精霊の仕業だって言ってたけど、それだけじゃないのは色々鈍い私にだって分かる。きっとクレアの秘密の事だ。そう考えていたら……。
「ティナさん……」
今にも泣き出しそうなクレアが、フラフラしながら近付いてきた。よし、覚悟を決めよう。
「クレア、ちょっとお話ししよう?」
クレアの秘密も受け止める!




