日米首脳会談
箸休め……?
ご感想ありがとうございます!中々返信できませんが、いつも繰り返し読み愉悦に浸っておりますぞ!
同じ頃、地球の日本。新東京国際空港は厳重な警戒体制が敷かれていた。その理由は、大統領専用機から姿を現したハリソン大統領の来日である。
『ただいまハリソン大統領が空港へ降り立ち、椎崎首相と固い握手を交わしています!これから会場へと移動して、日米首脳会談が開かれる予定です。
今回合衆国側からの要請で急遽開かれることとなった日米首脳会談、主題はやはり世界を騒がせている対アード政策についてと思われます。
現在アード交流に於いてリードしている日本と合衆国両首脳による緊急首脳会談には、各国も注目を集めています。
国内外からは交流を独占しているとの批判の声がある中、どの様な合意がなされるのか注視していきたいと思います』
大勢のマスメディアが集まり、公共放送を含めて日米首脳会談の動向を挙って報じた。
ただ、日本のとある放送局だけはその流れに抗わんと何故か子猫特集を組んで別の意味で話題を生んだ。
『また可愛らしい特集をwww』
『こいつらはなにと戦ってるんだ!?www』
『いやまあ、和むけどな』
『政治の難しい話の息抜きにはなるんじゃないか?』
生きとし活ける全ての生命に祝福あれ!全ての邪悪に災いあれ!異星人対策室のジャッキー=ニシムラ(キューティー◯ニー)だ。
今回私はハリソン大統領に同行して父祖の国を訪れている。主目的は、日本にある地球外技術研究センターとの交流促進と、情報交換だ。
その予定が組まれた際に、ハリソン大統領直々の指名でご一行に同行することとなった。
大変な栄誉である。本来ならばケラー室長が選ばれるはずだったのだが、国内情勢を鑑みて日系人である私が選ばれた。
……選定基準が些か意味不明ではあるが、別に構わない。室長のお役に立てるならば異議などある筈もない。
また今回は同行者兼護衛としてメリル女史が一緒だ。ロンドンでの活躍、継続的に行われた調査によって彼女の身体能力は既に地球人のそれを凌駕していることが判明している。地球でこれ以上に最適な護衛は存在しないだろう。
「お馬鹿な格好は無しよ、ジャッキー。日本人は貴方に慣れていないんだから」
黒いレディースーツに身を包んだメリル女史は、別の意味で注目を集めている。まあそうだろう。少なくとも合衆国や日本の一般的な価値観では飛び切りの美人だからな。
しかもそのレディースーツは特別製、敢えて言うならばフィーレ嬢が地球の衣類を参考にしてクラフトしてくれた逸品だ。
常識外れの伸縮性を誇り、あらゆる柔軟な運動を可能にしている。何より、その肌触りの良さと柔らかさからは想像も出来ない頑強さだ。
実験の結果、合衆国最大の対物ライフルを至近距離から発砲しても穴が開かなかったし、衝撃も全て吸収されてしまったのだ。
その場に居合わせた私も唖然としたが、フィーレ嬢が「地球の鉄砲って弱いね」と漏らして参加していた軍人達が落ち込んでいたのは中々シュールな光景だったな。
隔絶した技術力を改めて見せ付けられたよ。
「承知しておりますとも。父祖の国の人々はシャイだと聞きますからな」
以前来訪した際も、些細な行き違いによって現地警察に迷惑を掛けてしまったからな。私だってその程度の常識は持ち合わせている。常識と言う言葉は、あまり好きにはなれないが。
「しかし、羨ましい限りですな。映像は見ていましたが、本当に若返っていらっしゃるとは」
「あら、ハリソン大統領もお願いしてみては?ティナちゃんは喜んでドリンクを提供してくれますよ?」
「実に魅力的なご提案だが、合衆国だと色々ありますからな。ご遠慮しておきますよ」
いやはや、話には聞いていたが、ミス椎崎は本当に若返っているな。日本の制服を着れば、カレンお嬢様と変わらぬくらいではないか?
女性としては喜ばしいことであろうが、威厳やメンツが大事な政治の世界では何かと大変であろうな。
我々一行は東京の高級ホテルへ移動し、そのまま首脳会議を開催した。到着したその日の開催は些か性急に見えるが、他にやることが山程あるからな。出来るだけ表向きの話は早く済ませておきたいのだ。
今回会談に通訳は同席しない。何故ならば、椎崎首相とハリソン大統領は共にティナ嬢から提供されたアードのブレスレット型デバイスを持っているのだ。
地球の通訳や翻訳機よりも遥かに高性能でスピーディー、そして誤りがない。採用しない理由はあるまい。
今回の会談では両国のあらゆる分野での連携強化を確認し、対アード外交で歩調を合わせることが合意された。
また、日本がハリソン大統領が提唱する地球統一連合へ参加することが公式の場で決定した。記者団がどよめいているが、まあ茶番だな。
既に両者はアリアのシステムを介した秘匿通信会談を何度も開いて、双方の政府で合意は出来ているのだ。世間へ向けたアピールと、一部の国に対する牽制の意味合いが強いな。
まあ、世論は荒れるだろう。荒療治ではあるが、悠長に構えている余裕はない。ある程度の混乱は覚悟の上だ。
さて、無事に首脳会議を終えた我々はそのままホテルで休むことになった。だが、私の仕事はここからだ。
日本政府が用意してくれた車に乗り込み、富士山近郊に存在する地球外技術研究センターへ向かった。父祖の国の象徴であるマウンテン・フジは私の心を熱くさせてくれた。実に見事だ。
「貴方が異星人対策室の方ですな?私は豪徳寺と申します。地球外技術研究センターの所長を務めさせて頂いております」
私を出迎えてくれたのは、非常に強面な男性であった。しかしながらその風貌とは真逆の穏やかな気風を感じる。
「これはご丁寧に。異星人対策室のジャッキー=ニシムラです。父祖の国へお招き頂きありがとうございます。どうか、宜しくお願いします」
「ニシムラ……なるほど、日系の方でしたか。ようこそ日本へ!」
我々はしっかりと握手を交わした。その瞬間、全身に電流が走った。それはまるで、失われた半身を見付けたような……奇妙な感覚だった。
それはセンター長も同じ様で、私と同じく唖然としていた。そこからの行動は早かった。私は持っていた荷物を手早くセンター長へ手渡した。アードからの交易品であるトランクだ。
異星人対策室で管理しているものを地球外技術研究センターへ運ぶついでに、資料等も中に収まっている。
いつ見ても素晴らしい魔法具だ。物流や在庫管理の概念を根本から変えてしまうだろう。
センター長も直ぐにトランクを控えていた職員に手渡した。よし、ゆとりの時間が出来た。
振り向くと、いつの間にか背後に回っていたセンター長の衣類が変わっていた。全体的に黄色い……国民的な人気を誇る電気ネズミのコスプレだ。鍛え上げられた肉体に愛らしい装飾が実によく似合う。
だが私も負けてはいない。同じく国民的なゲームキャラクター、あのゴリラのコスプレだ。残念ながらネクタイ以外に腰を隠す必要が生じて完成度が下がってしまったが、淑女も居る場で局部を露出するわけにもいかないからな。
我々は双方の本質を理解することが出来た。
二人は熱い抱擁と握手を交わし、待機していた警備員にそのまま連行された。




