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外れスキル【地図化】を手にした俺は、最強パーティーと共にダンジョンに挑む  作者: 鴨野 うどん
第6章後半 外れスキル持ちの俺と『王女の軍隊』
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第103話 『到達する者』と新しい仲間


 ソフィーがパーティーに加わり、『到達する者(アライバーズ)』はダンジョン攻略を再開することとなった。


 転移結晶は最高到達階層が最も浅いパーティーメンバーに合わせてしか使えないため、もう一度ソフィーに合わせてダンジョンを潜り直さなければならない。

 先日ソフィーの実力を見るために5階層は攻略していたので、次は6階層からの攻略であった。


到達する者(アライバーズ)』は深層にも足を踏み入れたことのあるパーティーだ。

ここら辺の浅瀬の階層ならスムーズに攻略することができる。

 6階層、7階層、8階層と次々と攻略していき、11階層までは進むことができた。


 11階層は地底湖とその周りに入り組んだ洞窟でできた階層だ。

 この階層から中層と呼ばれるようになり、ダンジョンの難易度も一段と上がっていく。


 ようやく手ごたえのある敵が出てくるようになったということもあり、ソフィーを組み込んだ陣形を試しているところであった。


「《六連刺突》っ」


 ムカデみたいなモンスターの群れに突っ込んでいくソフィー。先陣を切った突撃だ。

 先頭のムカデを一匹仕留め、右隣の敵へ焦点を移す。狙われたムカデは口から酸を吐くが、ソフィーは身を屈めて避けた。


 下から突き上げられるレイピアにムカデがまた一匹仕留められたところで、左にいたムカデが尾を振って攻撃。

 ソフィーは大地属性の精霊術で作った盾で受け止めた。


「《脚光(ライトアツプ)》──は使わなくていいんでしたよね。間違えました。えいっ!」


 そう言って、聖剣フラクタスを振り回すのはロズリア。

 光り輝く聖剣は噓みたいな切れ味をもって、ムカデ型のモンスターを切り刻んでいく。


「守らなくていいんでしたら、もう少しフラクタスの方に魔力を回しますか」


 守備寄りのスキル構成ということもあり、ソフィーにはタンク役を任せることにした。

 その代わりにロズリアには状況によってアタッカーとタンク役をシフトするという、臨機応変なポジションを任せることになる。


 現在はアタッカーとしての動きを身体に馴染ませるということで、ターゲット集中スキルを封印して、攻めに重視した動きを心掛けてもらっていた。


「行きますよっ」


 掛け声とともにフラクタスの刃渡りが一回り大きくなる。刃の輝きも周囲を取り巻く魔力の奔流も一段と増していった。

 光の軌跡の速さが加速していく。剣は線となって、並み居るモンスターの中を暴れ回り、血しぶきをまき散らしていった。


「《騎士の威光》」


 ソフィーはターゲット集中スキルでモンスターの気を引いていく。

 ムカデ達はソフィーとロズリア、どちらに向かえばいいか右往左往しているうちにフラクタスの餌食となっていた。


 周囲のモンスターをあらかた狩り終え、戦闘が一段落つく。

 一息ついて聖剣を虚空に消していくロズリア。そこに歩み寄っていったのはソフィーであった。


「ちょっといい?」


「はい、なんでしょう」


「さっきの戦いの反省点を話したい」


「えぇ~戦いがやっと終わったところですよ。少しくらい休ませてくださいよ」


 ロズリアは水筒に口をつけながら、肩を落とす。

 対するソフィーはというと、淡々とした様子で話を続けていた。


「わかった。じゃあ、何分後がいい?」


「ダンジョンから帰ってからにしませんか?堅苦しいお話は」


「それじゃあ意味がない。反省点はすぐにフィードバックして、次の戦闘に活かしていかないと」


 パーティーに入れてからわかったことだが、ソフィーはとても真面目な人間だ。

 ダンジョン制覇にこの身を捧げると言っていたが、彼女はその言葉通り、どうしたら『到達する者(アライバーズ)』の役に立てるか、そしてどうしたら『到達する者(アライバーズ)』がよりよくなるか、を真剣に考えてくれている。


