10話「闘技会③」
闘技会3日目、会場は大いに盛り上がりを見せていた。
それは議長国であり、王国民たちが自分たちの国の護衛が勝ち上がっているからに他ならない。なんかそんな感じが俺には伝わってくる。
昨日はあの後の試合で、獣国が勝ち上がり今日はその対戦のみである。
王国vs獣国での試合だ。
念入りに体を動かし準備運動をすると、傍で腕を組んだサナダさんが話しかけてきた。
「ほう、そうやって体を解すのでござるか。今度ご教授願いたいものだ」
「いいですよっと! ……いいんですか? こんなところにいて」
「大樹様は、別の護衛がついているでござる。それにしても、ラピス殿との対戦とは……拙者としても戦いたかったでござるな」
「すいません、お先に戦わせてもらってきます」
「頑張ってくるでござるよ」
そう言って控室から出て、舞台へと上がる。
もうすでにラピスさんがそこにはいた。
……なんか毎度遅刻してるみたいだな。
俺が舞台に上がると、うおーーーという歓声のすごいこと。
俺は腕を上げてアピールしながらも、じっとラピスさんのところへと向かう。
「戦いぶりを見た限り、お前は僕のライバルになるだろう」
「ラピスさんにそう言ってもらえてうれしいです」
「うむ、戦士の顔つきだろう。共にいい戦いができるだろう」
「ええ、よろしくです!」
そうしていよいよ試合開始となる。
今回の俺は、無手だった。
なんせ――
――ヒュッ!
「っと!」
相手は兎獣人らしくトリッキーな動きで、武器を振るっては距離を取ってくる。
しかもこちらもそのタイミングで掴み投げようにも、強烈な後ろ蹴りで牽制してくるのでなかなか掴みづらいのだ。
というわけで、俺は構えを変えて自分から仕掛けにいく。
「!?」
接近戦を仕掛けてきた俺を意外に思ったのだろう、そこから避けや防御に回ったラピスさん。一方俺は蹴り、回し蹴りとたまに拳を繰り出すというラビィとリンスの攻撃の型で相手へガンガン向かっていった。
「集円脚!」
蹴りによる風を生み出し、そしてラピスさんを捕らえると自分の間合いに取り込んで回し蹴りを決めるラビィの技を拝借させてもらう。
ラピスさんは狙い通り引き寄せられるが、強烈な後ろ足の踏み込みで俺の間合いから脱した。
俺も回し蹴りを中断すると、後ろへと後転して距離をとった。
互いに間合いを取り合い、じりじりと近寄っては一撃を与え合いそして離れる。
いいのを貰ったりするが引いてダメージを逃しているので自分のダメージ的には大したことはない。こういう時のための体さばきも動画で研究済である。
俺のほうもラピスさんへと攻撃を繰り出していいのを与えている。
なんか消耗戦っぽい感じになっているが、俺のほうは身体強化も使わされているので余裕がない。それほどにラピスさんは強かった。
俺が狙っているのはある種の大きな隙だ。
昨日の作戦の体力消耗作戦は、こっちが半分にしてもあちらの体力を半分にしても獣人自体が異常な体力をしているため、潰れるのはこっちが先かもしれなくてさすがにそんな賭けには乗れない。
なので、できるのは隙を狙うことだ。
「すごいだろう。獣人にこうまでついてこれるその身体能力……さすがの僕も驚きだろう」
と言ってきたので、俺も返した。
「はぁ~……いやいや、精一杯ですよ」
その言葉にニヤっと笑うと、ラピスさんが接近してきた。
カウンター狙いで待つが途中でいきなり動きを変えて直角に攻めてきた。
それを、待っていた。
俺は半減の力を自分の足に最大限に使い、接近した後――
「――流転蹴脚!」
相手の攻撃を片足で受け、体を捻り逆側の足でラピスさんの延髄に蹴りを決めた。
その攻撃にラピスさんは昏倒したため、俺は勝ちを拾ったのだった。
うおーー!という会場の盛り上がりに手を振ってこたえるが、足がとにかく痛い。
いわば足の合気道みたいな感じでやってみたのだが思ったよりも相手の攻撃力が高くて流しきれなかったみたいだ。
流し斬りは入らなかった状態である。
ともかくこれで、明日は俺と帝国側の護衛とでの決勝になる。
俺は、ラピスさんを起こすと声をかけた。
「ラピスさん、ラピスさん」
「ん……うーん。……どうやら負けたようだろう」
「ナイスファイトでしたよ、ラピスさん」
「足でもあんな攻撃ができるとは思わなかっただろう。完敗だろう」
「いえ、俺も足で受けきれなかったので結局ちょっと痛めちゃいました」
と言って立ち上がらせると、前日に続いて割れんばかりの拍手が送られた。
ラピスさんと握手をして別れ、そして控室に帰ってくると何やら血を流したサナダさんが倒れていた。
「ちょ、サナダさん!」
「あ、ああ。……どうだったでござるか」
「いや、勝ちましたけど……サナダさんこそどうしたんですか?」
「いや何、帝国の小僧が何やらしようとしていたのを止めようと……ごほ」
「サナダさん!」
どうやら意識を失ったようだ。
にしても……あいつか。
何をしようとしていたのか、そしてサナダさんをこんな目に合わせたのか。
それが気になるところではあるが、係の人を呼んでサナダさんを運んでもらった。
幸いあの後、サナダさんは無事であることがわかったのだが――
「これは……ラノベの帝国だな」
「どういうことですの?」
「いや……なんでもない」
俺は合流した仲間たちとともに会場を出ながらも明日に向けて、十分に警戒することにしたのだった。




