十五話 あたいの思い出の家
なんだかんだあって、あたいたちは森奥の家へと向かった。
家に着くと、誰もいないようだった、
「・・・・・・誰もいないな」
「そうね」
そしてあたいたちは家の中へと足を踏み入れる。
相変わらずの惨状に不快感を感じる。あたいは机の上に置いたメモを見に行った。
「・・・・・・やっぱり帰ってない」
あたいの置いたメモが、ここに誰も来ていないことを伝える。
「何か用があるなら早めに終わらせよう。もしかしたら、賢者様を連れてった兵士が来るかもしれない」
たしかにそうだ。賢者の家を調べないはずがない。
「じゃあ、本とかだけ持って帰る」
「そうだな。いくつか持とうか?」
「ううん。大丈夫。ジャンはその剣で手一杯でしょ?」
「あ、そっか」
ジャンには外の見張りをしてもらって、あたいは貴重な魔法の文献の載った本たちを袋に詰める。
これが人間の手に渡ったら、お師匠様の研究が水の泡になっちゃうから。
全部は持って帰れないけど、少しでも多く。
「もう大丈夫よ」
「よし。じゃあ帰るか」
想像以上に持ってこれなかったけど、大体の重要なものは・・・・・・持ってこれたはず。
そうして家から少し離れた時だった。
「・・・・・・っ! 隠れろ!」
ジャンがそう言ってばっと茂みに隠れる。あたいも何があったのかわからないけど、ジャンのように茂みに隠れる。すると・・・・・・。
ガシャン、ガシャンという音が近づいてきた。
「兵士・・・・・・!」
重厚な鎧に身を包んだ兵士たちが、ついさっきまでいた家の中に入っていった。
その時、あたいは思い出した。
お師匠様に向けて書いたメモ、置いてきたままだ・・・・・・!
なんていうドジ! これじゃ、誰かがいることがバレてしまう・・・・・・。
でも、そもそもメガルハさんにバレてた・・・・・・?
不安に押しつぶされそうになっていると、兵士たちが出てきた。おおきな袋を抱えていることから、きっとあたいが持ってこなかった本を持ってきたんだろう。
と、そのうちの数人が手に持っているものを見た。
真っ赤な火花を出すそれはーー松明。
それが、あたいたちの家に向けて投げられた。
「ーーあ」
「ヒヨ!」
無意識のうちに駆け出そうとしたあたいをジャンが止める。
そして、ジャンの手があたいの口を塞いだ。
兵士たちが何事もなく去って行くのを、ただただ睨みつける。
「・・・・・・ごめん」
兵士たちが見えなくなった時、ジャンがそう呟いた。
まだ、家は燃えている。
「なんで、なんでぇ・・・・・・!」
あたいの両目から、絶えずに涙が溢れる。
あたいたちが何をしたの? あたいたちは、人間を助けてあげているのに・・・・・・。
「にんげん・・・・・・!」
静かな泣き声が森の中に小さくこだまする。
家が燃え尽きるまで、ずっと。