「ロズリアはもうちょっと攻撃的に戦ってくれた方が助かる」


「あのー、だから今は休憩したいんですけど……」


「早くモンスターを片づけてくれた方が、攻撃を引き受ける方も楽だから」


「こちらの話聞いていましたか?」


 ただ気分屋で、自由奔放な性格をしているロズリアとは微妙に合わないみたいだ。

 堅苦しいのが嫌いなロズリアと、融通の利かないソフィー。二人は(なお)も言い合っていた。


「逆にさっきの戦いで、わたしの方に改善した方がいいところはあった?」


「特にはないですけど……」


「何も言われないのが一番困る。本当に何かないの?」


「何もないですってば!」


「思い浮かばないんだったら、次はそこにも注意して戦って欲しい」


「強いて言うなら、ソフィーさんの頭が固いのを直して欲しいですかね」


「それはダンジョン攻略には関係ない話」


 ロズリアの嫌味も真面目なソフィーには嫌味として伝わっているのか怪しいところだ。

 暖簾に腕押しとわかったのか、ロズリアはため息を吐きながら、二人でいるエリンとネメの下に駆け寄った。


 一人になって、タオルで額の汗を拭いているソフィー。その表情からは感情が読み取れない。


「どうしたんだ?ノート」


 佇むソフィーを眺めていると、横からフォースに話しかけられる。


「そんなにソフィーのことを見つめて。気になるのか?」


「はい」


「うおっ、マジか。てっきりエリンかロズリアのことを選ぶと思っていたけど、まさかのソフィーだったか。どうりで新メンバーへの推薦が強かったわけだ」


「なんの話をしているんです?ソフィーがパーティーに馴染めているのか気になるって話ですよ?」


 一体何を勘違いしていたのだろうか。フォースは咳払いをすると、話を続けた。


「紛らわしい言い方をするなよ。勘違いしたじゃねえか」


「今のはどう考えても俺のせいじゃないと思いますけどね。フォースさんが勝手に勘違いしただけじゃないですか?」


「それにしても、やっぱりノートってそういうところ結構気にするよな」


「そういうところって?」


「パーティーに馴染めているかどうかとかさ」


「そうですか?」

「そうだろ。ロズリアちゃんが入ってきた当初も気にしていたようだったし」


「そういえばそうかもですね」


 今ではパーティーに馴染み切っているロズリアだが、『到達する者(アライバーズ)』に入ってきた当初はみんなと仲がよかったというわけではない。

 フォースをパーティーから脱退させようとした張本人ということもあって、向かい風だったのも事実だ。


 しかし、そのお気楽な性格でかき回されていくうちに、いつの間にか、みんなの方がロズリアに順応させられてしまった。


「自分がパーティーに入ってきた時、馴染むのに苦労したからってのもあるかもしれません」


「入った当初はエリンと仲悪かったもんな。今じゃ全然信じらんねえけど……」


「そうですね……」


 フォースの言う通り『到達する者(アライバーズ)』に入った当初は、俺もエリンに嫌われていた。

 俺にも理由はあったし、今では過ぎたことなので、あまり気にしていないけど、あの時は真剣に悩んだのも事実である。

 その経験が今の考え方を作り出した可能性は否定できない。


「どうせダンジョン攻略をするんだったら、楽しめる環境でダンジョン攻略できた方がいいじゃないですか。辛い思いなんてしないに越したことはないですから」


「それもそうだな」


「どうです?どうせなら、ソフィーのところに行きませんか?」


「そうだな。まだじっくり話してないし、いい機会かもな」


 同意も得たことだし、二人してソフィーの下に向かう。

 近寄ってくる俺達の姿を見つけ、ソフィーは目を細めた。


「どうした?何か用?」


「用ってわけじゃないです。話しに来たんですよ」


「もしかして戦闘の改善点の話?」


「違います。雑談的なやつです」


「雑談の時間はいい。わたしは休憩が終わったから、すぐにでも出発できる」


「……」


 会話時間三十秒ほど。文字通り秒で会話が終わってしまった。

 なんというか、コミュニケーションの重要性ってやつに意識を配った方がいい気がする。


 確かに以前は敵対していたこともあって、あんまり馴れ合う雰囲気じゃないかもしれないけどさ。一応同じパーティーのメンバーになったわけじゃん。

 これから長い付き合いになるわけだし、もう少し頑張って会話をして欲しかった。


「そうは言わずに。みんなにも休憩が必要ですし……」


「それはわかっている。みんなに合わせての出発でいい」


「じゃあ、それまでの時間雑談でも──」


「わたしはここで待っているから、他の人と雑談してくればいい」


「……」


 やっぱり秒で会話を打ち切られてしまった。


「ノート、お前嫌われてるんじゃね?」


「それ、今自分でも思いましたから、わざわざ口に出さないでください」

 いや、まあね。間接的にとはいえ、俺のせいでレイファの下から追い出されたっていうのもあるしね。嫌われるのは正直しょうがないって思うよ。


 でも、会話くらいしてくれてもいいじゃん。不満があるならあるで、それを素直にぶつけて欲しい。

 かつてのエリンみたいに、躊躇いなく率直な意見を言ってくれる方がやりやすい。


「試しにフォースさんが話しかけてみてくださいよ」


 俺が駄目ならと、フォースに話を振る。

 フォースは胸を叩いて答えた。


「ああ、いいぜ。オレに任せとけ」


「だから、雑談はいらない」


「……」


 もはや会話が始まる前に打ち切られてしまった。

 それには流石のフォースもショックを受けたようで、啞然とした表情を浮かべていた。


「フォースさん、もしかして嫌われてるんじゃないですか?」


「仕返しのつもりか?お前、性格悪いな」


「よく言われます」


 と、まあそんなやり取りをしている間にも、ソフィーは一向に否定してこないわけで。

 そうなってくると本気で心配になってくる。

 もしかして、俺達本当に嫌われてる?


