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あたい賢者になるっ!  作者: 今野 春
二章 ひよっこ賢者の決意
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十五話 あたいの思い出の家

 なんだかんだあって、あたいたちは森奥の家へと向かった。

 家に着くと、誰もいないようだった、


「・・・・・・誰もいないな」

「そうね」


 そしてあたいたちは家の中へと足を踏み入れる。

 相変わらずの惨状に不快感を感じる。あたいは机の上に置いたメモを見に行った。


「・・・・・・やっぱり帰ってない」


 あたいの置いたメモが、ここに誰も来ていないことを伝える。


「何か用があるなら早めに終わらせよう。もしかしたら、賢者様を連れてった兵士が来るかもしれない」


 たしかにそうだ。賢者の家を調べないはずがない。


「じゃあ、本とかだけ持って帰る」

「そうだな。いくつか持とうか?」

「ううん。大丈夫。ジャンはその剣で手一杯でしょ?」

「あ、そっか」


 ジャンには外の見張りをしてもらって、あたいは貴重な魔法の文献の載った本たちを袋に詰める。

 これが人間の手に渡ったら、お師匠様の研究が水の泡になっちゃうから。

 全部は持って帰れないけど、少しでも多く。


「もう大丈夫よ」

「よし。じゃあ帰るか」


 想像以上に持ってこれなかったけど、大体の重要なものは・・・・・・持ってこれたはず。

 そうして家から少し離れた時だった。


「・・・・・・っ! 隠れろ!」


 ジャンがそう言ってばっと茂みに隠れる。あたいも何があったのかわからないけど、ジャンのように茂みに隠れる。すると・・・・・・。

 ガシャン、ガシャンという音が近づいてきた。


「兵士・・・・・・!」


 重厚な鎧に身を包んだ兵士たちが、ついさっきまでいた家の中に入っていった。

 その時、あたいは思い出した。

 お師匠様に向けて書いたメモ、置いてきたままだ・・・・・・!

 なんていうドジ! これじゃ、誰かがいることがバレてしまう・・・・・・。

 でも、そもそもメガルハさんにバレてた・・・・・・?

 不安に押しつぶされそうになっていると、兵士たちが出てきた。おおきな袋を抱えていることから、きっとあたいが持ってこなかった本を持ってきたんだろう。

 と、そのうちの数人が手に持っているものを見た。


 真っ赤な火花を出すそれはーー松明。


 それが、あたいたちの家に向けて投げられた。


「ーーあ」

「ヒヨ!」


 無意識のうちに駆け出そうとしたあたいをジャンが止める。

 そして、ジャンの手があたいの口を塞いだ。

 兵士たちが何事もなく去って行くのを、ただただ睨みつける。


「・・・・・・ごめん」


 兵士たちが見えなくなった時、ジャンがそう呟いた。

 まだ、家は燃えている。


「なんで、なんでぇ・・・・・・!」


 あたいの両目から、絶えずに涙が溢れる。

 あたいたちが何をしたの? あたいたちは、人間を助けてあげているのに・・・・・・。


「にんげん・・・・・・!」


 静かな泣き声が森の中に小さくこだまする。

 家が燃え尽きるまで、ずっと。

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