理由
【第四幕四節】理由
その城は激しく燃えていた。
「殿、これより先はこの私どもが兵を喰い止めます。」
と、たった十数名で、本丸へと向かう渡りをふさぎ、殿とその母を本丸奥へと向かわせようとした。その間も外では、何十もの大筒が城に向かって放たれている。
母、淀は、家康の孫娘である千姫に言った。
「千姫、お主はここまでじゃ。色々なことがあったが、お主と秀頼の仲の良さだけが、わたしの救いでしたよ。」
と、言い残し一緒に自害しようとする千姫を兵士に託し、安全な場所へ運べと命令した。
外は戦乱で、主たる武将 真田幸村、毛利勝永が20万30万と言われるほどの兵力の家康を、あと一歩で斬るほどまで徳川家を押したが、健闘虚しく討ち死にしたのちは、金でしか雇われていなかった豊臣勢は一気に壊滅へと向かったのだった。それでも、豊臣への忠義に生きようとした者も多く、命尽きるまで守り抜いたので、まだ大阪城本丸までは手が及んでなかった。
本丸奥へと着いた淀と秀頼だった。
「信長様は、是非に及ばずともうされたが、わたしは しかたのないことなどとは、断じていえぬ!度重なる裏切りと謀略にまみれた徳川家康め。太閤殿下(たいこうでんか 秀吉)の平和な国づくりを壊し、またこの世を戦乱へと向かわせた。その欲望ごとき心持が、一体何人の人を死へと導いたことか!怨んでも怨みきれぬぞ家康・・・・・」
その憎悪は、関ヶ原の戦いから、この大阪城夏の陣までの全ての怨みが此処へと集まって来ているかのようだった。淀の目には血の涙がしたたり落ちていた。秀頼は、これから自害する恐怖に震えていた。
そして、目の前で自分の子が自害するのを見届け呪いながら淀も朽ち果てた。
黒い影が覆いその影は時を超え、憎悪が集まり形へと変わるまで徳川への怨み、また、豊臣を裏切った大名たちへと向かって行ったのだった。
平八郎の意識は今へと戻った。そして、佐々木に
「これはいかぬ!一週間どろころではない。今日明日が日時じゃ。明日が5月7日夏の陣の日いそぎ、江戸へと向かい、今回の呪いのもとを報告し備えを万全にするよう佐々木殿伝えてください。」
急いではいるものの違う場所へと向かおうとしてる平八郎に佐々木は気付き
「平八郎殿いったいどちらへ向かわれる?」
と、問いただす
「今は原因を掴むことしかできていない。まだ、足りぬものがある。間に合うよう祈っておるが・・・・しかし・・・・」
平八郎は、兵に場所を告げ連れて行くよう言い、江戸より遠く離れたこの場所から日中夜問わず、走り続けた。
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平八郎が向かったのは、お藤と与市が過ごした。小屋であった。
【第四幕四節】完