「ソフィーさん、いい加減否定してくれると助かるんですけど……」


「何が?」


「嫌われてる云々の件を……」


「ノートには恩がある。命令なら、わたしはそれを遂行するまで」


「嫌々言わせているみたいな雰囲気出さないでくれませんか?」


 流石に冗談だよね?冗談だって信じたい。

 懸念があるとすれば、ソフィーが冗談を言うような性格には全然見えないことだけど……。


「どうかした?」


「いや、別に……」


 俺は深く追及することをやめにした。世の中、知らない方が幸せなこともたくさんあるのだ。

 うん、冗談に決まっている。


 これからソフィーと上手くやっていけるのか、少し不安を覚えている自分がいた。






※※※※※※※※※※






到達する者(アライバーズ)』に入ったソフィーは、そのままパーティーハウスで生活することとなった。


 レイファの下を追い出され、住む場所がなくなった身だ。

 広いパーティーハウスを持て余していた俺達としても、彼女がこの家にやってくるのは歓迎であり、ソフィーとしても異論はなかったようだ。


 ソフィーと共同生活を始めて一週間ほど。

 無愛想なところとか人間関係では少々懸念があるものの、分担された家事をしっかりこなす真面目さはあるし、これといった問題は起きていなかった。


「ソフィーさん、今日の洗濯当番替わってくれませんか?わたくし、用事が入ってしまいまして」


「別に構わない」


 両手を合わせてお願いするロズリアに、ソフィーは素直に了承の意を示す。

 そんな姿を俺は眺めながら──。


「ちょっと待て、ロズリア」


 ロズリアを呼び止めるのであった。


「ソフィーに家事押しつけるの、これで五度目くらいじゃない?」


「はて、なんのことでしょう?」


 しらばっくれるロズリア。このあざとい表情、完全に確信犯だ。


「昨日の洗濯当番も、その前のお風呂掃除も、全部ソフィーに任せてなかったっけ?」


「そんなこともありましたね……」


「用事があるとか言って、全部ソフィーに押しつけて」


「本当に用事があったんだからしょうがないじゃないですか!」


「じゃあ、今日はなんの用事なの?」


「……昼寝?」


「おい」


 世の中の常識として、昼寝は用事に入らないと決まっている。

 完全にめんどくさい家事をソフィーに押しつけているじゃないか。


 どうやらロズリアは堅物なソフィーの扱い方を学んでしまったようで、先日のダンジョン攻略で困り切っていたのはどこへやら。

 器用にソフィーを使いこなしていた。


「ソフィーさんも、そういうのは断らないと」


「わたしは別に構わない。誰かの役に立てるなら」


「ほら、ソフィーさんも言っているじゃないですか。引き受けてもいいって」


「そうは言ってるけど……」


「ほら、ソフィーさんは人助けできる。わたくしは楽ができる。Win─Winの関係じゃないですか」


「こうやって要求を飲みすぎると付け上がりますよ。ロズリアは」


 かつて冒険者パーティーで姫プレイをやっていたということもあって、彼女は本来、人に尽くすより使う方の人間だ。

 かつてのフォースは除くとして、『到達する者(アライバーズ)』には彼女の命令に従うような穏やかな人間はいなかったので、そんなに問題はなかったが、ソフィーが入ってきたことで状況が変わってしまった。


