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7、噂を知らずとも、本能で察する

いつのまにやら92,000PV突破……

ありがとうございます!

 調査局の職員が「呪いの人形」について話していたころ。

 フリーマーケットを行う予定の一年生のクラスでは、何を持ち寄るか、手作りしたものを出品してもいいか、そして、その価格帯をどうするかの相談が行なわれていた。


 「クラフト品は出して大丈夫だけど、価格は抑えめにする?」

 「百均とかで材料はそろえられるだろうし、百円とかでもいいんじゃない?」

 「百均で材料買って百円でって、ぼったじゃないか?」

 「ものによっちゃ、種類そろえないといけないのもあるだろうし、妥当だと思うけど?」


 様々な議論が飛び交い、結局、クラフト品の価格は百円。食器類、衣服類は百五十円。その他のものについては、五百円を超えない範囲にすることで決着がついた。

 問題は持ち寄る中古品だったのだが。


 「赤ん坊用の服とか、古着くらいでよくね?」

 「使ってない食器とか弁当箱とかもいいんじゃないかな?」

 「それなら、もう読んでない絵本とかでもいいんじゃない?売れ残っても、学校で預かってもらって保育園とかに寄付してもらうとかできそうだし」

 「なら、おもちゃとかも?」


 こちらも、活発な議論が始まっていた。

 だが、こちらの議題は先ほどと違い、すぐに決着がついた。


 「持ち寄るのは靴下や下着以外の古着、ハンカチ、未使用の食器や容器、それから玩具類のみ。ただし、玩具類に関しては人形や幼稚園児が遊ぶようなもの限定で、ゲーム機やゲームソフトはなし。一人三品までで、価格帯は種類によって分ける。こんな感じでいいかな?」


 進行役を務めていたクラス委員長が最終確認のため、全員に問いかけた。

 特に反論もなかったため、全員賛成と判断し、書記に頼んでフリーマーケットの最終案を黒板に箇条書きでまとめてもらった。


 「それじゃ、これを最終決定として、次は飾りつけとか教室内の配置を決めていこう」


 一つのことが決まると次々にほかの議題に移り、決めておかなければならない諸々は、その時間のうちにすべて決定した。

 これ以降は、時間の合間を見て作っていくことになるため、今度は口よりも手と足を動かす作業が多くなる。

 委員長はひとまず、この日は解散することになった。

 放課後だったということもあり、クラスメイトたちは何を持ち寄るか、何を作るかを相談を始めたり、部活動に向かったり、家に向かったりと、各々自由に行動し始めた。

 かくいう委員長も、生徒会に提出する書類をまとめ始めていた。


 「なぁなぁ、委員長」

 「ん?どした?」

 「委員長は何か持ってくるのか?それとも作るのか?」


 唐突に、一人のクラスメイトが委員長にそう問いかけてきた。

 委員長はその問いかけに腕を組んで考え込み始めた。

 こればかりは、さすがに自分で勝手に持ち出すわけにもいかないため、両親と相談してから決めようとしていたのだ。


 「ん~、どうすっかなぁ……あ、でもいい機会だから『あれ』を持ってこようかな」

 「『あれ』って何さ?」


 委員長の口から出てきた『あれ』という単語に、話しかけてきたクラスメイトが反応した。

 本当なら、あまり詮索しないほうがいいのだろうが、初めての高校での学園祭ということもあって気分が高揚しているのか、そんなこともすっかり忘れているようだ。

 一方の委員長は、話していいものかどうか悩んでいるのか、目を閉じ考え込んだ。

 だが、話しても構わないと判断したのか、その質問に答えを返した。


 「家に置いてある人形だよ」

 「人形?あれ、委員長って姉貴とか妹とかいたっけ?」

 「いないよ。けど、母さんが一目ぼれしたらしくってさ」

 「へぇ……てことはけっこういい人形だったりするの?」

 「あぁ、かなりの美人さん」


 人形を美人と称するあたり、委員長も大概なのではないか、と感じつつ、同級生はさらに質問を続けた。


 「けど、いいのか?それってけっこう価値あるんじゃないの?」

 「うん……けど、最近、なんだか気味悪くなってきてさ」


 そう話す委員長の顔は、若干ながら青ざめているように感じた。

 人形が気味悪い、と思うことはまれにある。

 アニメや特撮のキャラクターの人形は、『架空のもの』とわかっているからか、それとも『このキャラクターだ』と認識できるからか、薄気味悪さを感じることは少ない。

 が、どこの誰ともわからない人間をモデルに作られた人形、特にマネキンや蝋人形というのは、なぜか気味悪く感じる時がある。

 それは、その人形が何者なのか認識できないからかもしれないし、無機物なのに人間に近い見た目をしているからなのかもしれない。

 あるいは、人形という器の中に入り込んでしまった『何か』を本能的に察知しているからなのか。

 いずれにしても、委員長はどうしてもその人形を手放したいらしい。


 「そんなにか?」

 「ほら、美人過ぎてもかえって気味が悪いってことあるだろ?それと似たようなもんだと思う」

 「ふ~ん?」

 「まぁ、親に相談してからだけど。持ってくるかどうかは」


 苦笑を浮かべながら委員長はそう話し、席を立った。

 後日、親に出品の許可をもらった委員長が持ってきたその人形を見せてもらったクラスメイトの誰もが、『ぞっとするような美人』と表現し、どこかうすら寒いものを感じた、と感想を述べたそうだ。

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