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2、夏休み突入~遊びに行く計画~

 成績の見せ合いも終わり、帰路に就いた護たちだったが、清の口から、とある提案が出てきた。


 「なぁ、せっかく夏休みなんだし、どっか遊びに行かね?泊りがけで」

 「唐突だな」

 

 どうやら、夏休み中に一緒にどこかへ旅行に行きたいらしい。

 その提案に、明美と佳代は賛同していたが、護と月美は渋い顔をしていた。

 特に護は、実家である土御門神社で夏に執り行われる祭りや祭事の手伝いをしなければならない。

 居候している身であり、恋人でもあるので、当然、月美もその手伝いをしたいと思っているため、日程によっては行くことができないかもしれないのだ。

 もっとも、護の場合はたとえ土下座して頼まれようとも、行く気はなかったのだが。


 「ふっ、何事も始まりはいつも突然で必然なんだぜ?」

 「で、どうせなら飛び回れってか?」


 どこかで聞いたようなフレーズで返しながら、護はため息をついた。

 清はその言葉に、その通り、と胸を張って返した。

 その姿に、護は再びため息をついた。

 一年以上の付き合いになるのだが、清のこういう強引さには未だに慣れない。いや、もはやこれから先、慣れることがあるのだろうか、とすら思っているほどだ。

 だが、清は護にうんざりされていることなど気にしていない、というより、うんざりされているということに気付いている様子もなく、話を進めた。


 「なぁ、いいだろ?どうせ部活に入ってないんだし、宿題終わったら暇じゃん!!」

 「暇なのはお前だけだろ。俺は家の手伝いがあるんだ」

 「わたしもちょっとパスかなぁ、護の手伝いしたいし」

 「ぐはぁっ!!」


 吐血しそうなほど悲痛の叫びをあげながら、清はその場でのけぞった。

 一方、明美は、家の手伝い、という言葉に首を傾げた。


 「あれ?土御門の家って神社だったよね?夏の時期に何かあった??」

 「夏のこの時期だと、夏の大祓とか夏祭りとかじゃない?」

 「あ、なるほど」


 その疑問に答えたのは護でも月美でもなく、佳代だった。

 返ってきたその答えに、明美は納得したらしく、それじゃ仕方ないよね、と護と月美の援護射撃にまわった。


 「諦めなさい、勘解由小路。てか、あんたも人の予定を気にしなさすぎよ」

 「だってよぉ……」

 「だってもさってもないでしょ……ったく、ほんと馬鹿なんだから」


 今度は明美がため息をつきながら、文句を言っていた。

 護に言われるのはまだ許せるとしても、明美に馬鹿と言われることは我慢ならないのか、清は何か文句を言いそうになったが、明美の鋭い眼光にそれ以上は何も言えなくなってしまった。


 ――こいつ、将来は絶対恐妻家になるな。でなきゃ完全に尻に敷かれるかのどっちかだな


 清でなくとも、明美の今の目を見れば誰でも気圧されてしまうのだろうが、そこはそれ、依頼があれば自分の倍以上の大きさはあるおどろおどろしい妖を相手にすることもある陰陽師の見習い。

 つい数週間前は、千年の因縁を持つ悪霊と対決していたのだ。


 たかだか十数年しか生きていない小娘の眼光にびくつくようなことはない。

 もっとも、その眼光を向けてくる人物が、月美でなければの話ではあるが。

 とにもかくにも、このメンバーでの旅行というイベントを回避することができた護は、ほっと安堵したが、その顔は何かに気付いたような佳代の言葉ですぐに凍り付いた。


 「……あ、でも逆に言えば夏祭りとかが終われば旅行に行っても大丈夫なんだよね?」

 「おぉっ!そうか、その手があったか!」

 「その手ってどの手だよ……」 


 佳代の言葉に、清が元気(ウザさ)を取り戻した瞬間、護は無意識で威圧してしまった。

 だが、その威圧に反応したのは月美と佳代だけだった。

 清はそもそも護に威圧されていたとしても、それを気にすることはないほど神経が図太いし、明美はそもそも威圧されたとしても気づかない。


 一方、月美は護と同じかそれ以上の見鬼の才を有しているうえに、風森家の巫女だったこともあり、気配には敏感であった

 佳代は、つい数週間前に行われた体育祭の時期に起きた騒動で、一時的に鬼となってしまった影響が残っているのか、それとも生来の内気な性格からか、気配に敏感になっている節があり、感じ取ることができたようだ。


 「な、なんかごめん」

 「過ぎたことだからもういい……行けるかどうかはわからんぞ?」

 「おぅ!全然問題ない!!最悪、風森だけ連れて行くから!!」

 「あ、言っておくけど、わたしは護が行かないならパスだから」


 すでに清が次に言うであろうセリフを予測していたのか、護が先回りして答えると、清は即座に返した。

 だが、矢次早にやってきた月美の、当然といえば当然の返答に、再び吐血しそうな顔をしながらのけぞった。

 なんだかんだで、清も月美を狙っていたということを理解すると、護の瞳孔は小さくなり、臨戦態勢に入った。


 「だぁぁぁぁっ!!冗談、冗談!イッツァジョークだ!」

 「冗談に聞こえない態度だ」

 「た、頼むからその目をやめてくれ、な??頼むから!!」


 狐、もとい、虎の尾を踏んでしまった清が慌てながら謝罪し、どうにか怒りを収めてもらおうとしていたが、そう簡単に護の怒りは収まらない。

 結局、清はその後、自宅への分かれ道に到着するまでの間、護の殺気と獲物を狙う捕食者のような視線にさらされ続け、神経をすり減らすことになるのだった。


 なお、お盆が過ぎた時期で、夏休み中の課題がすべて終わっているのであれば、二人とも旅行に出ていい、という許可が下りたため、護と月美は発案者の清と、ノリノリであった明美と佳代とともに旅行へ行くことになった。

 その行き先は、護と清にとって因縁浅からぬ土地。

 かつての日本の首都であり、様々なものが集まる場所、京都だった。


もっとも、旅行へ行くまではまだ時間がかかるのであったが。

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