 ソフィーはあの暴虐王女にも付き従うような従順な騎士だ。

 ダンジョン攻略時は真面目さゆえ、だらけようとするロズリアを咎めるものの、それ以外の時間ではロズリアのお願いを聞き入れる存在となっていた。


「わたしは別に構わない。暇だから」


「って言っていますよ」


 もしかしたら、彼女達は組み合わせてはいけない二人だったのかもしれない。

 横暴な姫と従順な騎士。レイファのところにいた時とあまり変わらない気がするのは気のせいなのだろうか。


「いいんですか?ロズリアは昼寝するだけですよ?」


「何度も言っているけど、別に構わない」


「だったら、ソフィーさんが昼寝した方がいいんじゃないですか?」


「昼寝も必要ない。夜、眠れなくなるから」


「……ん?」


 あまりにも淡々と言うせいでスルーしそうになったけど、ソフィーも昼寝すると夜眠れなくなるんだ。

 共感はできなくもないけど、そんなことを言うキャラには全然見えないせいで、笑ってしまいそうになる自分がいた。


「どうしたんですか?ニヤけて?」


「いや、なんでもない」


 不思議がるロズリアの追及を咳払いで誤魔化そうとする。

 なんとかロズリアの興味は逸らすことができたが、またソフィーへ矛先が向けられる。


「そうだ、ソフィーさん。暇だったら、もう一つお願いしてもいいですか?」


「なんでも」


「用件を聞く前から受けようとしない」


 一応注意をしてみるが、全然聞き入れられているように思えなかった。


「お願いって何?」


「昼寝のためのベッドメイキングをしてもらえませんか?」


「ロズリア、それは流石に……」


「わかった。今すぐ取り掛かる」


「しかも、引き受けちゃうんだ……」


 なんで昼寝をするだけでベッドメイキングが必要なんだよ。本当にお姫様扱いになってきたな。


「大丈夫なんです?ソフィーさん」


「安心して。ベッドメイキングは得意だから」


「そういう話じゃなかったんですけど……」


「桁違いの快眠を約束する」

 それはちょっと気になるな。俺もベッドメイキングしてもらおうかな……。

 って、違う違う。そうじゃなかった。止めるためにやってきたんだった。


 首を振りながら自制心を強く守っているうちに、二人はロズリアの部屋の方へ歩き出してしまった。

 これは本当にベッドメイキングしてもらうやつだな。またしても止めることができなかった。


 二人が仲良くなったと捉えられなくもないけど、これは微妙な判定だろう。

 会話があるのは嬉しいが、健全な仲間としての在り方かと訊かれると、首を傾げざるを得ない。

 どちらかというと主従関係に近いように思えた。


 十分ほどして、ソフィーだけが帰ってくる。今頃、ロズリアはベッドの上でぐっすり眠っていることだろう。

 やっぱりロズリアを甘やかしすぎないよう、少し物申しておくべきだろう。口を開きかけながら近づくと、今度は横から声が。


「ソフィーソフィー、お菓子作ってです!」


「今度はお前か!」


 駆けてきたネメの脳天に向かって、必殺のチョップを繰り出す。

 ネメは目を白黒させながら、頭を擦っていた。

「何、するです!」


「『何、するです!』はこっちの台詞ですよ。何、ソフィーにお菓子作りさせようとしているんですか!」


「ソフィーの作るお菓子は美味(う ま)しいからです!」


 理由を訊いているんじゃない!こっちはお願い自体を咎めているんだ。

 それにしても、ソフィーはお菓子作りまでできるのか。知らなかった。ちょっと食べてみたいような気も……。

 って、違う違う。そうじゃない。今はネメを怒る時間だった。


「ネメ姉さんも、ソフィーさんを顎で使うようなことをしないでくださいよ」


「アップルパイとシフォンケーキ、どっちがいい?」


「ソフィーさんも、了承を通り越してメニュー訊くのをやめてください」


 なんでそんなにポイポイと頼みを引き受けるんだ。少し断るってことを覚えた方がいい。


「アップルパイでお願いするです!」


「わかった。今すぐに取り掛かる」


「ちょっと待って!」


 両手を突き出して、一旦ストップをかける。


「ネメ姉さん、ソフィーさんはロズリアからも頼みを引き受けて疲れているんです。少し休ませてあげてください」


「わたしは別に疲れてない。大丈夫」


「って、言ってるです」


「……」


 ソフィーをかばって言っているはずなのに、当のソフィーからは感謝されるどころか、全然援護されないんだけど。

 もしかして、これって俺が間違っているのか?


「だとしても、なんでもかんでも仕事を押しつけないであげてくださいよ。ソフィーさんだって疲れるだけでいいことないでしょ?」


「ソフィーはネメにお菓子を食べさせる。ネメはお菓子を食べられる。Win─Winの関係です!」


 またしても、Win─Win出てきやがったよ。

 しかも、ネメの論法に限ってはソフィーになんのメリットもないからね。お菓子を食べさせることがなんでWinなんだよ。


「Win─Winの関係って流行っているんですか?」


「ロズリアに教えてもらったです!」


「元凶はあいつか……」


 頭を抱えたい気持ちでいっぱいだった。

 純粋なネメにソフィーの悪用方法を教えないで欲しかった。


「とにかく! もう少しソフィーさんを労わってください!アップルパイはなしです!」


「でも──」


「でもも、何もなしですから」


「もうリンゴ切ってるです」


「……」


 キッチンの方を向くと、既にソフィーはまな板の上のリンゴに包丁をかけていた。

 少し目を離した隙に作り始めないでくれませんか?


「今、やめたらリンゴがもったいないです」


「ですね……」


 こうなったら俺の負けだ。大人しくソフィーの料理を見守る方向性でいこう。


「ソフィーさん、自分もアップルパイ食べていいですか?」


「もちろん」


 ソフィーは頷きながら、淡々とリンゴに刃を落としていく。

 まあ、ネメとソフィーが仲良くなったと考えればこれも悪くないのか?同じパーティーの仲間っていうより、お母さんと娘って感じだけど。


「やったーです!」


 喜ぶネメを横目で見ながら、ソフィーに向かって声をかける。


「じゃあ、代わりにロズリアから任された洗濯俺達でやりますよ」


「わたしがやるから別にいい」


「そうはいかないですよ」


 お菓子作りに足して洗濯なんてそんな負担はかけられない。

 両手を上げていたネメの腕を掴んで言った。


「じゃあ、ネメ姉さん。洗濯やりますよ」


「えっ!? ネメもです!?」


「当たり前じゃないですか!お菓子作ってもらってるんですから!」


「なんでネメが洗濯しなきゃです?」


 嫌がるネメに向かって、俺はあの言葉を送った。


「ネメ姉さんはお菓子を作ってもらえる。ソフィーさんは洗濯をしてもらえる。Win─Winの関係じゃないですか」





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